【生き方選びの参考に。】
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本日ご紹介する一冊は、何と女性の就農物語(小説)。
『誰も農業を知らない』の著者、有坪民雄さんがFacebookでオススメしていたので、思わず手に取ったのですが、なかなか面白い小説でした。
参考までに、有坪さんのコメントを引用しておきましょう。
<感動のあまり涙があふれて止まらないという感じではないし、直木賞とか文学賞を取れるとは思わないけれど、いやぁ、良くできた小説だわ。私が見ても突っ込みどころは、ほぼない。厳密に言えばあるけど、正直に言って「農業ライター」としてメシ食ってる人以上にこの世界を理解している方が書いているように思いつつ読んだ>
※参考:『誰も農業を知らない』
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主人公は、派遣切りに遭った日、同棲相手から突然「結婚したい人がいるから出ていってくれ」と告げられた32歳の独身・水沢久美子。
一瞬で仕事も家も彼氏も失った久美子が、偶然「農業女子特集」というテレビ番組を見たことから、「アラサー就農物語」が始まるのです。
無事、農業大学校の新規就農コースを終了するも、農地がなかなか貸してもらえない。そうしているうちに資金は底をついていく…。
綱渡りの独立ですが、そこには生きることの困難と美しさが描かれています。
人生、何をやっても困難やリスクが付きまとうものですが、それにどう対処するかがその人の人生を決める。
主人公の清々しい奮闘ぶりと周囲との心温まる交流を見ていると、生きることの素晴らしさを再認識させられます。
「先行き不透明」なんて言ってうじうじ悩んでいる人は、本書を読めばきっとスカッとすると思います。
さっそく、内容のポイントをチェックしてみましょう。
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誰にも雇用されない……ああ、なんて自由なのだろう。いつ馘になるかとビクビクすることもないのだ
自分の食べる物を自ら作る。それこそ立派な生きる術ではないだろうか
ああ、やっと安全地帯を確保できた。住む所がないとなったときの、あの恐怖心は、もう二度と味わいたくない。頑張ろう。何があってもくじけない
泣くな。私が泣くのは人生に成功したときだけだ。そのときが来たら嬉し涙を流すのだ。きっと私は成功する
私が言いたいのは、どんな人にもリスクがあるってことよ
そもそも単身者より夫婦者の方が有利なのは、どんな仕事でも同じだ。家族の労働はタダだからだ。だが、無償労働がなければ成り立たないのなら、もはや経営とは言えないのではないか。いまだにそんなことを言っているから、農家に嫁が来ないのだ
「つまりあんたは、種の蒔き方と畝の立て方ぐらいしかわかっていないはずだよ。私はね、大根なら五十年は作ってきた。あんたは五十年を長いと見るかい?」「それはもちろん」「そうじゃないんだよ。春の大根を作った経験はたったの五十回しかないってことなんだ。ほかの商売じゃこんなに少なくないよ(略)」
家と畑……これさえ手に入れば、人生はなんとかなるように思う。少なくとも、ホームレスにならなくて済むし、飢え死にからも免れられる
──どんな小さな約束でも守らなきゃダメよ。約束が小さければ小さいほど、破ったときに信頼を失うわよ
なるべく人には親切にした方がいい。咄嗟にそう思った。人脈が財産だと言う財界人がいるが、自分はもっと低次元のところで、何かあったときのために予防線を張っておいた方がいい
やっぱり単価を上げることを考えなきゃ。需要と供給の関係をうまく利用するのよ。たとえば出荷の時期を世間一般と少しずらしてみるとか
──結婚式で神父が言うじゃん。「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも」とかなんとかゴチャゴチャと。静代ちゃんが言うにはね、あの中で重要なのは、病めるときと貧しいときなんだってよ。つまりね、人生最悪の事態に陥ったときの保険がないと誰だって安心して生きられないよっていう意味なんだってさ
──つまり女っていう生き物はさ、安全に生きるのがうまいんだよ
──あなたは、どうやってこんな優雅な暮らしを手に入れたんですか。あのときは、そう言って問い詰めたくなったのだった。だけど今日の自分は、それほど羨ましいとは思わなかった。きっと、自分の力で暮らしを切り拓いていく方が、性格的に向いているのだろう。大変だけど面白いもの。たった一度の人生なんだし。
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農業ビジネス、就農に興味のある方はもちろんですが、生き方を考えたいすべての人におすすめの一冊です。
主人公は都会から自立を求めて田舎に移り住んだ生真面目な30代女子ですが、本書にはそんな彼女とはまったく異なる、したたかな女性たちが登場します。
安定のため、好きでもない男性と結婚し、伝統的な農家の価値システムに組み込まれて行くシングルマザー、嘘で塗り固められた夢のライフスタイルを喧伝するブロガー、年下の男性の家に転がり込んで結婚をモノにしてしまったバツイチの女性…。
BBM読者のみなさんは、何となく主人公に共感するような気がしますが、生き方は本来、人それぞれ。
生き方選びの参考に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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『農ガール、農ライフ』垣谷美雨・著 祥伝社
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◆目次◆
農ガール、農ライフ
解説 原田ひ香
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