2015年2月14日

『悪の出世学』中川右介・著 vol.3861

【権力を掌握するには】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344983424

本日の一冊は、音楽家や文学者の評伝をはじめ、精力的に執筆活動を続ける中川右介さんが、ヒトラー、スターリン、毛沢東の「権力掌握術」を論じた一冊。

これまでに出されている文献を丹念に調べ、彼らの出世のエピソードと、そこに至るまでの軌跡、権力を掌握するためにとった手段を紹介したもので、エピソードの終わりにはきちんとノウハウもまとめられています。

・汚れた仕事をする時は共犯者を作り相手の弱みを握る(スターリン)
・勝てる相手としか闘わない(ヒトラー)
・最高幹部のたった一人の連絡役になる(スターリン)
・いらなくなった古参の部下は、窓際に置いて自ら辞めるように仕組む(ヒトラー)
・手に負えない分野は無理しない。適任者に任せる(ヒトラー)
・若い時の結婚相手は、それなりの社会的地位の娘を狙う(毛沢東)
・粛清は堂々と行ない、人々に恐怖心を植え付け、逆らう気力を奪う(ヒトラー)
・現行ルールが自分に不利だったら、ルールを変える(ヒトラー)

囲みで紹介されているノウハウをざっと読むだけでも、刺激的でかつ有用な処世術がいくつも登場し、読者に「政治力」をつけてくれます。

3人の生い立ち、出世のエピソードも面白く、歴史の知識を強化してくれます。

マキャベリの『君主論』同様、悪徳の書かもしれませんが、リーダー、出世を狙う方なら、知っておきたい「現実」が満載の一冊です。

※参考:『君主論』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061596896

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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スターリンは会議ではいつも最後まで何も発言しなかった。全員がそれぞれの意見を言うのを聞き終えてから、発言する。まず、いままでに出た意見をいくつかに分類し、それぞれを比較してみせる。みな、聞き入るしかない。そのまとめ方が的確なので、誰も異論を挟まない。こうして、全員がスターリンの言うことに聞き入ったところで、彼自身の意見を述べると、いつの間にかそれが会議の決定事項となる。これがスターリンの会議術だった

危ない仕事・汚い仕事に他人も巻き込んで共犯関係を作って相手の弱みを握る──親しくなって弱みを見つけるのではなく、弱みを作り出して、相手を屈服させるというのが、スターリンの人生の基本戦略

自分の能力を実際よりも過大評価させて出世するのもひとつの方法だが、その反対に、過小評価させることで出世したのがスターリンである。だいたい、実力もないのに有能なふりをしてもいつかはばれてしまう。実力よりも下に見せるほうが簡単だ

嫉妬をしない者は、相手の嫉妬に気づかず、油断するものなのだ

スターリンは実務を引き受けることで党内の情報を掌握し、彼なしでは組織が動かない状況を作り上げていく。これもまた権力への階段を登る、ひとつの道だった。業績などなくてもいいのだ。組織運営の根幹さえ掌握すればいい

ヒトラーはあえて無能な者に留守を任せたのである。自分の留守中に党が拡大してしまったら、その者に権力と権威が渡り、ヒトラーが出獄してきた時には乗っ取られているかもしれない

有能なライバルをあえて困難な仕事に就かせたのである。ライバルが成功しても、失敗しても、ヒトラーが得をする図式だった

父は商才のある人で地主となった。しかし粗暴な人で、妻や子に暴力をふるうのは日常茶飯事のDV男だった。母は優しい人だったという。毛沢東は三男だったが二人の兄は夭逝したので、実質的には長男として育てられ、弟が二人いた。この弟たちも革命運動に加わる。毛沢東は幼少期より本好きで、世界の英雄の伝記を好んだという

女のことになると、毛沢東は暴走する。「英雄色を好む」の典型例である。これが出世レースと権力維持闘争においてマイナスに響かなかったのは、自分が色を好むことをあまりにも堂々と周囲に公言し、女性関係を隠さなかったからだ。むしろ側近たちのほうが世間体を気にして、毛沢東の乱脈な女性関係を隠してくれるようになる

◆毛沢東の名言 ※一部紹介
「政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治である」
「鉄砲から政権が生まれる」
「人間は若くて無名で貧乏でなければよい仕事はできない」

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『悪の出世学』中川右介・著 幻冬舎
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344983424

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◆目次◆

第一部 立身
第一章 スターリン──仁義なき戦い
第二章 ヒトラー──意志の勝利
第二部 栄達
第一章 スターリン──継ぐのは誰か
第二章 ヒトラー──我が闘争
第三章 毛沢東──大地の子
第三部 野望の果て
第一章 ヒトラー──国盗り物語
第二章 スターリン──バトルロワイヤル
第三章 毛沢東──ラスト・エンペラー

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