【「100分de名著」プロデューサーの視点】
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本日ご紹介する一冊は、NHK Eテレの人気番組「100分de名著」のプロデューサーが、名著から得た気づきや学び、番組制作の舞台裏を記した一冊。
大学時代、西田幾多郎の『善の研究』に挑み、第一編で挫折したという著者が、知の巨人たちの力を借りて、どんどん名著の本質を掴んでいく。
その過程を追体験することで、名著がグッと身近なものに感じられる、知的刺激あふれる一冊です。
もちろん、名著そのもののエッセンスも紹介されています。
『フランケンシュタイン』が鳴らす現代への警鐘、『ソラリス』が示す人間の真の勇気、『力なき者たちの力』が示す忖度・同調圧力への抵抗の方法…。
きちんと名著のエッセンスが、現代に活かせるように書かれていて、じつに勉強になりました。
未来を予見する力、自分自身の人生と接続する力、前提を覆す力、自分自身の足元を照らす力……。
名著の持つ不思議な力がなぜ生じるのか、本書を読んでその理由がよくわかりました。
読書家なら、誰しも一度は名著に挑み、挫折したことがあるはず。
本書は、そんな読者に、勇気と希望、そしてもう一度名著に挑むきっかけをくれる一冊です。(そもそも番組自体がそうかもしれませんが)
著者と番組出演者とのやり取りや、番組制作の裏側も書かれていて、番組のファンが読んだら、さらに楽しめる内容だと思います。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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「おまえは、運命に唯々諾々と従うだけなのか、それとも命がけで何かを変えようと踏み出すのか、どっちだ?」とハムレットに指さされているような感覚
科学によって創造されたものが、予期せぬ結果を導く。進歩は破局と不可分である。(「批評理論入門ー『フランケンシュタイン』解剖講義」廣野由美子著、中公新書)
「名著は現代を読む教科書である」
人間の真の勇気とは、自分とは全く異なる他者に身をさらし、自分自身が変わっていくことも恐れず、違和感や異質性に向き合い続けることではないか?
暴力的な囲い込みによって、住まいと生産手段を失った農民たちは、都市に仕事を求めて流れ込む。そうした人々が、資本家にとっての格好の労働力として賃労働者になったとされる。いわば、「囲い込み」が資本主義の離陸を準備したのである
たとえば、飲料メーカーが、ミネラル豊富な水が湧く地域一帯を買い占め、汲み上げた水をペットボトルに詰めて「商品」として売ってしまうと、人々が無料で共同利用していた水汲み場は立ち入り禁止となり、水が欲しければスーパーやコンビニで買わなければならなくなる。これが身近なところで起こる「コモンの解体」である
名著には、一見専門書と思えるようなものでも、自分自身の人生と接続するような「フック」が必ずある
「国民の前で決して嘘はつかない」。ハヴェルが大統領就任演説で示したのはその強い姿勢だった。前政権のごとく嘘でごまかすことなく、統計資料を偽装することなく、「我が国は繁栄していません」と赤裸々に現実を語ったハヴェルの言葉に、国民は「ようやく真実を語るリーダーが現れた」と歓呼の声を上げた
私たちの知は、本質を固定した「形」とすることで成り立っている。しかし、スピノザは、本質を「力」と見ることでこれまでとは違った見方を提示するのだ
名著というものは恐ろしい。読んでいくと、外側のことだけではなく、自分自身の足元すら照らし出してしまうのだから
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名著を通じて、現代社会の問題の本質、解決の糸口が見えてくる内容です。
まさか「100分de名著」のプロデューサーがこんなに骨太な方だったとは。
番組ファンはもちろん、番組を見たことがないという方にも、ぜひおすすめしたい一冊です。
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『名著の予知能力』秋満吉彦・著 幻冬舎
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◆目次◆
第一章 それはテロリズムから始まった
第二章 名著を人生と接続する
第三章 全体主義に抗して
第四章 発想の大転換
第五章 名著のイメージを刷新する
第六章 時代を見つめるレンズの解像度を上げる
第七章 メディアの足元を見つめ直す
終章 名著の未来
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