【真に賢い経営者になるために】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296000233
ビジネスにおいて、まずい決断がなされた場合、リーダーは「無能」の烙印を押されるわけですが、実際にはそうではありません。
本日の一冊『賢い人がなぜ決断を誤るのか?』の著者、オリヴィエ・シボニーが言うように、<悪い意思決定は無能なリーダーによって下されるのではない。大いに成功し、慎重に選ばれ、非常に尊敬されているリーダーによって下される>のです。
ではなぜ、賢く、人々からも慕われているリーダーが決断を誤るのか?
本書には、そのメカニズムと意思決定者が陥る「バイアス」「トラップ」が紹介されています。
たとえば、最近はマーケティングにおいてストーリーテリングの必要性が語られていますが、われわれが大好きなこのストーリーテリングが、判断を歪めてしまうことを、「ストーリーテリング・トラップ」と言います。
<誰かからよくできた話を聞かされると、人はそれを裏づける要素を探し始める傾向があり、それらを探し当てる>。持論を支持する情報に注目し、反証となる情報を無視する「確証バイアス」が働いてしまうのです。
本書には、この他にも「マイサイド・バイアス」や、「王者バイアス」、「経験バイアス」、「ハロー効果」「生存者バイアス」、「直観トラップ」、「自信過剰トラップ」、「惰性トラップ」、「アンカリング」、「サンクコスト」などを紹介。
最新の行動科学の知見を使い、われわれがどうすればこのバイアス、トラップから逃れられるのか、実践的なアドバイスがなされており、経営者・マネジャーは必読の一冊です。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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【ストーリーテリング・トラップ】
誰かからよくできた話を聞かされると、人はそれを裏づける要素を探し始める傾向があり、それらを探し当てる
情報を発信する人の評判が、その人がもたらす情報の価値を上回る時、あるいは、プロジェクトの内容そのものよりプロジェクトの提案者の実績が重視される時、私たちは「王者バイアス」に陥っている
2001年の第1号店のオープンは、革新的なイノベーション、iPodの発売と同時だった。2008年、iPhoneが登場すると、アップルストアの売り上げは50パーセント跳ね上がった。その後の1年間は横ばいだったが、2010年にiPadが発売されると、売上高は65億ドルから90億ドルに急増した。言い換えれば、アップルストアの設計と成功との因果関係は、あったとしてもごくわずかだった
他社のベストプラクティスを真似ると、別の問題も生じる。それは自社の本当の強みである差別化ポイントから目をそらしてしまうことだ
「自分が世界を変えられると考えるくらいクレイジーな人たち」の圧倒的多数は、世界を変えることは「なかった」(中略)私たちは生存者にしか目を向けず、同じリスクに挑んで行動した結果、失敗した者には、目を向けようとしない。この論理的エラーは「生存者バイアス」と呼ばれる
戦略的意思決定の特徴の一つは、それらが比較的まれに行われることだ。したがって、戦略的意思決定を下さなければならない経営者が、過去に同じ種類の意思決定を数多く経験している可能性は低い
「資源配分を大幅に変更する企業」は「あまり変更しない企業」より業績がよかった
「事前の設定(デフォルト)がある状況では、しばしば現状維持が優先される
選択肢に「今すぐ」という要素が入ってくると、私たちの忍耐力は大きく低下する
成功報酬で働く弁護士は、早く和解をするように勧める傾向があり、時間給の弁護士は裁判に持ち込む傾向が強い
意思決定に関して、「How」は「What」より6倍も重要
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人間のバイアスの話は、数多ある行動科学の本で書かれていますが、本書の事例は、いずれも経営の意思決定におけるものなので、ビジネスパーソンに向いています。
本書を読めば、ビジネス書で礼賛されている多くの経営者がじつは過大評価されていること、ビジネス書の著者のうち何割かが、本書で紹介されているバイアスを使って大衆を操作していることに気づくでしょう。
転ばぬ先の杖として、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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『賢い人がなぜ決断を誤るのか?』オリヴィエ・シボニー・著
野中香方子・訳 日経BP
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◆目次◆
第1部 九つのトラップ
第2部 意思決定の方法を決める
第3部 意思決定アーキテクト
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