【伝わるための認知科学】
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本日ご紹介する一冊は、『言語の本質』が話題となった、慶應義塾大学環境情報学部教授、今井むつみ先生によるコミュニケーション本。
『言語の本質』
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認知科学、言語心理学、発達心理学を専門とする著者で、毎回、言葉と思考の奥深い世界を垣間見させてくれます。
今回の著書『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』では、ビジネス現場で頻発するコミュニケーション問題の本質と解決策を、認知心理学の視点から詳しく解説しています。
<間違っているのは「言い方」ではなく「心の読み方」>とあるように、言葉の前に考えなくてはならない発信者の心理や、それを受ける人の心理が書かれており、じつに興味深い内容です。
「スキーマ」の違いにより、伝え手と受け手の間に理解の差が生まれる問題、人の記憶力の問題、過剰一般化の問題、記憶書き換えの問題、各種の認知バイアスの問題…
ビジネス現場での「伝わらない」問題の本質がじつに明確に説明されており、リーダーはぜひ読むべきと思いました。
どうすれば、伝え手と受け手の認識・理解のギャップを埋められるか、どうすれば正確なコミュニケーションができるか、コミュニケーションのヒントが満載です。
コミュニケーションミスから起こった痛ましい飛行機事故の例や、反対に危機から乗客を救った機長の意思決定の例が載っており、認識と言葉の問題は奥深いと思いました。
インターネットやメディア、部下からの報告など、何かを聞いた時に、どこを疑うべきなのか、勘所が書かれているので、日々の意思決定の参考になると思います。
本筋とは逸れますが、記憶や勉強のコツなども書いているので、受験生にも有用な内容だと思います。
さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
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間違っているのは「言い方」ではなく「心の読み方」
そもそもコミュニケーションの前提には「スキーマ」があります。私たちはそれぞれが頭の中に、「当たり前」を持っており、その「当たり前」は皆、同じわけではありません
「伝えたいことがうまく伝わらない」原因は、この「当たり前」の違いを越えることができなかったり、認知の力がうまく働かなかったりすることにある
私たち人間は、相手の話した内容をそのまま脳にインプットするわけではない
ある人の「わかる」「わかった」は、あくまで「その人のスキーマ」を通してのものである
言った側と言われた側で、その情報の重要度が違う
銃口を突きつけられたとき、人は、銃を凝視することがわかっています。それも、犯人の顔はいっさい記憶に残らないくらい、銃だけをひたすら見続けるそうです
レイプにあったその女性は、ナイフを突きつけられていました。多くの人は、「自分を襲った犯人の顔なら、はっきり覚えているはずだ」と考えてしまいますが、その女性の視線はおそらく、突きつけられたナイフに向けられていたはずです。そう、そもそも被害女性は犯人の顔をほとんど見ていなかった可能性があるのです
私たちが何かを記憶しようとする際には、意味を考えずに丸暗記しようとしたりするよりも、「理解」というプロセスを経て記憶にたどり着くことを目指したほうが、スムーズであり記憶しやすい
過剰一般化が「伝わらない」の原因に
多様性を認めることはとても大切なことですが、それが極端になりすぎる場合があります。相対主義の罠です。すべての問題において「それぞれ違っていて、それぞれいい」という立場が行きすぎると、重要な判断ができなくなってしまう可能性が生じます
意図読みが得意な人は、テストでも出題者の意図をうまく読み取ることができるため、正答できることが多い
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後半の認知バイアスの部分は、類書でも読めますが、第1章<「話せばわかる」はもしかしたら「幻想」かもしれない>や、第2章<「話してもわからない」「言っても伝わらない」とき、いったい何が起きているのか?>は、読み応えがありました。
ぜひ、読んでみてください。
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『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』今井むつみ・著 日経BP
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◆目次◆
はじめに
第1章 「話せばわかる」はもしかしたら「幻想」かもしれない
第2章 「話してもわからない」「言っても伝わらない」とき、いったい何が起きているのか?
第3章 「言えば→伝わる」「言われれば→理解できる」を実現するには?
第4章 「伝わらない」「わかり合えない」を越えるコミュニケーションのとり方
終 章 コミュニケーションを通してビジネスの熟達者になるために
おわりに
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