2013年2月21日

『メリットの法則』奥田健次・著 Vol.3138

【行動を変える、「行動分析学」という武器】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087206645

ビジネス・自己啓発書はノウハウの時代が終わり、結果に直接影響する「行動」にフォーカスする書籍が増えてきました。

現在、ビジネス書ベストセラーのトップを独走する、ケリー・マクゴニガル氏の『スタンフォードの自分を変える教室』は、その代表例でしょう。

※参考:『スタンフォードの自分を変える教室』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479793631

本日の一冊は、人間の問題行動や「やめたくてもやめられない」習慣を断ち切るための「行動分析学」を紹介した一冊。

著者の奥田健次氏は、専門行動療法士、臨床心理士で、子どもの問題行動を改善するプロフェッショナルです。

本書によれば、著者はかつて「重度のてんかんを持つ知的障害のある自閉症」の子どもに、奇声を上げるのをやめさせた実績があり、一日平均58回の奇声を上げていた子どもが、1週間で1日平均4回、2か月目以降は、一度も奇声を上げなくなったそうです。

著者が試みたのは、「奇声をあげたら、お母さんと離れ離れ」になってしまうという条件設定。

これにより子どもは、問題行動をピタリとやめたというのです。

本書を読んで、なるほどと思わされたのは、「行動随伴性」という概念で、具体的には、行動と、行動の直前と直後の三つの箱で、一つの行動をとらえていく方法。

この方法で分析すると、人間の行動は、すべて四つの行動原理で説明でき、具体的には、以下の四つに整理されるようです。

◆あらゆる行動を説明できる四つの行動原理
・「好子」出現の強化
・「嫌子」消失の強化
・「嫌子」出現の弱化
・「好子」消失の弱化

以前はお買い物ポイントなしだったのに、ポイントカードを提示したらお買い物ポイントが付くというのは、「好子」出現の強化にあたります。

本書では、こうした行動分析学のフレームワークを使って、どうやったら部下や子どもの行動を改めさせられるか、具体的な提案がなされています。

行動が起きてから60秒以内にフィードバックを与えること、ダイエットのように結果が出るのに時間がかかる場合、別の好子や嫌子を付加していくことなど、アドバイスがいちいち実践的です。

なかでも役立ったのは、4種類しかないという、行動の機能。

◆行動の機能は、たった4種類しかない
・物や活動が得られる
・注目が得られる
・逃避・回避できる
・感覚が得られる

忙しい親はついついやってしまいがちなのですが、<子どもが安定している時には放っておいてしまって、逆に不穏な状態で不安を訴えたときには、とても心配で放っておけないというこ
とで、注目を与えてしまいがち>。

これでは、子どもは逆に問題行動を起こすように動機づけられてしまうのです。

部下や子どもに間違ったインセンティブを与えないために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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その行動がなぜ起きるのかについての理由を考えるとき、その行動の前に何が起きたのかを考えるよりも、その行動の結果として何が起きたのかを考えなければならない

◆あらゆる行動を説明できる四つの行動原理
・「好子」出現の強化
・「嫌子」消失の強化
・「嫌子」出現の弱化
・「好子」消失の弱化

行動が起きて60秒を過ぎてから好子や嫌子が出現あるいは消失しても、ほとんど効果がない

ヘルシーメニューを選んで食べた直後、体重が2kg減るという魔法のようなことが起こるのであれば、ダイエットしたい人はその魔法のメニューを食べるようになるだろう(中略)しかし、好子は行動が起きてから長くても60秒以内に出現していなければ効果がない。だから、ダイエットは簡単ではないのである

彼の姿が見当たらなくなったその日以降(消去の開始)、むしろ早めの電車に乗るという彼女の行動は週5、6回程度にまで増加している

変動比率スケジュールでは、何回かに1回の行動に対して好子が出現するが、その好子がいつ出現するかは変動している(中略)変動比率スケジュールと好子の量次第で、「のめり込みす
ぎ」や「のめり込ませすぎ」ということが起きるのだ

お母さんは赤ちゃんの適切な発声に対して、毎回ほめることができるか。すなわち、連続強化が可能かと言うと、そんなことは実際の生活ではありえないだろう。むしろ、たまにしか相手
にできない。すなわち、部分強化になっているのが現状だ。しかし、実は部分強化で強化された行動のほうが強く維持されるということもわかっているし、行動のバリエーションが豊かに
なることもわかっている

人間も含め動物は、ある種の感覚を強く引き起こす刺激にさらされ続けると、その刺激によって引き起こされる反射が次第に弱くなる(=馴化)

◆行動の機能は、たった4種類しかない
・物や活動が得られる
・注目が得られる
・逃避・回避できる
・感覚が得られる

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『メリットの法則』奥田健次・著 集英社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087206645

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◆目次◆

まえがき
第1章 その行動をするのはなぜ?
第2章 行動に影響を与えるメカニズム(基本形)
第3章 行動がエスカレートしたり、叱られても直らないのはなぜ?
第4章 行動に影響を与えるメカニズム(応用形)
第5章 行動は見た目よりも機能が大事
第6章 日常にありふれた行動も
あとがき
主要参考文献

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