【読み応えあります。】
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本日ご紹介する一冊は、テレビ、ラジオ、雑誌などで、政治哲学、生命倫理、仏教論、サブカルチャー分析を主軸とした評論活動を行う、博覧強記の評論家、宮崎哲弥さんによる、知的語彙力アップのすすめ。
古代ギリシャにおける「ヘレネス/バルバロイ」ではないですが、人が語彙によって人を区別しているのは、今でも変わらないと個人的には思っています。
それが専門用語であれ、組織内の言葉であれ、教養語彙であれ、人が語彙によって結びつきを強めるとすれば、語彙を知っているか知らないかは、個人が所属できるコミュニティを決定づけることになる。
語彙は、偉そうにするために重要なのではなく、自らが動ける経済圏を決定づけるからこそ、重要なのです。
また、本書のなかで著者が言うように、語彙があると、世界を違って捉えられるようになるのも、語彙を学ぶメリットでしょう。
著者の言葉を引用すると、<どれだけ多くの言葉を使いこなせるかが、その人の認識や感覚の細やかさ、思考の分明さや複雑さーー総じて生きてある世界の豊かさを表す>のです。
名著・名文から引用した表現と解説も読み応えがあり、日本語の奥深さを感じる一冊です。
本好き、日本語好きはもちろんですが、ビジネスパーソンにとっても、教養としておすすめの一冊です。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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●しょけん【諸賢】
多数の人に対して敬意を込めて呼ぶ語。代名詞的にも用いる。皆さん。「読者諸賢のご<健勝>を祈ります」
●じょうぼく【上木】
印刷するために版木に図書を刻みつけること。書物を出版すること。上梓すること。「自叙伝を上木する」
<ちりばめる>という動詞はよく使われる。「散りばめる」とも書かれるが正規ではなく、この表記から「一面に散らしてはめる」という誤用というか、正確ではない語釈が広まってしまった。正しい表記は<鏤める>である
◎ちりばめる【鏤める】
彫ってはめ込む。ところどころを彫って、金銀や宝石、真珠、螺鈿などをはめ入れること
●地(ち)を易(か)うれば皆然(みなしか)り
人はそれぞれ地位、境遇を異にするから、行いや考えも異なるのであるが、その立場を取り替えてみれば、皆各々の立場にふさわしい言行となる
●謦咳(けいがい)に接(せっ)する
(目上の人物に)直接お目にかかる。(敬している人に)お話をうかがう。会うことの尊敬語
◎繁簡(はんかん)宜(よろ)しきを得る
詳密な部分と簡潔な部分のバランスが程よいこと
●琴瑟相和(きんしつあいわ)す
琴と瑟とで合奏して、その音色がよく調和している。転じて、夫婦間の相和して睦まじいたとえ
●とが【都雅】
洗練された上品さを持っていること。都(会)風の趣味のよさ。雅やか。「都雅な暮らし」「都雅を極める」
●さんび【酸鼻】
ひどくむごたらしいさま。大変痛ましい様子。惨状。「酸鼻を極める」
●糟粕を嘗める
何の独創性や<創見>もなく、先人の残したものをただなぞること。「糟粕を嘗めるような、新味のない企画はいらんよ」
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本書で紹介された500語を全部駆使すれば、かえって住む世界が狭くなるかもしれませんが、ここぞという時に使える語彙であることは間違いありません。
きちんと日常会話で使えるように、文例も示されているので、とても親切な本だと思います。
ぜひ読んでみてください。
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『教養としての上級語彙』宮崎哲弥・著 新潮社
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◆目次◆
まえがき
凡例
第一章 イントロダクションーー上木と忖度
第二章 世間の交らいーー友愛・感化・恥・地位・男と女
第三章 聞こえる、見えるーー「私」が感受する上級表現
第四章 行う、行く、戦うーー「私」が行為する上級表現
第五章 笑う、怒る、泣くーー「私」が叙情する上級語彙
第六章 読む、聞く、叙説するーー知的活動に関わる上級語彙
あとがき
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