http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334033210
本日の一冊は、神田昌典さんもおすすめしていた好著『これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!』の著者が、中流社会から下流社会への変遷について述べた本です。
著者は、マーケティング情報誌「アクロス」の編集長や、大手シンクタンク勤務を経て、99年に消費や文化研究を主に手がけるシンクタンク「カルチャースタディーズ研究所」を設立。この分野では、多数の著書を持っています。
本書では、さまざまな統計やインタビューをもとに、新たな階層集団の出現と、その素顔に迫っており、マーケティング的な視点からも、数多くのヒントが得られます。
ただ、いかにインタビューやアンケートをもとに導き出したとはいえ、階層集団の分析があまりに紋切り型で、反発心を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
新書なので、「あくまで読み物程度」と考えるなら良いと思うのですが、せっかく有用なデータが入っているのに、じつにもったいないことです。
本自体は、社会を論じた読み物ですが、マーケティング的には、消費動向やライフスタイルなど、参考になる情報がたくさん詰まっています。
つくりはともかく、マーケターにとっては見逃せない一冊です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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単にものの所有という点から見ると下流が絶対的に貧しいわけではない。では「下流」には何が足りないのか。それは意欲である
「あなたの生活程度は世間一般と比べてどれくらいですか」という質問に対し
↓
「中の中」と答える人が1996年には57.4%いた。これが2004年は52.8%に減っている。逆に、「中の下」は23.0%から27.1%に増えている
皆が中流であることを目指すことに価値はなく、むしろ自分にとって最適な生活、最適な消費、暮らしを求めるようになっている
高所得の妻の比率は、高所得男性の方が高く、その相関は近年高まっている
団塊ジュニア男性は世代別・男女別で最も階層意識が低い
配偶関係別に階層意識を見ると、男性では未婚者の71.2%が「下」女性では未婚でも「下」は52%のみ(中略)女性は未婚であることが低階層意識に直結せず、活発に消費する
象徴的に言えば、村上龍の『13歳のハローワーク』を読んで、そうだ、自分が本当に好きなことを見つけて、それを仕事にしようと真に受けて自分探しを始めた若者は、結果としていつまでもフリーターを続けて30歳になっても低所得に甘んじ、低階層に固定化されていく危険性が高い
そもそも、自分らしさ志向が高いことは、自分らしさを持っていることを意味しない。自分らしさを志向しているのに、思うように自分らしさを実現できないと感じる者は、しばしば生活満足度を低下させ、所得の低さは階層意識を低下させるだろう
◆団塊ジュニア男性 これからお金や時間をかけたいこと
上:財テク・投資、家具・インテリア
中~上:健康、スポーツ・フィットネス
下:娯楽・イベント
◆団塊ジュニア女性 これからお金や時間をかけたいこと
上:旅行・レジャー、家具・インテリア、健康、美容
中:旅行・レジャー、家具・インテリア、健康
下:旅行・レジャー、健康
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『下流社会』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334033210
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■目次■
はじめに
第1章 「中流化」から「下流化」へ
第2章 階層化による消費者の分裂
第3章 団塊ジュニアの「下流化」は進む!
第4章 年収300万円では結婚できない!?
第5章 自分らしさを求めるのは「下流」である?
第6章 「下流」の男性はひきこもり、女性は歌って踊る
第7章 「下流」の性格、食生活、教育観
第8章 階層による居住地の固定化が起きている?
おわりに――下流社会化を防ぐための「機会悪平等」「下流社会」を考えるための文献ガイド
あとがき
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