2004年11月9日

『エモーショナル・デザイン』

http://tinyurl.com/6vnp5

本日の一冊は、名著『誰のためのデザイン?』で一世を風靡した、認知学者、ドナルド・A・ノーマン氏による、久々の新刊です。

参考:『誰のためのデザイン?』
http://tinyurl.com/3sjmz

厳密にはビジネス書ではありませんが、モノ作りに携わる方、広告、ウェブサイト作りに携わる方など、デザインと人間心理の関係性を知る必要のある方なら、読まない手はありません。

私たちはよく、日常生活で「押さずに、引いてください」「回さず、押してください」といった表示を目にしますが、これはこれ、指示通り行わないユーザーが悪いのではなく、デザインが悪いのです。

『誰のためのデザイン?』はこの人間の認知とデザインの関係に注目した、ヒューマンインタフェースの古典であり、今回の新刊は、それに引き続き、「デザイン」と「情動」の関係に着目した注目の論考です。

久々の大型新刊、心して赤ペンチェックさせていただきます。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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製品が成功するためには、実用面よりも情動面のデザインの方が重要なのではないか

デザイン上の3つの側面
・本能レベル
・行動レベル
・内省レベル
※重要なのは、これら三つの要素が情動と認知の両方といかに織り合わされているかに注目すること

人間の行動の多くは潜在意識からくるもので、意識的な気づきに上らない(中略)進化においても、脳が情報を処理する方法においても、意識は後からやってくる。多くの判断は、意識に上る前になされているのだ

認知と感情は互いに影響しあうことに注意してほしい。ある種の情動や感情の状態は認知によって引き起こされる

人は不安なとき、問題に直接関わる側面にだけ集中するため、思考プロセスが狭まりがち(中略)どうしてデザインが魅力的だと使いやすくなるのだろうか。簡単。直面する問題の解決策が見つけやすくなるからだ

行動レベルと内省レベルは、経験、訓練、教育に強く左右される。ここでは文化的な視点が大きな影響を与える。ある文化でアピールするものでも、別の文化ではそうではないことがある

情動の支配力は時間とともに消えていくので、記憶により生み出されたネガティブな感情は、道具自身を見るときのポジティブな感情に打ち克つことがない

内省的デザインは、長期にわたる関係や、製品を所有する、飾る、使うなどから得られる満足感に関わっている。自己のアイデンティティは内省レベルに存在する

ニーズはタスクによって決まる。水を運ぶにはバケツがいる。書類を運ぶにはキャリーケースがいる。ウォンツは文化、宣伝、自分自身の見方、自己イメージによって決まる

大切なのはインタラクションの歴史、そのモノにまつわる想い出、それが呼び起こす記憶なのである

もしその製品が人生やより良い生活にとって何かしら基本的なものだったら、うつろいやすい大衆の感覚など無視して、永続的な価値を狙うのが正しい対応である

本能的デザインでは、即時的な情動的インパクトがすべて

より良い行動的デザインにおける四要素
1.機能
2.分かりやすさ
3.使いやすさ
4.物理的な感触

良い行動的デザインをするための最初のステップは、人がどのように製品を使うかを理解することに尽きる

ある種の素材や仮想的オブジェクトのデザインの魅惑する力は、バイヤーにとってもユーザーにとっても、価格や性能を凌ぐ問題(ハスラフスキーとシェドロフ)

人が擬人化し、情動や信念を何にでも投影しがちであることをデザイナーは知っている。一方では、擬人的な反応は製品を使うユーザーに大きな喜びと愉しみを与える

情動的価値、これこそデザインの価値あるゴールである

誰にでも当てはまる黄金律を一つ言うなら、それは、家の中に、役に立つとは思えないもの、あるいは美しいと感じないものは置かないということだ
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読み終えた感想は、正直、「読まなきゃ損」です。この本は、おそらく本当に頭のいい人しか読みませんから、知識の「貧富の差」がますます広がってしまうのではないでしょうか。

せめてみなさんだけは、読んでください。

というわけで、本日の一冊は、

『エモーショナル・デザイン』
http://tinyurl.com/6vnp5

です。個人的に、教えずにこっそり読みたい本です。

目次
日本語版への序文
プロローグ 三つの紅茶ポット
第1部 ものの意味
第1章 魅力的なもののほうがうまくゆく処理の三レベル 本能レベル、行動レベル、内省レベル/集中と創造性/備えのある脳
第2章 情動とデザインの多面性三つのレベルでデザインする/想い出を呼び覚ますもの/自己感覚/製品の性格
第2部 デザインの実践
第3章 デザインの三レベル 本能、行動、内省 本能的デザイン/行動的デザイン//内省的デザイン/事例研究/デザインは曲者だ/グループによるデザインか/個人によるデザインか
第4章 娯楽とゲームおもしろさと喜びのためにデザインする/音楽、その他の音/映画の魅惑/ビデオゲーム
第5章 人、場所、もの無生物を非難する/信用とデザイン/信用できない世界で生きる/情動を支えるコミュニケーション/常時接続、常時散漫/デザインの役割
第6章 情動をもつ機械情動的なもの/情動をもつロボット/ロボットの感情と情動/情動を感じる機械/情動を呼び起こす機械
第7章 ロボットの未来
情動をもつロボットとロボットの未来
エピローグ 誰もが皆デザイナー
パーソナル化/カスタム化/我々は皆デザイナー
個人的回想と謝辞
訳者あとがき
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