【「歴史の分岐点」で何が起きたのか?】
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今日で、関東大震災から100年が経ちました。
もう10年以上前になると思いますが、仕事で両国を訪れた時、この関東大震災で亡くなった方の遺骨を納めている「東京都慰霊堂」の存在を知り、関東大震災の当時の衝撃に思いを馳せました。
東京都慰霊堂
https://tokyoireikyoukai.or.jp/ireidou/history.html
関東大震災は、190万人が被災し、10万5000人余りが死亡・行方不明、全壊した建物が10万9000余戸、全焼が21万2000余戸という、未曾有の被害をもたらしましたが、死亡原因のほとんどは、強風をともなった火災に起因するものでした。
当時は長屋暮らしだったので、いったん火事になったら、延焼が止まらず、東京都はこの時の反省から、計画的に公園を置くようになったそうです。(延焼が食い止められる)
都市計画に限らず、この関東大震災は日本のその後に大きく影響を与えた大事件で、ビジネスパーソンには、教養として学んでおくべきところが多々あると判断して、本日の一冊をご紹介することにしました。
本日ご紹介する『関東大震災 その100年の呪縛』は、民俗学者の畑中章宏さんが、関東大震災を「歴史の分岐点」として検証した一冊。
大地の亀裂が諦念を生み、それがナショナリズムに繋がり、軍国主義への道を歩むことになったという著者の見方は新鮮で、今の日本が持つ危うさを見事に指摘しています。
今後の日本の発展の方向性や、地方のあり方につながるヒントが示されており、興味深く読むことができました。
大正から昭和にかけて、日本の基礎を作った偉人たちの仕事ぶりがわかり、とても良い読書体験になりました。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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防災・減災のための工学的な営為が、<災害>をかえって助長することもある。都市の近代化、人口密集や建物の堅牢化が、<災害>を増幅し、人的被害を拡大させることも少なくない
災害が起こるたび、再建・復興のための建設的な議論が進まず、イデオロギー対立や、情緒的な<物語>に耽溺してしまう
「大震災に遭遇した」「大震災を経験した」といっても、被害の度合いにより、その反応は大きく異なる。そしてその度合いは、<当事者>と<非当事者>の断絶を生み出した。破壊的な状況を呈した「下町」にたいして、「震災記」を著した知識人、文化人の多くは「山の手」に住んでいたり、その時そこにいたりしたため、それほど震えなかったようなのである
震災後の東京は、表面上は順調に復興して、それまで以上に巨大化していく。その巨大化の過程で生まれた「大東京(だいとうきょう)」という言葉は、行政の区域としては1932年(昭和7)10月の5郡82町村の東京市への編入で、旧来の15区に20区が加わった35区の市域を指すものだ
東京では消失区域1100万坪の8割に及ぶ920万坪を65地区に分けて、復興局と市が分担して土地区画整理事業を実施することになる。街路は90パーセント近くが舗装され、歩道や街路樹、照明が完備した近代的な道路が出現した
震災は<近代化>がままならない東京を「更地」にする、絶好の機会となった
多くの人がデモクラシーに目覚めたというイメージが強い大正時代は、日本の伝統文化再発見の時代でもあった
現在では夏の風物詩として伝統行事のようにみなされる「盆踊り」も関東大震災以降に「発見」されたものである
「復興節」は演歌師や何社ものレコードによって被災地各所に流れ、全国に広まった
関東大震災が呼び起こした<郷土愛>や<愛郷心>といった感情は、新しい風俗、民俗を生みだしつつ、その枠組みから逃れるどころか、国家に収斂されていく性格を秘めていた
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今生きている人のほとんどにとっては、阪神・淡路大震災や東日本大震災が一番インパクトのあった震災だと思いますが、関東大震災は、国に与えるインパクトとしては、それ以上だったということが、本書から伺えます。
ショック・ドクトリンにやられないために、国民が一丸となった時起こる商機と危機に備えるために、ぜひ、読んでおきたい一冊です。
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『関東大震災 その100年の呪縛』畑中章宏・著 幻冬舎
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◆目次◆
はじめに
第一章 関東大震災という<大事件>
第二部 100年の呪縛
第三章 災害を<社会現象>として捉える
あとがき
参考・引用文献
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