2005年12月5日

『人を動かすテクノロジ』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282465

本日の一冊は、「コンピュータは人を説得できるのか?」というテーマに、真正面から挑んだ一冊です。

著者のB・J・フォッグさんは、スタンフォード大学で博士号を取得後、同大学にスタンフォード・パースウェイシブ・テクノロジ研究所を設立。実験心理学の立場から、インタラクティブ技術がいかにして人間の行動や考えを動機づけ、変えることができるのかをテーマに研究を続けている人物です。

テーマや著者のプロフィールだけを見ると、いかにもアカデミックな雰囲気ですが、その内容は、ビジネスにおいて極めて有用です。

とくに、ウェブを使った広告やセールスに関心のある方にとっては、見逃せない内容となっています。

数年前に比べると、インターネットにおける販売技術はかなり発達しましたが、実際に成果を挙げているウェブとそうでないウェブの違いはますます開きつつあります。

その違いは、決してツールの問題ではなく、心理学をふまえた説得のプロセスが実現できているかどうか。

その点、本書では、コンピュータが人間に対し、説得力を持つケースを徹底的に検証。事例も含めて、きちんと説明しています。

翻訳が読みづらいのが玉に瑕ですが、これはいわば、コンピュータ版『影響力の武器』。読まない手はないと思います。

※参考:『影響力の武器』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4414302692
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■ 本日の赤ペンチェック
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人の態度や姿勢、行動を変えることを目的として設計される対話的なコンピュータ・システム――の時代に我々は突入した

一般的な法則として、対話的に行うのが最も効果的な説得術(中略)有能なセールスマンはこの戦略を熟知しており、売り込もうとしている顧客の反応に合わせて自分のセールスの口上を変えながら話を進める

◆コンピュータが人による説得に対して勝る点
1.人間に比べて辛抱強い(24時間働き、最適なタイミングを狙える)
2.匿名性を広く活用する(情報収集や手助けを提供することが容易)
3.膨大なデータを扱う(事実、統計値、参照データで説得力アップ)
4.あらゆる影響戦略を使う
5.容易に拡張できる
6.人間がいけないところや望まれない場面に現れ介入できる)

◆テクノロジ製品で実現する7つの説得の原理
1.手順の省略の原理(煩わしい仕事や用事を簡単に)
2.トンネリングの原理(説得の原理をプロセスに組み込む)
3.カスタマイズの原理(個人用にカスタマイズすると説得力が増す)
4.提案の原理(最適なタイミングでアイデアや情報を提供すると効果的)
5.自己監視の原理(あらかじめ設定した目標や結果を達成しやすい)
6.監視の原理(他人から観察されていると人は行動を変える)
7.条件づけの原理(行動目標を強化する)

行動をリハーサルできるような動機付けシミュレーション環境を提供することで、現実世界における態度や行動を変えさせることができる

バーチャルな世界で目的とする行動を達成したときに報酬を与えるコンピュータ・シミュレーションを使用することで、ユーザーは現実の世界においても、目的とする行動を繰り返し、効率的に行えるようになる

環境シミュレーションは自己効力感を高めるだけでなく、恐怖感、およびそこから生じる行動を抑えることができる

自分と似たところをもつコンピュータ製品に、人は説得されやすい

言葉や画像、記号や音を使って人に称賛を与えることにより、コンピュータ・テクノロジは説得を受け入れやすい状況にユーザーを導く

そのサイトの情報の正確さが、サイト外の情報を使って容易に確認できるようになっていると、ユーザーのサイトに対する信頼性は向上する

ユーザーへの応答が早ければ早い程、Webサイトの信頼性が認知される度合いは高くなる
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『人を動かすテクノロジ』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822282465
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■目次■
序章 デジタル時代の説得手法
第1章 カプトロジの概要
第2章 機能の3元素
第3章 説得の道具としてのコンピュータ
第4章 説得のためのメディアとしてのコンピュータ
第5章 ソーシャル・アクターとして振る舞う説得のためのコンピュータ
第6章 信頼性とコンピュータ
第7章 ワールドワイドWebと信頼性
第8章 携帯性とネットワーク接続機能による説得力の向上
第9章 説得のためのテクノロジと倫理的な課題
第10章 カプトロジ:将来に向けて
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