【買わせる「社会記号」とは?】
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本日ご紹介する一冊は、博報堂ケトル共同CEOの嶋浩一郎さんと、一橋大学教授でマーケティング、消費者行動論、文化社会学などを専門とする松井剛さんによる共著。
言葉がわれわれの欲望を変え、現実を変えていくという真実を、それぞれ実務家の視点と専門家の視点から明らかにして行く、知的好奇心を刺激する一冊です。
本書の冒頭で、嶋浩一郎氏は、読者にこう尋ねます。
<突然ですが、質問です。あなたは「加齢臭」を気にしたことがありますか? 女性の方であれば、「女子力」を気にしたことはありますか? ある、という人に重ねて聞きます。では、「加齢臭」あるいは「女子力」ということばができる前に、それらについて気にしたことがあったでしょうか?>
そうなのです。
われわれは、自分の欲望は自分の中にある、と思ってしまいがちですが、じつは欲望は言葉によって作られるのです。
博報堂PR局は、これを「社会記号」と名付けたそうですが、本書はまさにこの「社会記号」をテーマとした一冊です。
どんな言葉がわれわれの消費を動かしているのか、どうすればそんな言葉が創れるのか。
気になる内容を、さっそくチェックしてみましょう。
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「ロハス」「第三のビール」といったことばは、世の中の新しい動きや事象を説明するためにメディアがつくった社会記号ですが、ロハスということばができたことによってエココンシャスな商品が売れ、第三のビールということばができたことで、ビール各社の「新ジャンル」がヒットするという現象が起こりました(嶋浩一郎)
「おひとりさま」という社会記号が定着するということは、「他人に気を遣うより、自分が好きなように外食や旅行をしたっていいじゃない」という欲望が世の中に芽生えているということ(嶋浩一郎)
最初に取り上げるのは、「ハリトシス(halitosis)」ということばです。耳慣れないことばですね。これは「口臭」を意味する医学用語です。このことばがよく知られるようになったのは、一九二〇年代のアメリカにおいて展開されたリステリンの広告がきっかけだと言われています(中略)この広告キャンペーンは大成功を収め、一九二〇~二一年は一〇万ドル程度だったランバート薬品の利益は、一九二七年には四〇〇万ドルにまで達しました。リステリンで口をゆすぐことが、シャワーやひげそりと同様に、朝の習慣としてアメリカ人に定着したのです(松井剛)
堅い専門用語を使った“病名”を付けることで、この“病気”を治さなければ社会的な失敗をもたらすかもしれないという固定観念を植え付けることができる場合がある(松井剛)
◆社会記号の8つの機能(松井剛)
自己確認 「コギャルでよかった」
同化 「コギャルになりたい」
寛容 「コギャルだからしょうがない」
拒絶 「コギャルなんて大嫌い」
規範 「コギャルなら茶髪・ルーズソックスでしょ」
課題 「コギャルのような不良は更生させるべき」
報道 「コギャルの生態を知らせたい」
市場 「コギャル向けの商品をつくろう」
新しいモノやサービスを売るためには、前提として、まずカテゴリーを消費者や流通業者などに認知させる必要があるわけです。そのため、カテゴリーの社会記号は、マーケティングの研究者から注目されてきました(松井剛)
カテゴリーとしての社会記号をつくる際に大事なポイントは、代表例を消費者に認知させることになるのでしょう。例えば「エナジードリンク」ならばレッドブル、「サードウェーブコーヒー」ならばブルーボトルコーヒー、「渋谷系」ならば小沢健二、といった具合です(松井剛)
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土井は、自分自身が「ときめく」や「方眼ノート」「朝4時起き」「督促OL」などの言葉を作ってきた人間なので、社会記号のパワーについてはよく知っているつもりですが、こうやって整理されると、より創造活動がラクになりますね。
嶋浩一郎氏、松井剛氏どちらの主張も興味深く読ませていただきました。
これはマーケター、編集者必読の一冊でしょう。
もちろん社長が読めば、破壊的なPRができるかもしれません。
おすすめです。
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『欲望する「ことば」』嶋浩一郎、松井剛・著 集英社
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◆目次◆
はじめに 社会記号が世の中を動かす 嶋浩一郎
第一章 ハリトシス・加齢臭・癒し・女子──社会記号の持つ力 松井剛
第二章 いかに社会記号は発見されるか──ことばと欲望の考察 嶋浩一郎
第三章 ことばが私たちの現実をつくる──社会記号の機能と種類 松井剛
第四章 メディアが社会記号とブランドを結びつける──PRの現場から 嶋浩一郎
第五章 なぜ人は社会記号を求めるのか──その社会的要請 松井剛
第六章 対談 誰が社会記号をつくるのか 嶋浩一郎・松井剛
おわりに 社会記号をクリティカルに捉える消費者になるには? 松井剛
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