【やがてお金は絶滅する?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166614746
本日ご紹介する一冊は、MITでPh.Dを取得し、イェール大学助教授を務める論客、成田悠輔さんによる注目の論考。
以前出された『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』とタイトルは似ていますが、今回は未来の「資本主義」について考察する内容です。
『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0B2JB33TN
相変わらず人を食った内容で、冗談めいた比喩が登場しますが、資本主義やお金の本質を突いた議論はさすが。
来るべきブロックチェーン経済の本質と、それが持つ可能性、問題について論じており、われわれが今後、お金を超える仕組みを考える上で、重要な考察です。
実験的にリリースされている、さまざまな企業のサービスの紹介もあり、起業家にとってはインスパイアされる内容だと思います。
世界で初めてコンセプトだけで上場したと言われる「汎用魔法」、オーストラリアタスマニア州にある、睡眠時間を買うホテル「MACq01」、スポーツ飲料のゲータレードがカナダのトロントに設置した、汗ばんだ人にだけドリンクが出てくる自販機など、実験的な試みではありますが、あらゆるものが商品になり、すべてに値段がつく、未来の資本主義の様子が浮かんできます。
スピリチュアルの世界で謳われる「アカシック・レコード」の概念を引っ張ってきたのには、さすがに笑いましたが、デジタル化と資本主義が行き着く先は、案外こんな世界なのかもしれません。
人が正しく人の貢献を測れるのか、国家が簡単に既得権を渡すのかという疑問は残りますが、現在の不完全な評価主義経済が、これからどこへ向かうのか、考える良い材料にはなると思います。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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過去に誰が何をしてきたかの履歴データが豊かになると、データを覗き込むだけで誰が寄生虫で誰が功労者かがわかる
価格が人ごとに変わる一物多価化が進む
あらゆる商品やサービスの価格が人それぞれになる。価格が個人ごとに違えば、お金を使った経済力の比較も難しく、無意味になっていく。お金という物差しの支配力が弱まる
調子にのってフリーライドしすぎた人は招き猫アルゴリズムに許されることが減り、しばらく他人に奉仕するしかなくなる
金のようにいま目の前で見て触れる便益をくれるものより、株のように目に見えぬ未来に価値を爆発させるかもしれないものの市場価格が膨張している
未来、ブランド、暗号、なりすましAI--雲を掴むような幻だと思われるかもしれない。たしかにそうだ。しかし、こうした幻想性は資本主義市場経済の起源からずっと付きまとってきた生まれながらの体臭である
価値があるとまだ人々に思われていない物や事を拾い上げ、そこにまだ見ぬ価値が眠っているという物語をぶち上げる。物語がどれくらい腑に落ちるかは、それぞれの時代や土地の文化や価値観、技術・情報環境が決める
現在の収益の保証より未来の収益への期待が時価総額を駆動している
最後に待つのは、いわば私という存在のデータ化とインターネット接続だろう
オーストラリア南東のタスマニア州にあるホテル「MACq01」は睡眠を商品化した。ベッドに付いたモニターで客の睡眠状態を感知し、睡眠が6時間以上続くと、1時間ごとに100豪ドル(9400円)を宿泊料金から割り引きする
デジタルでグローバルな村落経済の発生は強烈な帰結をもたらす。お金の価値が下がっていくという帰結だ
22世紀の資本主義に向けた必須の準備運動は、したがって、人間であることの証明、そしてそれぞれの人間の唯一無二性を証明するIDの構築である
あらゆる取引が、あらゆる購買が、エルメス的になる
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相変わらずのブラックユーモアで、言いにくいことをズバリ言ってのける、痛快な一冊でした。
起業家にとっては、未来の資本主義において、何が価値を生むのか、考える良いヒントになると思います。
ぜひ、読んでみてください。
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『22世紀の資本主義』成田悠輔・著 文藝春秋
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◆目次◆
はじめに
第0章 泥だんごの思い出
第1章 暴走 すべてが資本主義になる
第2章 抗争 市場が国家を食い尽くす
第3章 構想 やがてお金は消えて無くなる
おわりに 22世紀の○□主義へ
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