2025年2月19日

『2030年の戦争』小泉悠、山口亮・著 vol.6663

【有事に備えるために】
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戦争の話をするのは、あまり好きではないのですが、流石にここまで戦争リスクが高まると、一応のシミュレーションはしておきたい。

そこでご紹介するのが、本書『2030年の戦争』です。

『2030年の戦争』は、気鋭の軍事研究者2人が、日本の有事シナリオと防衛面の課題を論じた新書。

ロシアの軍事・安全保障を専門とする東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏と、防衛政策・戦略・計画、安全保障、国際政治、交通政策を専門とする東京国際大学国際戦略研究所准教授の山口亮氏が、最も可能性の高い戦争シナリオを徹底議論しています。

これまでの戦争論と、現在起こっていることのギャップ、その理由について論じており、今世界で起こっていることの意味が、よくわかる内容です。

また、戦力のシミュレーションにおいても、よくメディアで紹介される「グローバルファイヤーパワー」の軍事力ランキングの問題点を丁寧に指摘しており、有事の際、当てになる「戦力」とはどういうことなのか、素人でもわかるように詳しく説明しています。

なぜウクライナ戦争においてロシアが強かったのかの解説は、さすがロシアの軍事専門家。

ビジネスにも通じる「強さ」の本質が書かれており、すべての経営者が読むべき内容だと思いました。

特に、戦いにおける兵站の重要性、予測の難しさなどは、ビジネスにも当てはまることで、激しくうなずきながら読みました。

気になる今後の戦争の可能性についても、気になるところがバッチリ書かれており、日本国民として知っておくべき最低限のところが書かれています。

有権者は、しっかり読んで、いざという時、政策の邪魔をしないようにしないと国防が危ぶまれる内容だと思います。

基本、平和を支持する立場ですが、本書の議論は、日本国民全員が共有すべきと思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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クレフェルトは、近代という時代が終わりを迎え、これからは中世的な戦争が先祖返りするように蘇ってくるだろうと予見しました。それは明確な政治的要求を持たない宗教戦争のようなものかもしれないし、そうした戦争の主体はハイテク軍事力なんか持てないだろうから原始的な武器で戦われるだろう、と言うのです(小泉)

ドローンを大量投入した結果、敵味方が丸見えになってしまい、攻撃機動ができなくなってしまった。攻撃に出ようとしてもすぐ阻止される。守りの側が著しく有利な戦いになった(小泉)

米国とロシアの戦争はいまだにできません。おそらく米国と中国の戦争もできないと思います。核を持っている同士ですから。でも中国と日本の戦争はあるかもしれない。実際に、米国とロシアは戦争をしていませんが、ロシアとウクライナとの戦争は起きてしまった(小泉)

メディアでは兵器や兵隊の数を軍事力として伝えがちですが、量よりも質が大切です。とりわけC4ISR(指揮・統制・通信・コンピューター、情報、監視、偵察)、教育・訓練、そしてロジスティクスを含む運用能力などが重要であり、これらの数値化はほぼ不可能です(山口)

とりわけ運用即応力が重要です。運用即応力が軍の能力を左右すると言っても過言ではありません(山口)

(運用即応力の)中心となるのは、メンテナンス・修理・オーバーホール(MRO)能力、補給・後方支援、サプライチェーンを含むロジスティクスです(山口)

ロシアにはもともと「効率が悪いなら数で補う」という発想があります(中略)ロシアの兵学には「長期の戦争を続けるには数と体力が必要。だから、さまざまな予備力を持っておく」という考え方が根強くあります(小泉)

軍事力の大小とは別に、国家はどこまで戦争の消耗に耐えられるかという基準(損害受忍度)があります。その意味ではロシアは消耗に強い国(小泉)

日本がやるべきは、グレーゾーン事態におけるショックアブソーバー、すなわち緩衝器を厚く持っておくことだと思います。グレーゾーン事態をグレーゾーンの中で収められなくなれば、戦争になりますから。これが日本の海保の戦略的意義だと思います(小泉)

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いわゆる軍事オタクの議論ではなく、素人にもわかりやすく、日本の課題が見えてきます。

ぜひ、読んでみてください。

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『2030年の戦争』小泉悠、山口亮・著 日本経済新聞出版

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◆目次◆

はじめに
第1章 戦争をどうとらえるか
第2章 軍事力とは即応力である
第3章 テクノロジーの進化、統合運用、戦場の霧
第4章 これから何が起きるか--メインシナリオを考える
第5章 では、日本は何をすべきか

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