【マイケル・サンデル教授による注目作。】
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本日ご紹介する一冊は、100万部を突破した大ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』の著者であり、ハーバード大学の哲学教授、マイケル・サンデル氏による注目の新刊。
※参考:『これからの正義の話をしよう』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152091312/
原題は、”The Tyranny of Merit”(メリトクラシー(能力主義)の横暴)で、格差と分断の根源にある「能力主義」の思想とその問題点を論じています。
『実力も運のうち』というタイトルから予想できるように、著者は、成功が含む運や偶然の要素を指摘し、報酬が社会への貢献を正しく反映していないことを論じています。
また、能力主義がもたらすエリートの傲慢と、恵まれない人々の自信喪失の問題にも触れており、なぜわれわれの社会が分断され、力を失っているのか、その理由を見事に言い当てています。
「賢い人々」によって運営されているはずの政治・経済が、実際にはこの40年間、上層の人々以外を豊かにしてこなかった現実を厳しく追及し、その原因を徹底的に分析しています。
<能力主義の理想は不平等の解決ではない。不平等の正当化なのだ>
著者は、本書のなかで、格差を固定し、偏見を生む学歴偏重主義を批判し、代わって、「実践知」や「共通善」を軸にした社会の再構築と、教育の改革を提唱しています。
政治・経済・教育に関わる人は、ぜひ読んでおくといいと思います。
さっそく、本文の中から気になった部分を赤ペンチェックして行きましょう。
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優れた統治のために必要なのは、実践知と市民的美徳、つまり共通善について熟考し、それを効率よく推進する能力である。ところが、現代のほとんどの大学では──最高の評価を受けている大学でさえ──これらのいずれの能力も十分に養成されているとは言いがたい
知名度では劣る公立総合大学と州立大学の一部で社会的移動率が高いことを、チェティらのチームが確認している。それらの大学は低所得の学生にも入りやすいと共に、彼らの上昇移動をうまく助けてもいる。たとえば、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校と、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校では、学生の一〇%近くが最下層から最上層へと上昇できている。社会的移動率はアイビーリーグ各校や最難関公立大学のおよそ五倍だ
労働に敬意を払おうとするなら、まず、労働に従事するための準備となるさまざまな学びと訓練について、真剣に考えることから始めなくてはならない。つまり、公的な高等教育から手を引く流れを逆転させ、技術・職業教育の軽視を改め、資金と威信において四年制大学とそれ以外の中等教育後の教育現場を厳然と隔てる壁を壊すのだ
貢献的正義の理論が教えるのは、われわれが人間として最も充実するのは共通善に貢献し、その貢献によって同胞である市民から評価されるときだということだ
私が懸念するのは、現代の金融が道徳と政治に及ぼす影響だ。労働の尊厳の承認を政治方針とすれば、税制度を利用することで、投機の抑制と生産的労働の称賛によって評価の経済を立て直すことができるだろう。大まかに言えば、それは税負担を労働から消費と投機へ移すことを意味する
多様な職業や地位の市民が共通の空間や公共の場で出会うことは必要だ。なぜなら、それが互いについて折り合いをつけ、差異を受容することを学ぶ方法だからだ。また、共通善を尊重することを知る方法でもある
「神の恩寵か、出自の偶然か、運命の神秘がなかったら、私もああなっていた」。そのような謙虚さが、われわれを分断する冷酷な成功の倫理から引き返すきっかけとなる。能力の専制を超えて、怨嗟の少ない、より寛容な公共生活へ向かわせてくれるのだ
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アメリカを含め、現在の先進国が陥っている格差と分断の原因をズバリ指摘しており、リーダー、教育関係者は必読の思想書だと思いました。
本田宗一郎と共に、世界のホンダを率いた藤沢武夫氏は、ホンダの技術者たちを尊重するため、財テクには手を出さなかったという話がありましたが、いまこそそのような労働尊重の姿勢を持つべきだと思います。
「共通善」を軸にした社会の再構築。国はもちろん、あらゆる単位の組織、コミュニティで議論すべき内容だと思います。
これは必読の一冊ですね。
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『実力も運のうち』マイケル・サンデル・著
鬼澤忍・訳 早川書房
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◆目次◆
序章 入学すること
第1章 勝者と敗者
第2章 「偉大なのは善良だから」
──能力の道徳の簡単な歴史
第3章 出世のレトリック
第4章 学歴偏重主義
──何より受け入れがたい偏見
第5章 成功の倫理学
第6章 選別装置
第7章 労働を承認する
結論──能力と共通善
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