【いま読むべき古典名著】
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本日ご紹介するのは、名著として名高いデュルケームの『自殺論』。
先日、たまたま手に取った教育書で紹介されていたのがきっかけで読んだのですが、これはすごい一冊です。
1897年に書かれた本なのに、まるで今の社会情勢をふまえて書かれたかのような、示唆に富んだ内容。
経済危機や、家族の危機、そして人々の不安と自殺の増大…。
こうした問題がなぜ今起こっているのか、その理由をじつにすっきりと説明してくれています。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、そもそも、土井が現在の活動を始めたのは、人々を心の飢えから解放するためでした。
そのためにギリシアに留学したり、エンターテインメントビジネスを学んでみたりしたわけですが、今日この本を読んで、なぜ人が自殺するのか、なぜ現代人は幸せになれないのか、その理由がわかった気がします。
500ページ以上におよぶ大著ですが、ここに書かれている「アノミー的自殺」論だけでも読む価値があると思います。
現在の調査に基づいて自殺の動機を探れば、健康問題、経済問題など、たくさんの要因が見えてくるわけですが、実際には問題の根本はそこにはない。
人間の精神は社会との結びつきによって強くなるのであり、自殺が増えるのは、じつは自由が増大するときなのです。
個人主義や経済至上主義、安易な離婚、経済事情による単身世帯の増大…。
これらがもたらす問題と、来るべき日本社会の姿を、デュルケームは予言しています。
豊かな社会を作るために、そして幸せな人生を歩むために、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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観察があまり長期間にわたらないかぎり、同一の社会における自殺の数はほぼ一定している
女子の自殺一にたいし、男子の自殺は四にのぼる
自殺がいちばん多いのはもっとも知的な階級ともっとも裕福な階級であるが、アルコール中毒がいちばん多いのはこれらの世界ではない
社会的環境が急激に変わるときにはきまって自殺率もまったく変わってしまう
まったく例外なしに、どこでもプロテスタントの自殺は他の宗教の信者のそれをはるかに上まわっている。その差は、最少二〇%から三〇%、最大三〇〇%で、そのあいだを上下している
カトリシズムとプロテスタンティズムのあいだのただ一つの本質的な相違は、後者のほうが、前者より相当広範囲の自由検討を認めているという点にある
プロテスタンティズムにはカトリシズムほど共通の信仰や儀式が多くそなわっていない
それは、敵意が、かれらにいっそう高い道徳性をしいるからではなく、かれらに緊密に連帯して生きることをしいるからなのだ。要するに、ユダヤ教徒が自殺から引きとめられるわけは、かれらの属している宗教社会がしっかりと塗り固められているからにほかならない
一般的にいって、人間は、もっぱら伝統のくびきから解放されるのに応じて、知識を獲得したいと望むようになる
自由業、もっと広義には余裕のある階級は、たしかに知識欲がもっとも旺盛で、もっとも知的な生活をいとなんでいる。さて、職業別や階級別の自殺統計はいつも不正確にしかできていないものであるが、社会の上層階級に自殺が法外に多いことは、もう疑いもない事実である
未婚であることによる自殺の増加がみられる
極端な早婚は、自殺に促進的な影響を与える。これは、とくに男子のばあいにいちじるしい
(自殺の)抑止作用は、家族が密であればあるほど、つまり家族がたくさんの成員をふくんでいればいるほど完璧なものになる
家族の大きさを制限することは、まさに不幸の源となるものであって、人の生きることへの希望を失わせてしまう。密度の高い家族というものは、なくてもすむ、また富んだ者だけがもつべき一種の贅沢品であるどころか、むしろ、それなしには人びとの生きていくこともかなわないような日々の糧なのである
人が、もしも自分をこえたところにみずからと連帯しているものをみとめなければ、かれより優越している目的にむすびつくことはできないし、一つの規律に服することもできない。個人をいっさいの社会的圧力から解放することは、けっきょくかれを孤独のままに見捨てることであり、意気阻喪させることになる
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『自殺論』中央公論新社 デュルケーム・著
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◆目次◆
第一編 非社会的要因
第二編 社会的原因と社会的タイプ
第三編 社会現象一般としての自殺について
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