【恐ろしい一冊。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152103175
本日ご紹介する一冊は、あの名著『銃・病原菌・鉄』の著者、ジャレド・ダイアモンド氏が絶賛する、注目の一冊。
※参考:『銃・病原菌・鉄』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794218788
「所有」の考え方やルール決めが、どのように経済的インセンティブやビジネスチャンスにつながるか、紛争の火種になるか、またどんな社会問題や倫理問題を生むのか、第一級の論者が論じた内容です。
著者は、コロンビア大学ロースクールのローレンス・A・ウィーン不動産法担当教授で、所有権に関する世界的権威の一人、マイケル・ヘラー氏と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ロースクールとカリフォルニア大学サンタバーバラ校ブレン環境科学経営大学院で環境法学の特別教授を務める、ジェームズ・ザルツマン氏。
本書では、われわれが所有権を主張する時に用いる6種類の根拠を批判的に吟味し、それらが引き起こす問題点と、現代的な解決策を紹介しています。
■所有権の6種類の根拠
「早い者勝ち」
「占有」
「労働の報い」
「付属」
「自分の身体」
「家族」
かつて早い者勝ちだったディズニーランドのサービスに、なぜファストパスが加わり(現在は終了)、プライベートVIPツアーにつながったのか、デューク大学はどのようにして転売ヤーを避け、熱心なファンだけにバスケットボールの試合のチケットを届け、ゆえにチケットを価値あるものにできたのか。
さまざまなインセンティブの例や、商品・サービスの付加価値を上げるヒントが書かれており、所有や法に関する論考でありながら、ビジネスや起業の実践的アイデアにもなっているところが、本書を読むべき理由だと思います。
また、資産運用をする人にとっては、自分が一体何を保有していてそれにはどんなリスクが伴うのか、考える良いヒントになると思います。
さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
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私たちが暮らしている世界では、遅い者勝ちがまかり通るようになってきた
社会でうまくやっていける大人になることの一部は、目の前の状況でどんな所有権ルールが適用されているのかを察知する能力にある
何かを物理的に占有した瞬間から、その品物はあなたにとって占有前より大切になる
占有はたしかに暴力的で無駄の多いやり方かもしれないが、ともかくも希少資源の管理に役立ってはいる
ミッキーマウス延命法は、いかなる公共の利益も生まないし、新しいキャラクターも新しい曲も生まない。単に企業や著作権団体が潤うだけである
先行者利得、不名誉、ソーシャルメディア、パイを大きくするという四つの手段があれば、すべての産業は繁栄できるはずだ
自然資源にありがちな問題は、資源が豊富にあるときに最初の所有権ルールを設計してしまうこと
人には、これは売ってはいけないと本能的に理解しているものがある。それらはお金では買えないものだ。高すぎて値段がつけられないのではなく、そもそも値札をつけるべきではない
患者の身体から採取した資源について自己所有権を認めることは、人間の尊厳と自律性の尊重を示すものとなる
モノを所有する生活から借りては返す生活への転換は、意外にもコストを伴う。まず、共有経済はけっして禅のようなすべてを削ぎ落とした生活に導くわけではない。むしろ逆に、人目につく消費を促す。(中略)一つひとつのモノやサービスが安くなれば、より多様なモノやサービスを消費したくなるものだ。すると、一つひとつのモノやサービスの消費は減っても、全体としては増えることになる。(中略)自分の持っているものでは満足できなくなり、つねにワンランク上のモノやサービスが欲しくなる
いったん人気の観光スポットになると、隣人関係は壊れやすい。古くからの住民は家を投資家に売って出ていくからだ
そう遠くない将来に、所有権が完全にそろった束は一握りの企業に集中し、ふつうの人はライセンスやアクセスを許諾する小枝一本を与えられるようになるだろう。そうなると、モノやサービスと人間とのつながりはごく稀薄にならざるを得まい
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後半に、シェアリングエコノミーに関して書かれた部分があるのですが、慎ましい消費を促し、コミュニケーションを促すはずのシェアリングが、かえって浪費を促し、地域コミュニティを破壊しているという指摘は、ぜひ読んでおくべきだと思います。
現在の社会問題の多くが、「所有」の概念で説明できてしまう。
恐ろしい本です。
これは「所有」するしかないですね。
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『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』マイケル・ヘラー、ジェームズ・ザルツマン・著 村井章子・訳 早川書房
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◆目次◆
序 章 誰が・何を・なぜ
第1章 遅い者勝ち
第2章 占有は一分の勝ち
第3章 他人の蒔いた種を収穫する
第4章 私の家は私の城……ではない
第5章 私の身体は私のもの……ではない
第6章 家族のものだから私のもの……ではない
第7章 所有権と世界の未来
終 章 幼児の所有権ルール
謝 辞
解説 所有のデザインで未来を変える/水野祐
原 注
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