2006年5月1日

『ガルブレイス 闘う経済学者(上)(中)(下)』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822244911
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482224492X
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822244938

すでにご存知の方も多いと思いますが、29日夜、アメリカを代表す
る経済学者で、ハーバード大学名誉教授のジョン・ガルブレイスが、
97歳で亡くなりました。老衰だったそうです。

ガルブレイスは、名著『不確実性の時代』の著者として知られ、ま
た学者としては、ニューディール政策をはじめ、いくつかの重要な
政策に、大統領のブレーンとして関わりました。

※参考:『不確実性の時代』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061830600

本書は、そのガルブレイスの生涯を、オックスフォード大学出身の
経済学者がつづったものです。

ガルブレイスの生い立ちから経済学の世界に入ったきっかけ、ニュ
ーディール政策とのかかわり、作家・ジャーナリストとしての活動、
そして経済学者からの批判…。

ガルブレイスの人生と、社会に対する貢献、経済学的な意義などを、
余すところなく盛り込んだ力作です。

各巻400ページを超す大著のため、読むのには骨が折れますが、GW
中の読書には張り合いがあっていいのではないでしょうか。

ガルブレイスの功績や、経済学の歴史を学びたい方は、ぜひチャレ
ンジしてみてください。

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■ 本日の赤ペンチェック
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これら、生来的でもあり強いられたものでもある三つの特質――自
意識の強さがはぐくんだ思考とスタイルの独自性、回り道の人生、
そして、慎重派や保守派の同僚が大きく距離を置いたこと――は、
ジョン・ケネス・ガルブレイスの生涯だけでなく、その経済学にお
ける業績についても、特色の多くを明らかにするのに役立つ

ガルブレイスの少年時代は、農場の生活が中心となった。そしてこ
れは、生涯消えることのない習性を彼に植えつけた。その最たるも
のは、おおらかな田舎紳士を思わせるときもある寡黙な態度を取る
ことが多いとはいえ、彼がきつい仕事に耐えられるということだ

これまでガルブレイスの業績は、周りの経済学者たちから、単なる
大衆化だとか、学問の威厳に不相応とか、理論上だけの進歩だかと
評され、絶えず攻撃されてきたが、実際には、そうしたガルブレイ
スの手本になっていたのはケインズだった

私はガルブレイスに物を書く法を教えた。今では全く惜しいことを
したと思っているよ(タイム、ライフ、フォーチュンなどを創刊し
たヘンリー・ルースの言葉)

『アメリカの資本主義』が成功して作家としての自信を深めたガル
ブレイスは、鋭い洞察のナイフを惜しみなくふるって、1920年代の
市場で暴走する狂気をたくみに切り分け、相場師や金持ち、そして
彼らの庇護者となった政治家たちの虚飾や欺瞞、自己欺瞞を露呈し
てみせた

いつの時代も古い秩序は、必ず激しい抵抗を示してから退却する。
「観念は本質的に保守的なものである。(中略)既存の観念をうち
破るのは、他の観念による攻撃ではなくて、既存観念が争えないよ
うな状況の大きな変化なのである」とガルブレイスは書いている

ガルブレイスの考えによれば、経済学と他の分野――歴史、政治学、
社会学、社会的、政治的哲学――とを隔てている境界はあなだらけなのだ

ガルブレイスは、人類が今の世界を築いている、人間の理性――人
間の限界を知り、権力者や特権階級の声に耳を傾けながらも、自由
と安全、正義と希望、平等と思いやりの拡大を目指す世界の構築に
尽力する理性――は前進し続けることができる、という楽観的な信
念を持ち続けている。そうした目的を果たす強力な手段の構造をケ
インズから学んだガルブレイスは、状況が変わり新たな難問が出現
するたびに、それに修正を加えていった。ケインズと同じくガルブ
レイスにとっても、物質社会を理解することは目標ではなく、夢を
実現するための手段だった。単なる生産と所有を越えたところにあ
るもののほうが常に重要だった

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『ガルブレイス 闘う経済学者(上)(中)(下)』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822244911
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■目次■

<上巻>
初めてのケンブリッジへの旅
特別な場所での成長
一九三〇年代のハーヴァード
アメリカ農業とニューディール政策
ケインズとの出会い
大本山へ
前進―戦争へ
参戦
ルース、ケインズ、「アメリカの世紀」
戦争結果を調査する
新たな戦争の始まり

<中巻>
再びハーヴァードへ―新たな経済学と新たな主張
スティーヴンソンとリベラル派
ゆたかな社会―主流派との決別
ケネディ、スプートニク、「リベラル経済成長政策」
ニューフロンティア
インド
悲劇、勝利、悲劇

<下巻>
新しい産業国家
衝突
ガルブレイスとニクソン―二人のケインズ派リーダー
偽善の代償
大破綻
喜びの経済学
喜びの衰退
世紀末
結論 ガルブレイスの遺産

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