【人生戦略策定のヒントに】
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自分で自分のキャリアをデザインする時代、キャリアデザインに関する本もちらほら出ていますが、人によってデザインが違う以上、なかなかしっくり来るキャリアデザイン本がないのも事実です。
本日ご紹介する一冊は、あえて個人のキャリアデザインに踏み込まず、人生戦略策定のヒントとなる周辺知識に重きを置いた一冊。
著者が、東大を出て日本興業銀行に入行した、いわゆる「就職ガチャ」に失敗した人でありながら、その後、外資系金融機関で執行役員、ベンチャー企業社長、非営利法人の代表、大学教授などを経験した人物なので、修正も含めたキャリアデザイン論が展開されているのが面白い。
また、金融機関の出身ということで、年金や退職金、税金、老後の資産形成まで含めて論じられているのが親切だと思います。
そのため、いわゆるキャリアデザイン論に至るまでの周辺知識で134ページを費やすことになるのですが、この部分を読むだけでも、人生戦略に必要なお金と制度の視点が手に入ると思います。
ネットで流布する安易な風潮に乗って転職を重ね、履歴書を汚す前に、ぜひ読んでおきたい一冊です。
ちょっと情報が詰まり過ぎているので、読むのに骨が折れますが、人生におけるキャリアデザインの重要性を考えれば、この程度の苦痛には耐えた方がいいのかもしれません。
これから就職を考える大学生も、50代でキャリア転換を図ろうとするベテランも、読んでみて損はない内容だと思います。
全10種類ある所得のうち、どれを得て生きて行くか、可処分所得、可処分所得から基礎支出を引いた金額、そこからさらに通勤時間を費用換算した金額を見て住むところを決めるなど(ちなみにこの視点で見ると東京都は47都道府県で最下位)、興味深い視点が示されています。
新しい生き方、働き方、住まい方を考える上で、ぜひ読んでおくといいでしょう。
さっそく、本文の中から気になる部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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人が、ある年齢でまだ生きている確率をここでは存命率と呼ぶことにする。2020年に25歳である日本人の、90歳における存命率は、男が28.3%、女が52.9%だ
後半にもキャリアが必要なら、金融商品ではなく、できるだけ「細く・長く・楽しく・生きがいを持って」稼ぎ続けられるように早い時期から「自分自身に投資」することが最も重要
ジョブ型に移行する者には、自らジョブを磨こうとして意図的に移行する「見切り型」と、自分では従来的なキャリアパスにいるつもりだが、人事の側ではジョブ型と位置付けている「脱落型」がありうる
今のジョブをさらに磨きたいのなら社内のローテーションに従わずに、同じジョブにこだわってよりよい給与や機会を求めて転職したほうがよい
同じ職場で勤め上げても、転勤を繰り返しても、もらえる給料の額は大きくは異ならないが、退職給付の額は千万単位で異なる
所得税法は個人の所得を給与・退職、事業・不動産・山林・譲渡、利子・配当、一時・雑という10種類に分けてそれぞれ異なる扱いをしている
企業年金の最大のメリットは、福利厚生費と同様、給料をもらう前の段階で会社が掛金を拠出してくれるので、所得税がかからないということにある。その代わり、もらうときには全額に所得税がかかるが、その頃には年収が激減しているし、年金については結構大きな金額の所得控除が認められているので、結果的にほとんど税金がかからない
20年近く続いた低金利・金融緩和の政策が終わり、「金利のある時代」が戻ってきた
若いみなさんが会社で働く時代には、「何を増やすか」という会社の目的が、「お金」から「時間」に変わっていかねばならない
レイバーアービトラージを得るためのグローバル化は、すでに限界
最近は、自分で育たないと育ちにくい環境になっていることから、自分から腐るのはあまり賢くない
転職はジョブを磨くためにする
「前の会社では」を言わない
日常的な生活に必要な基礎支出をみると、東京都の中央世帯は全国1位なので、手取収入に当たる可処分所得から基礎支出を引いて手元に残る残額、つまり生活費以外に使ったり貯金に回したりすることができる余裕金額は全都道府県中42位と一気に悪化する。そして、そこからさらに、通勤時間を費用換算した金額を引くと、47位、つまり全都道府県で最下位となる
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難点は、334ページの割に読んでいて疲れることですが、ここまで学べば、納得の行くキャリアを構築するヒントは十分です。
ベストセラー『転職の思考法』と併せて読めば、きっと理解が深まると思います。
『転職の思考法』
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ぜひ、読んでみてください。
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『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』大垣尚司・著 日本経済新聞出版
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◆目次◆
はじめに
1.キャリアをとりまく社会構造の変化
2.キャリアを考えるためのヒント
3.プチ幸福論
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