2025年1月6日

『教養としての建築』 バッコ博士・著 vol.6634

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年末年始はいかがお過ごしだったでしょうか?

新年一発目は、年末年始、ビジネス書と関係のない教養書を何冊か読んだうち、最も刺激を受けた一冊をご紹介します。

著者は、構造設計一級建築士で、京都大学博士(工学)・コンクリート主任技士のバッコ博士。

耐震工学のエキスパートで、専門は超高層ビルの振動制御。免震・制振に関する特許も20件以上出願しているそうです。

本書は、建築の3要素である「強・用・美」のうち、「強」に着目した、珍しいアプローチの建築教養書です。

本書によると、「強・用・美」のうち、「強」を扱うのが構造設計者、「用」を扱うのが設備設計者、「美」を扱うのが意匠設計者。

建築士にもそれぞれ専門があるのですが、普段われわれが接するのは、主に「意匠設計者」だそうです。

町医者があらゆる病気を広く浅く扱うように、予算が少ない個人の住宅では、意匠設計者が広く設計を担当するからです。

とはいえ、意匠設計者は厳密には、構造の専門家ではありません。

本書では、構造の専門家だからこそわかる住宅の見方・考え方が示されており、これまでに読んだどんな建築書と比べても、異色の内容です。

ビジネスパーソンの教養として、またこれから家を建てる、買う人の基礎知識として、ぜひ読んでおきたい一冊だと思いました。

耐震改修したことでむしろ壊れるというのは、どういうことか。

タワマンは高層階と低層階、どちらを買うべきなのか。

なぜ五重塔は昔の建物なのに倒れないのか。

古民家は買っても大丈夫なのか。

雑学として読んでも楽しい内容で、これは強くおすすめしたい一冊です。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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日本の建築基準法に定められた耐震基準では、震度5強程度の地震に対して損傷しないよう設計が行われます

震度5強の揺れによって建物にかかる地震の力と震度7の揺れによって建物にかかる地震の力は、なんと5倍も違います

木造設計士は小さな木造の建物しか設計できませんが、二級建築士であれば鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物も一部設計が可能です。一級建築士であれば、設計できる建物の規模に制限はありません

建築には「強・用・美」という三つの要素がありますが、「強」にあたる建物の安全性に責を負う建築士を「構造設計者」、「用」にあたる建物の機能性に責を負う建築士を「設備設計者」、そして最後の「美」にあたる建物のデザインに責めを負う建築士を「意匠設計者」と呼びます。建築士にもそれぞれ専門があるのです

一般的な住宅よりも耐震性を高めたいなら、「○○構造設計事務所」という看板を掲げている建築士に相談

法的には高さ31mを超えると「高層建築物」、高さ60mを超えると「超高層建築物」となります

木造の構法
・伝統構法
・在来軸組構法
・枠組壁構法

四角形しかない伝統構法は、相対的に柔らかくて弱くなります

建物を耐震改修により硬くする・強くすることはできますが、それにより建物の耐震性が必ずしも高まるわけではありません。ある部分が補強されることで、その周辺部分の負担が増加してしまうからです

建築基準法により要求される耐震性は、地域によって異なっています

強いコンクリートをつくるには相応のコストがかかります。そのため、鉄筋コンクリート造の建物の変形を小さくしたいなら、使用する材料を硬くするよりも、部材を太くしたほうが効率がよいことになります

強さに対して硬すぎてしまえば、逆に耐震性を低下させる

戸建て住宅では、1階に窓の多い開放的なリビングを設置することが多いですが、それにより1階の耐力壁が不足しがちになり、2階に比べて1階が弱くなることがあります

タワーマンションは低層の住宅より「怖い」かもしれませんが、「安全」かもしれません

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これまで何冊か、教養として建築の本は読みましたが、本書のように構造の視点から書かれた本は初めて読みました。

ひょっとしたら専門書を紐解けば書かれていることかもしれませんが、ビジネスパーソンが教養として読むには、ピッタリの一冊だと思います。

日本の建物は、こんないい加減な「前提」で建っていたのかと驚き、思わずいろんな人に教えたくなる内容だと思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『教養としての建築』
バッコ博士・著 かんき出版

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◆目次◆

第1章 建築とは、○○である
第2章 建築とは、期待外れである
第3章 建築とは、間違いだらけである
第4章 建築とは、テキトーである
第5章 建築とは、予想外である
第6章 建築とは、想像と創造である
第7章 建築とは、未来である
第8章 建築とは、最高である

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