【牛肉から世界経済が見える】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833421631
ニューヨークと東京を行ったり来たりしていると、いろんなことが見えてきます。
最近特に気になっているのが、ニューヨークのスーパーではオーガニックな食材がたくさん手に入るのに、日本のスーパーには食品添加物だらけの商品が並んでいること。
日本の食費の安さは、添加物に支えられているだけじゃないのか、という疑念を持ち始めてしまったのです。
食品添加物だらけの商品を作っているメーカーと、それを宣伝するマスコミ。
もし、消費者がそのことに気づいたら、食費はどうなってしまうのか。
この懸念に追い打ちをかけるように舞い込んできたのが、中国が世界中で食材を買い漁っている、というニュースです。
本日ご紹介する一冊は、NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサーで、ベストセラー『里山資本主義』の著者でもある井上恭介さんが、中国の食材「爆買い」の現状を明らかにした一冊。
※参考:『里山資本主義』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041105129
日本の物価を守るべく、日夜戦う商社マンたちもかなわない中国のバイイングパワー。その恐ろしい影響力を目の当たりにする内容です。
さっそく、内容をチェックして行きましょう。
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「コモディティ・インデックスファンド」という金融商品を通じてそれまでは「プロの世界」だったところに「アマチュアの資金」が大量に流れ込み、価格を異常なまでに釣り上げている
2008年のリーマンショックのあと、衣食住のひとつである食を「食い物にしよう」とするマネーの奔流が起きた。利回りを得るためにはどんなことでもしてきた「マネー資本主義」が牙をむき、食の高騰に拍車をかけた。そのため、「食べきれないほど食べる人」と「まったく食べられない人」の二極化が世界中で進行している
「業界始まって以来の異常事態」だった。これまで負けることのなかった日本の商社が「買い負け」ていたのだ。買い負けている相手は誰か。中国に肉を売る業者だった
商社の担当者の努力により、日本の消費者は、海の外のうねりの「大波」を直接全身に浴びずに「そういえば牛丼の値段が少し上がったな」と感じる程度で済んでいるのだ
「中国の一般教書」で中国政府は何を掲げたか。自給自足を基本としてきた中国の食料政策を転換して、輸入を全面的に促進すると宣言したのだ
「世界の半分を中国が食べる」といわれる豚肉でも同じことが起こっている。経済を著しく発展させてきた世界一の豚肉消費国・中国。z013年5月には、アメリカ最大の豚肉加工業者スミスフィールド・フーズが約47億ドルで中国企業に買収されている
「中国によって価格の高いものを(我々が)買わざるをえない時代が、もう足音を立てて来るような気がしてしようがない」(伊藤忠商事 岡本博義副社長)
今や中国の需要は、アメリカからこれだけ大豆を輸入しても追いつかない。そうなれば、ますます争奪戦が加熱する。それを見て、世界の他の国が大豆生産に乗り出すに違いない
生産量を上げるためにホルモン剤や抗生剤を牛に与えるという「安易な方法」を消費者、つまりマンハッタンに住む富裕層は「毛嫌い」し始めている
水不足、食料不足に投資すべきだ
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牛肉、豚肉、大豆…。あらゆる食品が高騰する裏側にあったのは、中国政府の重要な政策変更だったようです。
2014年1月に発表されたいわば中国版一般教書。そこには、自給自足を基本としてきた中国の食料政策を転換して、輸入を全面的に促進すると宣言されていました。
このことが世界経済に与える影響は深刻であり、当然投資も盛り上がるわけですが、著者はこうした現状に疑問を呈しています。
そもそも牛肉は「工業製品」か「生き物」か。
食を通じて、世界経済とわれわれ人間の「あり方」について考えさせられる一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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『牛肉資本主義』井上恭介・著 プレジデント社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4761271426
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◆目次◆
はじめに
第1章 日本で「牛丼」を食べられなくなる?
第2章 中国で始まった「異次元“爆食”」
第3章 ヒツジへの玉突き現象
第4章 大豆を求めてアメリカ、そしてブラジルへ
中間考察 アメリカ型資本主義の象徴は、「牛肉」である
第5章 牛肉と穀物の世界を変えるマネー
第6章 グローバル資本主義の天国と地獄
第7章 ブラジルを襲った大干ばつ
第8章 牛肉は「工業製品」か「生き物」か
第9章 地球の限界を救えと立ち上がった SATOYAMA/SATOUMI
第10章 気候変動、食糧危機はどう回避できるのか
おわりに
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