【人生の迷いに効く経営学理論】
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本日ご紹介する一冊は、電通、BCGを経て、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活躍する山口周氏によるキャリア本。
経営学の概念や理論を人生・キャリアに応用するというユニークなアプローチの本で、これまでに読んだキャリア本の中でも、トップ5に入る面白さです。
著者は、第1章で、「人生というプロジェクトの原理」を図示するのですが、これがじつに秀逸。
時間資本が人的資本を生み、人的資本が社会資本を生み、社会資本が金融資本を生む。
そして人的資本(自己効力感)、社会資本(社会的つながり)、金融資本(経済的安定性)の3つがウェルビーイングにつながるという原理は、豊かな人生を歩む上で、誰もが理解しておくべきでしょう。
特に昨今は、若い方が刹那的にお金を求めて投資したり、人的資本が枯れた高齢者が貯金を取り崩してリスク商品に投資したりしているので、危険な状況にありますが、著者はこれを戒めてこう述べています。
<私たちは、金融資本を過度に追求することで「人的資本」や「社会資本」の形成をなおざりにしてしまい、本当の意味での「人生の敗者」になってしまう愚を厳に戒めなければなりません>
2章以降では、長い人生のプロジェクトを成功に導くためのコンセプトや理論を紹介しているのですが、これも読み応えがあります。
「ライフ・サイクル・カーブ」を人生に当てはめ、「人生の4つのステージ=春夏秋冬」とし、それぞれのステージで行うべきことやキーワードを明示しています。
中でも、「微分のレンズ」の話は、キャリアにおいてビッグチャンスを掴むための、重要なコンセプト。
将来的に起業を考えている人は、ぜひ読んでおくといいでしょう。
そして第3章は本書最大の読みどころ。職業選択についての話で、キャリアにおけるポジショニングの大切さを説いています。
マイケル・ポーターが唱えた「ポジショニング」の理論と、「リソース・ベースド・ビュー」の考え方が紹介されており、これをキャリアに応用するための考え方が説かれています。
主要な経営理論を、自分ごとにして一気に学べるというのも、本書の特長。
ぜひ読んでいただきたい、珠玉のキャリア本です。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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社会学の開祖の一人であるフランスのエミール・デュルケームは、社会のステージが古い段階から次の段階へと移行する「つなぎ目の社会」において、それまでの規範や制度のアップデートが追いつかず、「規範の解体=アノミー」が発生する、と指摘しました
産業小分類別にみてみると、直近10年のGDP平均成長率は、上はプラス7.83%の「電子部品・デバイス製造業」から、下はマイナス6.18%の「水産業」までと、かなりの幅があることがわかります
異業種交流会というのは、まさに社会資本を形成するために行われるわけですが、社会資本は、人的資本に裏打ちされた高い水準のパフォーマンスやアウトプットによって初めて構築されるのであって、いきなり時間資本をダイレクトに社会資本の構築に投下しても構築できない
金融資本を生み出すのは信用・評判・ネットワークといった社会資本であり、社会資本の裏打ちのないままに直接的に金融資本を増やそうとするのは非常に効率が悪い
人的資本は外側から見えない
「人生の春」のキーワードは「試す」
「人生の夏」のキーワードは「築く」
「人生の秋」のキーワードは「拡げる」
「人生の冬」のキーワードは「与える」
成長市場が本当に「爆発的に成長している期間」というのは、実は「一瞬」
むしろ誰もが「時期尚早である」と考えるタイミングで大胆な意思決定をしなければ、キャズム前後の「一瞬」を捉えてアドヴァンテージを得ることはできない
「兆し」を捉えるためには「変化率」と「コア人材」の2つに着目する
ベゾスが注目したのは「変化率」…… 数学の用語で言えば微分値なのです。これはベゾスに限らず、優れた経営者にしばしば共通してみられる特性ですが、彼らは、「微分のレンズ」とでもいうべき視点で社会の変化を捉えているのです
「能力」を変えるより「立地」を変える
リモートワークが浸透する職種では、これまでの「特定の地域で多様なニーズに応える」という「ローカルメジャーの競争戦略」から、「全国レベルで特定のニーズに応える」という「ネーションワイドニッチの競争戦略」へのシフトが求められる
自分の居場所を「社会的利益」に基づいて決める
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後半は、類書で書かれている内容と重複する部分が多いですが、とにかく前半だけでも読んでいただきたい。
人生設計における、太い枠組みが形成されること、請け合いです。
これは「買い」の一冊ですね。
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『人生の経営戦略』山口周・著 ダイヤモンド社
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◆目次◆
はじめに 思い通りにならない人生を、とにかくなんとかする
第0章 なぜ、いま「人生の経営戦略」なのか?
第1章 目標設定について
第2章 長期計画について
第3章 職業選択について
第4章 選択と意思決定について
第5章 学習と成長について
おわりに 資本主義社会のハッカーたちへ
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