2025年1月15日

『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』 しんめいP・著 鎌田東二・監修 vol.6640

【これは傑作。】
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本日ご紹介する一冊は、東大卒のこじらせニートが、東洋哲学を超訳版で紹介した、ユニークな一冊。

著者のしんめいPさんは、東大を出て大手IT企業に入社し、海外事業で世界中を飛び回るも、仕事ができないことがバレて、ひそやかに退職したという人物です。

本書は、カジュアルな文体で、超ポップに東洋思想を解説した、これまでになかった哲学エンターテインメント。カジュアルと書きましたが、文体はほぼ壊れていますね(笑)。

紹介されているのは、ブッダ、龍樹、老子、荘子、達磨、親鸞、空海の7人の思想。

読者は、このゆるーい哲学エッセイを読んでいくうちに、なぜ「東洋哲学が「楽になるための哲学」と言われるのか、その意味がよくわかると思います。

最近の風潮を見ていて思うのは、現代人は「自我」が強くなりすぎて苦しんでいるということ。

絵の世界で自画像が流行したのは「鏡」ができたからだそうですが、今はスマホで庶民でも自分の写真が撮れてしまう時代。

自らを捉える道具ができたことで、意識しなくてもいい「自分」を意識するようになり、そのために苦悩も増えているのだと思います。

本書で紹介される東洋哲学は、読者を「自我」の苦しみから解放してくれます。

なにせ、タイトルが『自分とか、ないから。』ですから。

ブッダが至ったという、「無我」。

それが一体何なのか、どんな考えに基づくものなのか、読んでいるうちに、自分は世界の一部であり、すべてがつながっていること、全てが変わりゆくものであることがわかる。

これが理解できれば、自我に伴う苦しみや、有る/無いという苦しみ、死の恐怖から逃れられ、安らぎの境地に至るはずです。

東洋思想を解説するための事例や例え話があまりに滑稽で、大爆笑してしまうほど面白い。

これは、話題になるのも頷けますね。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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悟った、ということは、「本当の自分」の答えが見つかったということである。いったい、どんなものなのか?その答えは「無我」だった。自分とか、ない。

「自分」とはただの「妄想」。ほんとうは、この世界は、ぜんぶつながっている。よく観察すればわかる。

ファミチキを食う、ということは、「鳥のからだ」を、吸収してるということだ。いまのあなたの筋肉は、むかしたべた「鳥のからだ」だ。「自分」のからだは、食べもの、つまり「自分以外」のものからできているのだ

この世界は、全部つながりすぎている。ちゃんと観察すると、「これが自分」といえるものが何もないことに気づくのだ。「無我」である

人生の苦しみの、根本的な原因。知りたくない? 苦しみの原因、それは、「自分」なのだ(!)すべてが変わっていくこの世界で、変わらない「自分」をつくろうとする。そんなことしたら、苦しいにきまってるやん

「おれがいるのだ」という慢心をおさえよ。これこそ最上の安楽である。ウダーナヴァルガ 30章 一九

龍樹によって、200巻のボリュームになっていたブッダの教えは、わずか1文字になったのだ。ひ…ひともじ…そんな減る!? 「空」である。

この世界は、「ことばの魔法」がうみだした幻なのだ

日本とアメリカは、じつは陸でつながってる

人間関係が解消することによって、ことばの魔法もきえる

人間とのつながりがなくなったときに、はじめて自然とつながれる

ぼくはこの、飲み会で孤立することで、「空」にいたる現象を「居酒屋のブッダ」とよんでいる

あらゆる人間関係のフィクションが崩壊したとき、あなたは全てとつながる。そこが「縁起」の場所なのだ

「有る」「無い」がフィクションだとわかると、多くの悩みの正体もわかる。たとえば、「彼氏がいない」という悩み。これは、「彼氏がいる」が当たり前だから、うまれる悩みなのだ

ピンチなときこそ「言葉をすてる」

「なりきる」こそが「自分」をつくる。「自分」をこえた、でっかい「自分」になる。空海はそれを「大我」と呼んだ

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個人的には、<飲み会で孤立することで、「空」にいたる現象を「居酒屋のブッダ」とよんでいる>というくだりが一番面白かったです。

現在何かで苦しんでいる方、これからの人生の指針を探している方に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』
しんめいP・著 鎌田東二・監修

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◆目次◆

はじめに
1章 無我 自分なんてない ブッダの哲学
2章 空 この世はフィクション 龍樹の哲学
3章 道(タオ) ありのままが最強 老子と荘子の哲学
4章 禅 言葉はいらねえ 達磨の哲学
5章 他力 ダメなやつほど救われる 親鸞の哲学
6章 密教 欲があってもよし 空海の哲学
あとがき
参考文献

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