【AIビジネスの未来と、それを牽引する天才の人物像】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022519932
本日ご紹介する一冊は、世界的AIブームを巻き起こした「ChatGPT」の開発者、サム・アルトマンの実像に迫った一冊。
著者の小林雅一氏は、KDDI総合研究所リサーチフェローで、情報セキュリティ大学院大学客員准教授も務める人物です。
東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻してニューヨークで新聞社に勤めたこともある方のようです。
本書では、サム・アルトマンがなぜこんな短期間で絶大な影響力を持つに至ったのか、話題となった解任劇と復帰劇の裏側に何があったのか、OpenAIの歴史とお金の流れなどを、さまざまな資料から明らかにしています。
タイトルからは、サム・アルトマンの評伝を期待させますが、それは内容のほんの一部。
主な内容は、サム・アルトマンとAI業界全体の動き、GAFAMのAI開発の現状と課題などで、AIの未来と、そこに潜むビジネスチャンス、投資チャンスを知りたい人には、興味深い内容です。
相変わらず抜け目のないマイクロソフトと、自己規律に縛られて身動きが取れないグーグル、その他企業のAIを巡る動向がわかる、興味深い内容です。
解任劇・復帰劇の裏側にあった特殊事情と支援者たちの動きは、ベンチャーを巡る政治を学ぶ意味で、勉強になると思います。
これからの時代の商品開発やマーケティングのヒントも入っており、個人的にはとても勉強になりました。
主に海外メディアを参考にしてまとめた記事のようですが、直接取材した内容がもっとあればさらに良かったのではないかと思います。
とはいえ、現時点でサム・アルトマンとAIビジネスについて読める、貴重な一冊であることは確かです。
ビジネスパーソンは、良い人なだけでは務まりませんが、サム・アルトマンもまたそういう人のように、本書からは見受けられます。
ビジネスパーソンとしての長所と短所がよくわかる内容でした。
さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
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因みに、この呼称はマーケティング戦略の一環であったとヒントンは後に述べている。つまり、過去にニューラルネットの評判があまりにも悪かったため、そのイメージを払拭して装いも新たに学会や産業界に売り込むために「ディープラーニング」という呼称を考案したのだ
アルトマン家では子供たちの知力や競争心を養うため、毎晩夕食の後に様々なクイズが20問出題された。たとえば非常に大きな数を示して「この平方根を求めて」といった問題に対し、子供たちが競って回答したという
2011年、アルトマンはYコンビネータにパートタイムのパートナーとして加わった。やがて2014年2月には弱冠28歳でポール・グレアムの後を継ぎ、Yコンビネータの社長に就任した
この壁を突破したのが、トランスフォーマーの「Self-Attention Mechanism(自己注意機構)」と呼ばれる仕組みである。これは文字通り、言語モデルが文脈を理解するための鍵となる単語に対して自動的に「注意(attention)」を向けることを可能にする技術だ。たとえば前述の「オレンジとアップルを買ってください」という文章では、「オレンジ」という単語に注目することによって「アップル」が果物の林檎を意味していることが分かる
OpenAI側から見れば、自社株式の一部をマイクロソフトに与える見返りに、同社の豊富なコンピューティング資源を使わせてもらう、という構図である。そこまでしなければならないほど、LLMの開発には膨大な計算機資源が必須と見ることもできる。またマイクロソフトは後々、自らの製品開発のためにOpenAIが開発したLLM技術などを独占的に使うことができる、というライセンス契約も交わされた
ChatGPTでは、まさに私達自身が自らの手で最先端の大規模言語モデル(をベースとするチャットボット)を操作できるようになったので、漸く、その驚くべき能力を実感することができた。これが爆発的ブームを巻き起こした主な理由と見られている
これからの訴訟の裁判(審理)における主な争点
1.フェアユース
2.著作権を有する作品をどこまで改変するか
3.競合性
検索エンジンに生成AIが導入されてユーザーの質問に適切な回答や情報を返してしまえば、ユーザーは敢えてそれらメディアのサイトをクリックして、そこに移動する必要がなくなってしまう。米国の調査会社ガートナーの予想では、生成AIを導入することでグーグルなど検索エンジンのトラフィックは2026年までに約25パーセント減少する見通し
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どなたかがレビューで書かれているように、サム・アルトマン自身への取材・掘り下げは足りないため、人物に興味がある方にとっては、物足りない印象を受けるかもしれません。
ただ、AIがこれから人類にどんな影響を与えるのか、それを牽引するOpenAIとサム・アルトマン、GAFAMの課題は何なのかが丁寧に書かれており、一読する価値はあると思います。
特に、AIやテック全般、半導体ビジネスのトレンドや投資に興味のある方は、読んでおいて損はないと思います。
ぜひ読んでみてください。
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『サム・アルトマン』小林雅一・著 朝日新聞出版
<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆
はじめに
プロローグ OpenAI前史
第1章 OpenAIの誕生
第2章 進化
第3章 飛躍
第4章 踊り場
第5章 未来
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