2023年10月16日

『富の法則』ダニエル・クロスビー・著 モーガン・ハウセル・序文 児島修・訳 vol.6337

【行動科学に基づく投資のルール】
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本日ご紹介する一冊は、株式投資で勝つための、行動科学のメソッドを紹介した一冊。

著者は、行動ファイナンスの専門家であり、「注目すべき12人の思想家」(Monster.com)、「読むべき金融ブロガー」(AARPに)に選出された、ダニエル・クロスビーです。

序文を世界的ベストセラー『サイコロジー・オブ・マネー』のモーガン・ハウセルが書いています。

『サイコロジー・オブ・マネー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478114137

結局、行動科学の本なのかと思っていたら、予想以上に株式投資の実践的知識に触れていて、投資の良いヒントをいただきました。

ファイナンシャル・アドバイザーを付けることでリターンが高まることや、従来型の投資ポートフォリオよりもゴールベースの投資戦略を採用した方が長期投資に向く可能性、理論上、投資口座をチェックする頻度を12年に一度にすると、損失をまったく目にしなくなるなど、興味深い情報がいくつも紹介されています。

自身も資産運用をしている実践家のため、話が実践的で、あらゆるポイントについて、注意点やチェックリストがついています。

例えば、「資産バブル」かどうかを検証する場合については、こんな感じです。

1.バリュエーションが非常に高い
2.レバレッジが過剰である
3.貸出基準が緩い
4.ほぼ全世界で上げ相場である
5.ボラティリティが低い
6.リスク資産への参加率が高い

自分が今、しようとしている投資が正しいかどうか、見極めるためのあらゆる視点・チェックポイントが示されており、これは使える一冊だと思います。

また、著者の関心がよほど高いのでしょう、これまでに議論されてきたさまざまな投資法・理論の紹介と検証が行われており、これ一冊あれば、メジャーな投資本、投資理論のおさらいがほぼできてしまいます。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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投資の世界では、今日何が起こるかはわからないし、来週何が起こるかもほとんどわからない。1年後のリターンを予測するのも難しい。だが、25年後についてはもっと正確に予測できる

1900年から2013年にかけて、米国の株式市場では123回の調整局面があった。これは年に約一度のペースになる。それよりも大きな下落である弱気相場は、平均すると3.5年に一度発生している

SEIのメリッサ・レイヤーは、「ゴールベースの投資家はパニックに陥ったり、誤った情報に基づいてポートフォリオを変更したりする可能性が低い」と結論付けている

ダートマス大学のケント・L・ウォマック教授によれば、1990年初頭のアナリストは、「売り」銘柄を1件推奨するごとに、約6件「買い」銘柄を推奨していた。だが21世紀に入ると、売り1件に対して買いが50件近くに膨れ上がった

グレッグ・デイヴィスによれば、毎日証券口座をチェックしていると、41%強の確率で損失を目にすることになる(中略)確率上、証券口座を確認するのを5年に一度にすると損失を目にする確率は12%程度になり、12年に一度にするとまったく損失を目にしないことになる

個人投資家にとって賢明なアプローチであると考えられているインデックス投資は、その根底に行動上のがんを抱えている。S&P500のような時価総額加重平均型インデックスを買うと、2000年にはそのうち50%近くをハイテク株で、2008年には40%近くを金融株で保有することになる

取引が容易かつ安価になり、金融ニュースが豊富になるにつれて、保有期間は大幅に短くなった。大した問題ではないと思うかもしれないが、保有期間とリターンに直接的な関係があり、忍耐強く保有し続ける人ほど大きなリターンが得られることは歴史が証明している

過剰なものは永久には続かない

企業の質をよく考慮せずに株価だけを見ていると、それが割高なのか割安なのかは決してわからない

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原注、参考文献も入れると350ページを超えるボリュームですが、面白くてあっという間に読んでしまいました。

株式投資に関するこれまでの議論・研究が一気に読める、興味深い一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『富の法則』ダニエル・クロスビー・著 モーガン・ハウセル・序文
児島修・訳 徳間書店

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◆目次◆

はじめに虫(ワーム)と富(ウェルス)
第1部 行動科学に基づくセルフマネジメントのルール
ルール1 最も重要なことは自分でコントロールする
ルール2 専門家の助けを借りる
ルール3 トラブルはチャンス
ルール4 興奮していたら、それは悪いアイデア
ルール5 あなたは特別ではない
ルール6 ベンチマークは自分の人生
ルール7 予報は気象予報士がするもの
ルール8 極端なことは続かない
ルール9 分散投資は、不確実性に対する唯一の論理的な対応
ルール10 リスクは曲がりくねった道ではない
第2部 行動経済学的な投資手法
資産運用の現状
ルールベースの行動科学的投資手法における4つのC
行動科学的な資産管理プログラムを設計するための3ステップ
おわりに おかしくなった世界で行動科学的な投資手法を実践する
訳者あとがき
原注
参考文献

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