2019年7月24日

『語源から哲学がわかる事典』山口裕之・著 Vol.5321

【違う視点から哲学を学ぶ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534057075

『英単語の語源図鑑』が、60万部を超える大ベストセラーとなって
いますが、本日ご紹介する一冊は、西洋哲学の「語源」から哲学を
学ぼうという、ユニークな切り口の一冊。

※参考:『英単語の語源図鑑』
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われわれが現在、普通に使っている哲学の専門用語がどこから生まれたのか、もともとはどういう意味なのか、言葉のルーツから学ぼうという、じつに意欲的な試みです。

最近は、ちょっとした哲学ブームで、わかりやすい入門書やポップなフィクションなども売れていますが、じつは<日本語で哲学を理解することは、なかなか難しい>というのが著者の弁。

本書では、ギリシャ哲学が生まれた背景から、プラトン、アリストテレスが作った言葉(ギリシャ語)、現在の諸学問が生まれるまでを丁寧に追い、哲学の正確な理解を促しています。

ファッション的に扱った「哲学」がいかに間違っているか。われわれが普段使う何気ない言葉が、いかに誤解されて使われているか。

本書を読んで語源をたどると、そのあたりがよくわかります。

さっそく、いくつかポイントをチェックして行きましょう。(文字化けを防ぐためにギリシャ語は省略します)

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「具体的な個物は仮の現れ(phenomenon)」で、本当の存在(being)は不変のイデアだ」というプラトン的世界観は、「個々
の現象(Phenomenon)の背後に自然法則が存在する」という自然科学の世界観にそのまま引き継がれている。「自然法則」は、プラトンのイデアの遠い子孫なのである

アリストテレスは、プラトンのような対話篇ではなく、論文調で文章を書いている。というか、「論文」という文章のスタイルを作ったのがアリストテレスである

哲学草創期の古代ギリシアでは、どのようなことが「求めるべき知恵」だったのか。そこで、アリストテレスの著作の一覧を見てみると、論理学、物理学、形而上学、動物学、心理学、天文学、気象学、政治学、倫理学など、およそ現在において「学問」と呼ばれるものの全域にわたっている

ニワトリの卵はニワトリにしかならず、柿の種は柿の木にしかならない。卵や種子には、それが成長すると何になるかという「自然」が「潜在能力:デュナミス」として含まれている。その潜在能力が「現実のあり方:エネルゲイア」になっていく過程が、この世界の生成変化なのである

要は、練習したり成長したりすると現れてくるが、現時点では現れていない能力や性質が、「ポテンシャル・デュナミス」である

「プシューケー」の語源は「微風」や「息」である。「プシュー」という擬音語だったのではないか、というのは私の憶測である。「息がある」という意味から、「生きていること→生命→魂・心」と派生していった

「哲学」を「人生観・価値観」と解釈し、「認識」を「個人的な見解」と解釈して哲学書を読めば、ほぼ正反対の意味に誤読することになってしまう。ソクラテスやプラトンにさかのぼると、哲学とは、単なる個人的見解や社会的な通念を排して、しっかりした根拠のある普遍的な知識を得ることであった

ギリシア語の「ロゴス」の中心的な意味は「計算」や「推論」である。つまり、式から式へ、命題から命題へと段階を踏んで徐々に真理へと進んでいくのがロゴスなのである。それに対して、「ヌース」には「一撃で真を見抜く」といったニュアンスがある。それゆえヌースとロゴスとでは、ヌースの方がエラいのである

「経験主義」とは「正しさは人それぞれの体験により異なる」という説ではなく、「実験によって誰しも納得する結果を得る」という説なのである

いくら人が神を演じようとしても、やはり神にはなりきれないということである。人間が経験主義的ないし科学的に世界を理解するためには、世界が人間にとって理解可能な形で創造されていなくてはならないのだ

死を考えることで人は、その他大勢の中での安住から引きずり出され、自分自身の、自分自身だけの存在を考えざるを得ない。そして、自分の本来のあり方を目指して生きることを決断する。『存在と時間』の議論を大雑把にまとめると、おおむねこういうことである

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土井はギリシャ語が多少できるので、ワクワクしながら読みましたが、ここまでギリシャ語がたくさん出てくると、人によっては読み切るのが難しいかもしれません。(もちろん、ギリシャ語がわかるのは前提ではないのですが…)

とはいえ、ここまで哲学が生まれた当時のことを丁寧に追った本は珍しく、最高に知的でワクワクする本なのは確かです。

哲学を正しく理解するために、何より先人たちの英知に触れるために。

ぜひ、読んでみてください。

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『語源から哲学がわかる事典』山口裕之・著 日本実業出版社

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◆目次◆

序 章 この本にはどんなことが書いてあるか
第1章 哲学:Philosophy<知を愛さずにはいられない>
第2章 認識:Knowledge<人それぞれではありません>
第3章 存在論:Ontology<「~がある」と「~である」のせめぎあい>
第4章 神学:Theology<哲学のご主人様は神様>
第5章 認識論:Epistemology<「私」は神様>
第6章 哲学する:Philosophize<「自分で考えることが大切」という意味ではない>
出典と余談、あるいはさらに詳しく知りたい人のための文献ガイド

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