2004年10月23日

『考える技術』

http://tinyurl.com/4t2gv

本日の一冊は、大前研一さんの、久々のビジネス自己啓発書です。

大前さんの本でよく売れるのは、思考法や仕事術に関するお話ですが、今回の『考える技術』は、まさにそんな内容です。

冒頭で著者自身が述べているように、「新しい時代は、思考力によって極めて大きな格差が生まれる時代、すなわち『思考力格差』の時代」であり、本書の目的は、「この新しい世界のなかでビジネスマンが生き抜いていくために必要なビジネス思考の方法と、その思考回路を身につけるためのノウハウ」を提供することにあります。

では、具体的にどんな内容が盛り込まれているのか。さっそくそのポイントを見てみましょう。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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問題解決のみならず、先見性とか直感と呼ばれるものも、じつは論理的思考があってこそ生まれる

仮説を証拠で裏付け、結論を導き出すうえでもっとも大切なのは、「その問題の原因は何か」を明確にすることである。ところがほとんどの経営者やビジネスマンは、問題として見えてくる現象にばかり目がいってしまい、原因の解決に至らないという思考パターンに陥っている

少なくとも十分な仮説が出てくるまでは、自分が現場に出なくてはならないのである。それを定量化するのにスタッフを使うことはできるが、仮説そのものを導き出すのを部下に頼ってしまっては価値あるものが出てこない。じつは、これはコンサルティングだけでなく、企業の経営にも言えることだ

「こうすれば問題は解決する」という提案までできなければ、真の問題解決とはいえない。しかもその解決策は、すべて現場、マーケットから生まれてきたものでなければならない

問題解決のための思考トレーニング法
・吊り広告を題材に、「この会社の社長に売上を伸ばしてほしいと頼まれたら、自分ならどうするか」を考える
・「自分が二階級上のポジションにいたらどうするか」を考える

人を納得させるための論理構がしっかりとなされていれば、提言には説得力が伴う。説得力とはすなわち相手の心理までも勘案した論理構成の力であり、その論理構成を生み出す思考回路の組み立て方こそが、提言のノウハウなのである

人間の感情はロジックだけでは収まらない。感情の問題をきちんとフォローして、翌日からは嬉々として実行に移してもらえるように仕向けていくことも、プレゼンテーションの実効性を上げるには不可欠なのである

プレゼンテーションの秘訣
・「言いたい順序」ではなく「相手が納得する順序」
・ピラミッド・ストラクチャー ※実践手順は本書を参照ください

論理的思考においては、まず事実に対して忠実であることが前提である(中略)たとえ自分の感情がどうであれ、出てきた事実に対しては謙虚になる。それが問題解決のための絶対の前提条件なのだ

世界のマーケットで競争力を持っている日本の優良企業は、同質性のぬるま湯にひたることなく、社内で挑戦的な目標を掲げてやっている。それは言い換えれば「自己否定する勇気」と言ってもいい

(権威者のフレームワークに頼ることのリスクを述べた上で)私自身、与件となるようなフレームワークはまったく持っていないし、前提も持っていない。現実にお金がどう流れているか、顧客の購買の意思決定がどう変わってきているかといった、「物理現象」しか私は信用していない

前提があって結論があるという思考パターンの人間なら、どんなときにもパニックにならないし、前提が変わればまた違う結論を出せる。マッキンゼーにかぎらず、これからの世の中は、他の仕事でもこういうタイプのほうがうまくいくはずだ

自分がふだん使っているセンスや感覚を、ガラッと違うものの前にさらしてみる。それは外国人でも、違う性別の人でも、違う年齢の人と話すことでもいい。そうしたことが、新しい発想やアイデアを生むうえでとても有効なのだ

「成功のパターン」の四要件
1.事業領域の定義が明確にされている
2.現状の分析から将来の方向を推察し、因果関係について簡潔な  論旨の仮説が立てられている
3.自分のとるべき方向についていくつか可能な選択肢があっても、  どれか一つに集中する
4.基本の仮定を忘れずに、状況がすべて変化した場合を除いて原  則から外れない
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著者は本書で、単にこうした考え方を示すのみならず、考え方を実践するためのトレーニングとして、郵政民営化、カネボウ問題、クルーグマンのインフレターゲット論などに関する検証をしています。

前著『質問する力』でも披露した、大前流の「物の味方」が、本書の最大の魅力ではないでしょうか。

参考:『質問する力』
http://tinyurl.com/4lpq6

というわけで、本日の一冊は、

『考える技術』
http://tinyurl.com/4t2gv

です。ビジネスパーソンの思考トレーニングに役立つ、いい意味でちょっとひねくれた一冊です。

目次
はじめに――「思考力格差」の時代
第1章 思考回路を入れ替えよう
第2章 論理が人を動かす
第3章 本質を見抜くプロセス
第4章 非線形思考のすすめ
第5章 アイデア量産の方程式
第6章 五年先のビジネスを読み解く
第7章 開拓者の思考
巻末資料
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