2019年7月18日

『本業転換』山田英夫、手嶋友希・著 Vol.5317

【既存事業に縛られた会社に未来はあるか】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4046041935

日本企業の長寿化・高齢化、そしてマーケットの著しい変化…。ビジネスの現場では、「本業」にこだわることがかえって危険を招く、そんな状況が相次いでいます。

本日ご紹介する一冊は、早稲田大学ビジネススクールの山田英夫教授と、同ビジネススクールを修了した手嶋友希氏が、「本業転換」をテーマにまとめた、本格論考。

1 富士フイルムホールディングス vs. イーストマン・コダック
2 ブラザー工業 vs. シルバー精工
3 日清紡ホールディングス vs. カネボウ
4 JVCケンウッド vs. 山水電気

以上の4つの企業のケースを比較し、本業転換を見事に成し遂げ、生き残った企業とそうでない企業の違いを浮き彫りにする、じつに興味深い内容です。

山田教授の分析はいつも詳細でしつこく、突っ込んだところが大好きですが、本書もまた細かい(笑)。

各企業が転換期に置かれた状況と、そこで起こったこと、意思決定の争点を丁寧に拾い出し、明暗分かれたポイントをまとめています。

最終章では、本業転換の5つのポイントと、なぜそれが大事なのか、構造上の理由を読み解いており、これは勉強になりました。

規模の大小を問わず、すべての経営者、経営幹部、経営企画室、経営コンサルタントが読むべき内容だと思います。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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本業比率が7割以上で、従業員の平均年齢が30歳を上回った場合、企業は成長率を鈍化させていく

実は本業比率と平均年齢の2つの指標には、相関がある。多角化が上手くいった企業は、新事業部門に若い従業員を採用するため、平均年齢の上昇をとどめることができる。従って、企業がコントロールできるのは本業比率のほうであり、平均年齢はそれに伴って変化する変数と言えよう

富士フイルムでは自社の技術ポテンシャルについて、徹底的に分析した結果、医療や化粧品分野への進出が検討された。すなわち多角化の方向としては、「市場関連多角化」ではなく、「技術関連多角化」が優先された

「JOYSOUND」は、「TAKERU」と同様、電話回線を通じてデータを配信するものであり、まさに、蓄積された技術が生かされた新事業であった

日清紡は1950年代後半に、合成繊維への進出はしないと決断した

カネボウは繊維の需要が安泰である時期に、新たな収益源を模索しておらず、事業環境が悪化してから、急激にM&Aによる異業種への多角化を実施した。また急激なスピードで一挙に多角化したことで、経営資源が拡散し、当該業界が必要とする投資金額に届かず、事業ごとへの資源配分が手薄になった

デジタル化には、コスト競争のグローバル化を促し、日本製を減らしていく傾向があるのである

4つの存続企業に共通する点は、本業の需要が安定している時期に、多角化を始めたということである

「遠そうで近いもの」と「近そうで遠いもの」

従来の本業で使っていたモノサシで新事業を測ると、一向に評価されないことがある

体内時計の遅い(時間感覚の長い)企業が、体内時計の早い(時間感覚が短い)事業を行うと、マネジメント上の問題が生じやすい

本業転換に成功した富士フイルムや日清紡などでは、本業に比べ新事業の規模は当初は小さく、それを時間をかけて育てていったことがわかる

新事業に本業の規模を求めるな

キャッシュフローが少なくなった段階での多角化においては、手元の経営資源で着手でき、すぐに花咲くような事業にしか進出できない

企業の創始期は、事業を立ち上げた人が経営層にいるが、歴史を刻む中で、起業を経験した役員は減ってくる。事業を立ち上げた経験のない役員が経営層の大半になってくると、そもそも創業モードにもっていくことが難しい

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ここで取り上げられた4つ、計8社の事例は決して他人事ではなく、自社の未来、明日の日本企業の未来です。

「本業」にこだわることの危険、転換の上手なやり方のヒントを、本書は教えてくれます。

マーケットの変化が激しい今、ひょっとしてフォーカスすべきはお客様ではなく、自社の技術かもしれない…。

本書は、そんなシナジー発見のヒントも提示しています。

ぜひ読んでみてください。

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『本業転換』山田英夫、手嶋友希・著 KADOKAWA

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◆目次◆

第1章 転換して生き残る企業、転換せずに終わる企業
1 本書の狙い──本業が衰退しても生き残る会社の共通点は
2 本業転換の難しさ──第一歩を遅らせる5つの理由
3 そもそも「本業」とは何なのか
4 「成熟・衰退→多角化→転換」の先行研究
5 事例企業の選定
第2章 “本業転換”のストーリー──事例研究
1 富士フイルムホールディングス vs. イーストマン・コダック
2 ブラザー工業 vs. シルバー精工
3 日清紡ホールディングス vs. カネボウ
4 JVCケンウッド vs. 山水電気
第3章 本業転換のポイント
1 存続企業に共通していること
2 衰退企業から学べること
3 本業転換の「2つの視点」
4 ケースから読み解く「経営上の示唆」
5 たゆまぬ本業転換

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