2013年3月6日

『昨日までの世界(下)』ジャレド・ダイアモンド・著 Vol.3151

【今日は下巻を紹介!『銃・病原菌・鉄』著者の最新作】
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本日の一冊は、昨日に続き、名著『銃・病原菌・鉄』の著者、ジャレド・ダイアモンド氏の最新作を紹介。

※参考:『銃・病原菌・鉄』
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『銃・病原菌・鉄』は、文明の発達に地域間格差が生まれた理由を考察し、「優位性」の秘密に迫った本でしたが、今回の本は、われわれが伝統社会から何を学べるか、というコンセプトで綴られています。

この下巻では、ニューギニア人の危険への対処法、宗教、言語、健康をテーマに、現代人であるわれわれが学ぶべきことを示してくれています。

第4部では、「まだ未熟だった」著者が、ニューギニアで危険に遭ったエピソードとともに、彼らがどうやって生命の危機に対処しているのか、その方法論やマインドが学べます。

ニューギニア人は、一見重要ではなさそうな小さな物事にも目を向ける「建設的パラノイア」で、自然界のリスクに対処しているわけですが、これは投資や人生においても役立つ考え方だと思います。

<被害リスクの生起頻度が低い行為であっても、その行為を頻繁におこなうのであれば、リスクを冒して若死にしないように用心すべき>

<仲間との会話を絶やさず、口づてにできるだけ多くの情報を手に入れ、自分を取り巻く世界の状況を理解し、人生の危険に対応すべく備える>

<食料を生産する場所を分散させる>

反対に、本書では、「攻め」に対するニューギニア人の姿勢についても、述べられています。

<絶好のチャンスがくるまで、待ちつづけることはできない>

<(ニューギニア人は)平均寿命が八〇歳の先進諸国の人々よりも、絶好のチャンスを待てる時間が短いのであり、そのぶん高リスクの行動も受け入れられる>

ほかにも、二言語主義の利点や、健康上のリスクなど、さまざまな視点が述べられていますが、ジャレド・ダイアモンド氏に糖尿病の話をしてもらわなくても、という印象は抱きました。

ただ、ニューギニア人とわれわれの生活の諸条件を比べることで、自分たちの生活のリスクを客観視する、よいきっかけができたと思います。

何が当たり前で、何が当たり前でないのか。何が崩れたら、われわれの生活が脅かされるのか。

健全な危機意識を持てたように思います。

国を作る責任あるリーダーに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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一〇〇〇回に一回しか死なないようなことでも、年一〇〇回それをおこなうような生活をしていれば、一〇年以内に死んでしまう確率が高い

彼は、地面に何気なく突き刺さった小枝の存在に気づき、私はそれに気づかなかった。彼も私も、その小枝が敵対部族の存在を意味するものなのかどうかの見当がつかなかった。しかし、彼はそれをひじょうに気にして、恐れていた

それまで外部の人に接したことがない人々と初めて接触するのは、かなりの危険がつきまとう。どちらの側も、相手の欲することや、相手が何をしようとしているのかよくわからないからである

「打たないシュートは一〇〇パーセント入らない」(名ホッケー選手ウェイン・グレツキー)

(ニューギニア人は)平均寿命が八〇歳の先進諸国の人々よりも、絶好のチャンスを待てる時間が短いのであり、そのぶん高リスクの行動も受け入れられる

危険がいっぱいの環境で生活していることと、人々が話し好きであることのふたつは、伝統的な生活にみられる特徴である

◆伝統的社会の人々が直面する4つの主たる危険
・環境上の危険
・人の暴力行為の危険
・感染症と寄生虫疾患の危険
・飢餓の危険

クン族は危険に対して果敢に立ち向かう。しかし、危険な状況をあえて求めたりはしない

国家政府の下では、傾向として、暴力行為が減少する

農地が分散化すればするほど、時間平均の収穫量が減少するが、年間総収穫量が飢餓水準以下に落ち込む可能性も減少する

◆伝統社会における、食糧不足への3つの対処方法
・余剰食料を保存食として備蓄する
・いろいろな種類の食材を食すようにする
・分散して生活したり、みなで集まって生活する

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『昨日までの世界(下)』ジャレド・ダイアモンド・著 日本経済新聞出版社
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◆目次◆

第4部 危険とそれに対する反応
第7章 有益な妄想
第8章 ライオンその他の危険
第5部 宗教、言語、健康
第9章 デンキウナギが教える宗教の発展
第10章 多くの言語を話す
第11章 塩、砂糖、脂肪、怠惰
エピローグ 別の空港にて
謝辞
訳者あとがき
参考文献
索引

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