【臆病者の日本人でも勇気が出る呼吸法】
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点と点が線になる(connecting the dots)という感覚は、生きていて、また本を読んでいていつも感じることですが、最近またすごいシンクロニシティが起こっています。
先日、バタイユの『呪われた部分 有用性の限界』をご紹介しましたが、この中で、個人主義の限界についてコメントした部分がありました。
※参考:『呪われた部分 有用性の限界』
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個人主義に基づき、個人の豊かさや富を増やしても、それらは死によって無になるから、個人主義は死を許容できない。それに対し、バタイユは「栄誉ある死」を重んじたアステカ文明の思想を紹介していました。
かと言って、われわれはアステカの時代に戻ることはできない。どうすればわれわれは、個人の時代に死を許容できるようになるのか?
そこにヒントを与えてくれたのが「能」でした。
じつは先日、仲間と一緒に山口県の防府天満宮に行った折、能面作家の松田龍仁さんにお会いしたのですが、ここでじつに興味深い「能」のレクチャーを受けました。
なかでも興味が湧いたのは、死の恐怖・ストレスを忘れるための機能が能にある、という点でした。
信長は、戦いの直前に「敦盛」を舞ったそうですが、これは死の恐怖・ストレスを忘れ、エネルギーに変えるためだったそうです。
偶然、訪れていた仲間のおばさんが松田さんの弟子だったこともあり、今度広島に展覧会を見に行くのですが、その前に予習を、と思っていたら、タイムリーなことに、出版社さんから能の本が送られてきました。
読んでみたら、そこに臆病な日本人が強く生きるためのヒントが書かれていたので、本日はこれをご紹介します。
旺季志ずかさんが書いた『臆病な僕でも勇者になれた七つの教え』に、「臆病なまま進め」という名台詞が書かれていますが、本書は、その実践編。
臆病な人が恐怖を忘れ、克服するための能の知恵、そして呼吸法が書かれています。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。
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能の呼吸法である反復律動性の呼吸を使うことによって、活気(やる気)はキープしたまま、ネガティブな感情は抑えることができる
日本人は、精神的に弱いのではなく、精神的に過敏な民族
古来、勇将・猛将と呼ばれた人には、人一倍恐怖心が強いという人が多くいました。勇猛であればあるほど、強い恐怖心を持っていた。その恐怖心に裏打ちされた計画性や行動力があったからこその連戦連勝です。ただ、彼らが後世、臆病と呼ばれず勇猛とされるのは、その恐怖心をやたらと口にしなかったことと、そしてそれをコントロールする方法を知っていたからです
「強く」すること自体は、悪いことではありません。ただ、その「強さ」が「ハード(hardness)」であることが問題なのです
「ストロング」な精神とは、落ち込むときにはとことん落ち込み、楽しむときにはとことん楽しめる、そんな振幅を持った心を言います
演劇の「メソッド演技」という技法では、自分の過去にあった悲しい場面を思い浮かべます。これがうまくいくと本当に涙が流れてきて、悲しい演技ができます。しかし、メソッド演技では、その人の人生経験以上の演技はできません(中略)能はこれとまったく違うアプローチをします。悲しいとか、楽しいとかそんな解釈は一切せずに、ただ「型」の稽古をします
能の物語の構造をよく見てみると、そこにはふたつの時間が流れていることに気づくでしょう。ひとつはワキ、すなわち人間の時間、「人の時」です。これは私たちの時間と同じで、過去から現在に至り、そして未来へとつながっていく<順行する時間>です。そしてもうひとつはシテの時間、すなわち「死者の時」です。こちらは現在から過去に遡っていく<溯行する時間>です
順行する人の時の流れと、溯行する死者の時の流れの渦巻くのがこの世です。それは「こころ」と「思ひ」のように位相を異にしますので、通常交わることがありません。しかし、それが「事件」として交わった瞬間に私たちは忽然と絶対理解不可能であるはずの「永遠」を実感します。自分の生命の不滅性と、そして宗族、共同体の永遠性を実感するのです
裸の木のてっぺんについている大きな果実、それが「碩果」です。ほかの陰の養分を吸って、たったひとつだけ大きくなった実です。だからさまざまな問題が生じている。が、大きくなりすぎた実ですから、もうすぐ熟します。そして熟せば落ちる。落ちれば陽である「碩果」は下に行く
昔の至人と呼ばれた人たちは、みな心気を下に充たしていた
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土井は能に関してはまったくの素人ですが、これを機に、しっかり勉強しようと思いました。
そして、あわよくば能の本も企画したい…。
本書をきっかけに、能が再考されたら面白いですね。
ぜひ、読んでみてください。
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『能に学ぶ「和」の呼吸法』安田登・著 祥伝社
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◆目次◆
1章 信長が舞った「人間五十年」の舞の秘密
──深い呼吸と声がストレスを力に変える
2章 能のゆったりした呼吸は「反復律動性」をつくる
──高いパフォーマンスを引き出す「和」の呼吸法
3章 能の発声は、深層の力を引き出す
──不安や恐怖も吹き飛ばす「和」の発声法
4章 能の動きから「和の呼吸法」を手に入れる
──心身の最高パフォーマンスを引き出す
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