【権限を持たずに人を動かす方法】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4419050500
本日の一冊は、GEや東芝、IBMなどでリーダーシップ開発のコンサルティングを行うアラン・R・コーエン教授と、スタンフォード大学ビジネススクールで組織行動学を教えるデビッド・L・ブラッドフォード博士による組織人間学の決定版。
「影響力」というと、すぐに相手を動かすあざとい心理テクニックが思い浮かびますが、本書が提案しているのは、レシプロシティ(互恵性)に基づく人間関係構築と交渉のテクニックです。
つまり、人はそれぞれ求めているものが違うわけで、それを正しく認識し、適切な取引を行えば、人は必ず動かせる、というわけです。
著者は、この相手が認識する価値あるものを「カレンシー(通貨)」と呼び、人によって異なるカレンシーを説明しています。
カレンシーには人をやる気にさせるビジョンや重要な仕事という、上昇志向の人が好むものもあれば、仕事への援助や所属意識、感謝の表明などといったものもあり、いかに人によって欲しいものが違うのかを、まざまざと見せつけられます。
相手がどんなカレンシーを求めているかを探る質問、相手との対話の仕方など、かなり具体的なところまで載っているので、じつに参考になる内容です。
コミュニケーション能力を向上させるための心構えとしても秀逸で、興味深い言葉がいくつも見つかります。
たとえば、「あなたは自分が正しいことを証明したいのか、それとも求められる成果をあげたいのか」「相手が受け入れやすい方法できかけなければ、影響力を発揮することはできない」という言葉。
一読しただけだとそれだけの内容ですが、実際にはほとんどのコミュニケーション問題の根幹を言い当てた、鋭い見識だと思います。
自分が上司であれ部下であれ、組織内でのコミュニケーションが苦手、という人には、本書は一読の価値があります。
ちょっと高めですが、ぜひだまされたと思って読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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権力がなくても人は動かせるのだ。いや、権力など使わなくても人は動いてくれるのだ。この原理こそレシプロシティである。人にして欲しいことがあるのなら、自分から先にしてあげなさい。そうすれば人は動いてくれる。人の歴史はこの原理の正しさを証明し続けてきた(刊行にあたって 高木晴夫教授)
非協力的な人を動かすのは最大の課題である。早まって相手を悪く言うより、あなたが動かしたい相手は誰であっても仕事上の味方になり得ると考えよう
組織の中で人を動かすには、常に仕事の質と人間関係の質の両方を保つ必要がある
人を動かす力は、他者のためになることを常に真剣に考えている人が発揮できる能力なのである
◆よく効くカレンシー
1.気持ちの高揚や意欲を喚起するもの
2.仕事そのものに役立つもの
3.立場に関するもの
4.人間関係に関するもの
5.個人的なもの(その人自身に関すること)
自由裁量の幅を広げたい、挑戦の機会をもっと手に入れたいと願う人は少なくはないが、たいていは自分の仕事に手を貸して欲しい人や負担が減ると喜ぶ人の方が多い
ある人たちにとっては、集団に属しているという感覚が、価値あるカレンシーになる
支援的であること自体に価値を見出す人々にとっては、仕事に関係ないことであっても感謝を表明されると嬉しい
相手が日常の仕事で何を大事にしているのかを見ると、その人にとって何が重要なのかをとらえることができる。どんな用語、表現を使っているのか。協力したくないとき、何を言い訳にするか? 依頼に応えると周囲からどのような評価や報酬が与えられるのか?
評価や報酬の基準は、人の行動に大きなインパクトを与える
手助けを求められた時に、すぐさま他に誰が関わっているかを尋ねる人は、社内の派閥の動きを懸念している可能性が高い
見えていない価値を見せ、交換する
・離職によるコスト
・過剰在庫の保管コスト
・従業員満足度と売上の関係
・顧客ロイヤリティがもたらす価値
・障害やサービスの遅れによるコスト
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『影響力の法則』アラン・R・コーエン、デビッド・L・ブラッドフォード・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4419050500
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◆目次◆
第1章 なぜ影響力なのか―この本から得られること
第2章 影響力の法則―レシプロシティを活かす
第3章 交換メカニズムで人は動く―何を交換するのか
第4章 なにが人を動かすのか―相手の世界を知る
第5章 使っていない力を活かす―目標、優先順位、リソース
第6章 人間関係を築く
第7章 交換の戦略
第8章 上司に影響を与える
第9章 やっかいな部下を動かす
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