2025年1月8日

『偶発購買デザイン』 宮前政志、松岡康、関智一・著 vol.6636

【衝動買いを設計する、新たなアプローチ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883356183

本日ご紹介する一冊は、電通の現役戦略プランナーが、SNSで衝動買いを起こさせる秘訣を述べた、注目のマーケティング本。

「計画購買」と「偶発購買」とを分けて論じており、本書では特に「偶発購買」に有効なSEAMSというモデルを紹介しています。

Surf(回遊)
Encounter(遭遇)
Accept(受容)
Motivation(高揚)
Share(共有)

<「ほぼ知られていない」が「私だけのとっておき」となった商品は、情報価値が高く、SNSなどで体験が拡散する>という話や、CB(企業ブランド)とUB(ユーザーブランド)でサンドイッチするブランドサンドイッチ理論など、興味深い理論が紹介されています。

また、電通のメンバーが書いているだけに、顧客の事例やリサーチでわかった貴重なマーケティングデータが紹介されており、読む価値のある一冊だと思いました。

インフルエンサーやVTuber、ハイセンサーがなぜ重要か、どう活用すると偶発購買を促せるのかが示されており、経営者・マーケターにとっては、実践的な内容だと思います。

新しいトレンドや価値観を広めるキーパーソンであるハイセンサーがじつは衝動買いしやすい話(リア友ハイセンサーは全体の約5倍も衝動買いする)などは、興味深く読みました。

事例もためになるものが多い印象です。

「夜間美容」を打ち出し、ユーザーが「メスお兄さんの匂いがする」とつぶやいたことで成功したシャンプーの「YOLU」、施主がSNSで「家アカウント」を作る一条工務店、「#ニトリで見つけた」ハッシュタグなど、まさにCBとUBが相まって、ブランド価値を高め、購買を誘っている事例がいくつも紹介されています。

本書を読んだ後に、最近ふるわないブランドを想起すると、確かにこのCBの部分が欠けていることがわかると思います。

ある程度予算をかける必要はあるかもしれませんが、企業→インフルエンサー(VTuber)→ハイセンサー→消費者→さらなる発展という流れができれば、かなり面白いマーケティングになると思います。

さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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1日当たりのスマホやタブレット端末での行動時間の調査では、全体で目的の無い情報回遊は37分、目的の有る情報検索は35分であった

偶発購買の「知る人ぞ知る、私だけのとっておき」を求める時代のニーズは2017年以降増加している

「TikTok売れ」現象には日用品や食品の例が多い

家電・PCでは男性において偶発購買が見られやすく、50代男性では46.3%に上る

一条工務店で家を建てた“こだわり志向”のあるオーナーは、他社と比較しても強い拡散力と影響力を持っている

「YOLU」はこれまでのシャンプーのように「夜入浴する時に洗浄力や香りがいいという満足感を提供するシャンプー」ではなく、「入浴後ないし朝起きた時に最も良いヘアコンディションをつくってくれるシャンプー」として「夜間美容」と名づけられた新価値を提示している

シャンプーカテゴリーの購買事象から得られるヒントは3つある。1つ目は商品に新価値を付加すること、2つ目はユーザーの発話を意図的につくっていくこと、3つ目はユーザーからの期待値をコントロールすること

例えば、顧客と流通の「フレキシブル」で「循環型」な関係。スキマバイトアプリで近所の飲食店の助っ人で応援バイトに入った顧客が、その飲食店の店長と親密な関係になり常連顧客となる。雇用と顧客の関係性、給与と買物がフレキシブルに循環する消費サイクルだ

1日に2,600回触れるスマホ上の情報-接触は、中毒性の高いプライベート情報が6割超

プライベート情報時代は、企業主語のCGCよりユーザー主語のUGCに触れる機会のほうが多い。そしてCB(企業ブランド)とUB(ユーザーブランド)のサンドイッチで企業のブランドイメージはつくられるようになった

Instagramでは「かっこいい」「素敵」など右脳に語りかける情報を発信すべきだし、YouTubeでは深い機能価値、TikTokではライトな機能価値を発信するのがよい

リア友ハイセンサーは自らが試した実感をリアル生活圏の仲間内に広める使命感を持っている

文脈萌えする偶発購買設計フレーム「CRISP」
汎用性 Coordinability 発信センスが発揮できる余白の設計
実感力 Realizability 体験が人から人へ伝播する実感の設計
明快性 Intelligibility 簡単でわかりやすい価値の規定
予兆感 Signality 半歩先の時代を感じる印象の設計
価値観 Philosophy 社会的に共感できる思想の設定

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マーケティングが専門の宣伝会議さんから出ているからか、かなりディープな内容で、読み応えがありました。

どうでもいい話ですが、個人的にはカバーの著者名の配列がヨコ→タテに変化しているところが刺さりましたね。

ぜひ、読んでみてください。

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『偶発購買デザイン』
宮前政志、松岡康、関智一・著 宣伝会議

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883356183

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0DQ9KNK5Z

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◆目次◆

はじめに
第1章 情報回遊時代の偶発購買モデルSEAMS
第2章 プライベート情報時代のユーザーブランド
第3章 ソーシャルステータス時代のコミュニティ消費スイッチ
第4章 衝動買い時代の偶発購買デザイン
第5章 モバイルパンデミック時代の新価値自走型プロダクト開発
おわりに
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