2016年4月6日

『進化系ビジネスホテルが予約がとれないほど人気なワケ』 永宮和美・著 vol.4278

【今、ホテルビジネスが熱い】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4800309069

中国人をはじめ、外国人観光客の需要が目覚ましい今日ですが、意外と見落とされている視点があります。

それは、観光需要を盛り上げているのは、じつは外国人だけではない、ということです。

現在、大都市や人気観光地のホテルは客室稼働率が80%~90%、客室の平均販売価格もここ数年で2~4割上昇しているそうですが、じつはこの需要のほとんどは、シニア層と団塊世代です。

観光庁の「宿泊旅行統計調査」によると、日本全体の宿泊施設の宿泊者数総計に占める外国人客の比率は1~2割。やはり、シニア層、団塊世代の国内レジャー需要が圧倒的だということなのです。

そのことを指摘し、かつ現在の最新ホテルビジネス事情を明らかにしたのが、本日ご紹介する一冊。

ベテランホテルジャーナリスト、永宮和美さんによる『進化系ビジネスホテルが予約がとれないほど人気なワケ』です。

以前ご紹介した『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか?』の時と同じような衝撃を受けましたが、やはり業界特化型のマーケター、ジャーナリストの方の話はよく調べられていて面白い。

※参考:『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか?』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534052723

観光やホテルに関わる事業は、ほとんどが大企業によって手掛けられているため、株式投資にも役立ちそうな話が満載です。

今、なぜ進化系ビジネスホテルが熱いのか、顧客の需要はどう変わってきているのか。ビジネスに閉塞感を感じている方には、ヒントが満載の一冊です。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

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中級以下の価格帯のホテルでは、無料朝食の提供がこの十数年間のトレンドとなっていたが、ここ2、3年では1000~2000円の範囲で有料化が進み、代わりに高級ホテルにもひけをとらないような内容の朝食を出すところも続出している

バブル期までの日本の外資系ホテルの多くは、ホテルをつくった日本の会社が経営し、アメリカのメガチェーンが運営業務を受託するという方式か、フランチャイズ方式が多かった。運営受託の場合も、アメリカのチェーンは主要ポストに人材を送り込むだけで、スタッフ採用の責任や経営リスクは日本側がすべて負うかたちだった。それでいてチェーン側は高い受託料を受けとる。日本のホテル業界関係者はかつて、それを「不平等条約」と自虐的にいっていた。しかし、いまは「出たければテナントでどうぞ」というのが日本側のスタンスだ。立場逆転。なぜか。外資系各社は、東京や京都はやはり成長が期待できる最有望マーケットという判断をしているのだ

ネックは用地不足と建設コスト高騰

旅行口コミサイト大手のトリップアドバイザーで「朝食のおいしいホテル」として全国トップの座を連続獲得しているのは、神戸の「ホテルピエナ神戸」。レジャー客主体のホテルだが、朝食メニューの内容が半端ではない。朝からモーニングステーキやブイヤベース、ポトフがブッフェ台に並び、主菜のバリエーションがとにかく豊かだ(中略)このホテルは「スイーツホテル」と自称するほど自家製スイーツに力を入れているが、朝食にも十数種類のケーキブッフェが提供され、甘党の女性客に大人気となっている

ホテルでのWi-Fiの速度環境については、アメリカ企業のHotel WiFi Test Inc.が世界主要都市のホテルを対象に実証結果を公表していて、提携する予約サイトのトリップアドバイザー「ホテルズドットコム」などのサイト内で表示するサービスも展開している(中略)無料Wi-Fiがあるというだけではもうダメで、その速度が宿泊先選定の重要なファクターとなりつつあるのだ

独身寮や保養所の運営受託で成長した共立メンテナンス。同社が展開する宿泊特化型ホテルブランドであるドーミーインは、アパホテルと同様に天然温泉や人工温泉の大浴場を売りにして成長した

2020年までに海外出店100軒を狙うアパホテル

エクスペディアによると、2014年中の日本国内ホテルの予約ランキング(同サイト経由での予約成立数)では、1位「ホテルサンルートプラザ新宿」、2位「新宿グランベルホテル」、3位「新宿ワシントンホテル」、4位「京王プラザホテル」と上位4位までを新宿のホテルが占める

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このホテル業界の活況は、何もオリンピックのせいだけではないようで、本書の前半にこんな記述がありました。土井もNYに行って、その通りだと思っています。

<インバウンドの拡大は、円安だけでなく、アニメや日本食などで世界的に日本ブームが巻き起こっている影響も大きい>

ただ、気をつけなければいけないのは、すべてのホテル部門が好調なわけではないということ。こちらも本書からの引用です。

<ホテルの急回復は客室部門に限られていて、街場のレストランに競り負けているレストラン部門は相変わらず苦戦している。宴会部門は少しずつ回復しているものの、バブル期のような稼ぎが戻ってくることはないし、婚礼も、適齢人口の減少で争奪戦がますます熾烈になる。そこへいくと、客室が売上高のほとんどを占めるビジネスホテルは強い>

株式投資する際には、本書の内容をよく読んで、投資先企業のホテルがどんな戦略を持っているか、それがいつまで続くのか、見極めることが重要です。

ホテル業界を中心に、日本の内需の動きを示した意欲作。薄いのに、とてつもなく読み応えがありました。

これはぜひ買って読みたい一冊です。

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『進化系ビジネスホテルが予約がとれないほど人気なワケ』
永宮和美・著 洋泉社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4800309069

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◆目次◆

第1章 活況に沸くビジネスホテル新時代
第2章 競争激化で進化するサービス革命
第3章 新旧ホテル企業の出店戦略
第4章 都市別ビジネスホテル勢力図
第5章 知られざる開発の舞台裏
巻末リスト 主要ビジネスホテルブランド一覧

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