【雑学としての映画業界】
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本日ご紹介する一冊は、ノン映画人に向けて書かれた、教養としての映画の世界。
著者は、映画パーソナリティ/エンタメ評論家のコトブキツカサさんです。
年間鑑賞数500本といういわゆる「映画中毒」の著者が、映画の歴史と映画ビジネスの実態、名作ガイド、映画名言、映画人とのエピソードなどを無理やり詰め込んだ、おもちゃ箱のような、遊び心あふれる一冊です。
映画というメディアがどのようにして進化してきたか、いかにしてテレビに覇権を握られたか、現在の課題は何かが、限られたページ数の中で、丁寧に書かれています。
映画に疎い方なら、
・製作委員会方式って何?
・世界各国の映画制作数ランキング
・世界で最も映画料金が高い国は?
・エンドロールが以前よりも長くなった理由
・世界三大映画祭とは?
といったトピックが刺さるでしょうし、映画好きなら、著者イチオシの映画ガイド、名言集、映画人との個人的エピソードあたりが刺さるに違いありません。
要するに、映画好きもそうでない人も楽しめるように作られています。
ビジネス的には、映画業界のビジネスモデルや課題、1960年代後半から1970年代のヒット作品のトレンドあたりが参考になると思います。(同じような状況が出現しつつある)
現在の日本のビジネスの問題はさまざまですが、本書を読むと、業界問わず、問題の根っこは同じだと思わざるを得ません。(投資スケール、人件費など)
グローバルの映画ビジネスの状況や、これからのチャンスの芽など、あくまで事例は映画ですが、参考にすべきところが多いと感じました。
数が多くて大変ですが、著者の映画愛に触れているうち、紹介されている映画も、なるべく目を通そうと思うようになりました。
映画に疎い人ほど、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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1895年12月、フランス・パリのグラン・カフェで、リュミエール兄弟が初めて観客から入場料金を取って映画を上映しました。これが世界初の“映画興行”といわれています
アメリカ・テクニカラー社が開発した、世界で初めて青・緑・赤の三色法で表現される「テクニカラー」が登場します。(中略)この最新技術を活用し、当時では破格の制作費400万ドルをかけて制作されたのが、長編テクニカラー映画「風と共に去りぬ」(1939)です
1950年代になると、黒澤明監督の「羅生門」(1950)が各国の映画賞で評価され話題となりました。ある事象に対して複数の視点を描く表現方法は、現在、世界の映画界共通語として羅生門エフェクトや羅生門スタイルと呼ばれています
1960年代後半から1970年代にかけては、ベトナム戦争の長期化やヒッピー文化などが影響し、反体制的なメッセージが含まれるアメリカン・ニューシネマが流行。(中略)「猿の惑星」(1968)に代表されるようなSF映画がヒットした頃でもあり、のちの「スター・ウォーズ」シリーズの誕生を後押しします。(中略)同時に世界的にホラー映画が席巻したことも特徴です
西アフリカのナイジェリアは、国内の映画館が10館ほどしかなく、ほとんどの作品が劇場公開されないDVDスルー(映画館で上映されずにDVD等で販売される映像作品)として視聴されています。年間2000本ほどの作品が作られるほど映画産業が盛んで、ナイジェリアのNを取ってノリウッドとも呼ばれています
昨今の日本映画の課題
1.オリジナル脚本の減少
2.過剰なまでのわかりやすさ
訴求力が低いと判断されると邦題がつく
ハリウッドのビッグバジェット・ムービー(大作映画)は約1億ドル以上(約140億円以上。ここでは1ドル140円で換算します)の作品を指しますが、邦画は1億円未満がほとんどです。10億円超の映画は年間数本しか存在しません
世界三大映画祭
・カンヌ国際映画祭
・ベルリン国際映画祭
・ヴェネツィア国際映画祭
「最良の映画の最も印象的なシーンは、映像と音楽が優位を占めて作られたシーンである」こう語ったのは鬼才、スタンリー・キューブリック監督です
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字数の関係で紹介できませんでしたが、映画の名台詞をまとめた部分や、著者と映画人との交流エピソードがまた読み応えがある。
ネタバレになるので書きませんが、著者が渡辺謙さんにインタビューした時の粋なエピソードには、本当に痺れました。
ビジネスや表現のヒント、そして映画がこれまでよりも楽しくなるエッセンスがぎゅっと詰まった一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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『教養として知っておきたい映画の世界』コトブキツカサ・著 日本実業出版社
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◆目次◆
はじめに 映画はエンターテインメントの中心なのか?
第1章 商業映画の誕生と発展
第2章 映画業界の現状と課題
第3章 映画の歴史を変えた10作品
第4章 映画の世界の表と裏
第5章 映画のウィスプ 知っていると見方が変わる意外な真実
付 録 コトブキツカサの追憶 映画人との個人的エピソード
おわりに 劇場の暗闇にいるからこそ感じる眩しさがある
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