【成功と幸福を同時に実現する考え方】
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たくさん本を読んでいると、自己啓発、小説などのジャンルを問わず、たくさんの「成功は幸せとは限らない」論に出くわすわけですが、そのほとんどは意味がないと感じています。
問題の一つは、書いている人が成功者ではなく、単なる「すっぱいぶどう」論に陥っている点。
もう一つは、たとえ理屈が正しくても、金持ちが所得の再分配に応じなければ意味がない、ということです。(書き手のほとんどは金持ちを毛嫌いしていますが、誰も自分を嫌っている人のために寄付しようとは思わないでしょう)
本日ご紹介する一冊は、成功と幸福を考える上で、非常にバランスの良い一冊。著者はコーネル大学ジョンソンスクール経済学教授で、累進消費税の妥当性を訴えるために本書を書いたと思われますが、良質な自己啓発書としても読むことができます。
何が成功を左右するのか、運を子どもにどう教えればやる気を削がないのか、どうすれば成功しても感謝を失わない人になれるのか、どうすれば成功者から社会に所得の再分配を促すことができるのか…。
ところどころ、成功や所得を決める「要因」が書かれていて、職業選択やキャリア構築のヒントを求めている人には、重宝する一冊となるでしょう。
また、既に成功を収めた人には、どうすれば幸福になれるのか、そのヒントが示された本でもあると思います。
さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。
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人的資本説には、あるスキルの価値の高さは状況に応じて変わるという事実が欠けている
たとえばかつては、めずらしい病気の患者にとっての最善の選択肢は、地元でいちばんの名医に診てもらうことだた。しかし、マウスをクリックするだけで医療記録を送信できる現代では、その病気の世界的な権威からアドバイスを受けられる
ネットワーク効果が重要なのは、大きな利益が見込まれる市場でひとり勝ちするために必要な、「偶然」を引き起こすからだ。たとえば、本や映画で考えてみよう。本を読んだり、映画を観たりするのは、作品についてほかの人と語り合うためでもある。そうした機会は、ベストセラー本や人気の映画を選べば多くなる
ロングテール理論が見落としているもうひとつの要素は、消費者の時間不足と労力不足という市場の重大な制約だ
CEO報酬が激増したのには、もうひとつの要因がある。ウィルソンの時代には、CEOの自由市場が存在しなかったことだ
近年、歯科医のなかでも美容歯科の報酬が劇的に増えた。ほかの職業のトップ層の所得が増えることによって美容歯科の需要が増加したからである
参加者が増えると、偶然が結果を左右する可能性が大きくなる
運は重要でないと親が子どもに教えて育てれば、運は大事だと真実を教えるよりも、子どもを成功に導く可能性が大きくなる
いくら金持ちでも、33万3000ドルのフェラーリででこぼこの道路を走るより、15万ドルのポルシェでよく整備された高速道路を走るほうがいいはずだ
外的要因が重要だと感じると、公益への貢献意欲が高まる
運が成功に果たす役割の重要性を認めなければ、次の世代が幸運を享受するための公共投資が維持できなくなる
1980年のアメリカでは、結婚式の平均費用は1万1000ドル(インフレ調整後)で、この額はいまでも世界の多くの地域にとっては相当なものだ。ところが、2014年にはこの数字が3万ドルに跳ね上がり、マンハッタンではいまや7万6000ドルを上回っている。なぜこんなに多くの費用をかけるのだろうか? 簡単に言えば、「特別」の水準が劇的に上がったからだ
すぐれたチームの一員に選ばれるには、人として高く評価されなければならない
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書かれている内容のほとんどは、学術研究に導き出されたものばかりで、キャリアを科学的に考えるよいきっかけになると思われます。
自らのキャリア構築のヒントに、また子どもや部下・後輩の指導にも役立つ内容です。
ぜひ読んでみてください。
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『成功する人は偶然を味方にする』ロバート・H・フランク・著
月沢李歌子・訳 日本経済新聞出版社
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◆目次◆
第1章 わたしが知るかぎりのことを教えよう
第2章 なぜささいな偶然がきわめて重要なのか
第3章 「ひとり勝ち市場」における運
第4章 一番成功する人は、一番有能な人ではない
第5章 努力と才能の誤解は、こうして広がる
第6章 「努力したから成功できた」の罪
第7章 黄金のチャンスをつかめ
第8章 まわりに感謝する
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