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本日ご紹介する一冊は、食が人類の歴史を動かした様子を、生命科学の視点から見た、興味深い読み物。
著者は、基礎生物学研究所ならびに東京工業大学において神経科学と栄養生理学の研究を行う、新谷隆史さんです。
本書のなかで著者は、ヒトがあらゆる動物の中で、もっとも食べ物を美味しく食べられるように進化してきたと主張。
われわれが果実を食べ始めることで、自らビタミンCを作れないようになり、そのため大航海時代に多くの船乗りが死んだこと、それを防ぐためにさまざまな食べ物・飲み物が開発されたことなど、生命科学の必然から生まれた、興味深い人類の食の歴史が書かれています。
なかでも面白かったのは、集団で狩りをする際に役立つ脳の「ブロードマン10野」の話。
解説には、この「ブロードマン10野」が、食事を美味しく感じさせること、美味しいものを食べた時の幸せを記憶すること、創意工夫を生み出すことが書かれており、なぜわれわれが文明を発展させることができたのか、そのメカニズムがわかります。
後半に行くに従って、話は食べ物や飲み物の歴史の話となり、果ては未来食にまで行き着くのですが、時系列で並べてここまで面白く解説できるのは、すごいと思いました。
われわれが今日口にしている食べ物・飲み物がなぜ、どのように生まれてきたのか、その歴史もわかり、教養書として、ぜひ読んでおきたい一冊です。
本書の理論に従うと、食に異様な執念を燃やす日本人は、きっと集団行動に向いているはずであり、また本来、イノベーションも起こせる民族のはず。
ビジネスやイノベーションのヒントとしても、ぜひ読んでおきたい一冊です。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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被子植物は霊長類に食べてもらうために、肉厚で色鮮やかな果実を作るように進化していった。一方、霊長類も果実を見つけやすいように視覚が発達したと考えられている
霊長類の祖先が果実を食べ始めたことで失ったものもある。それは、ビタミンCを作る能力だ。ビタミンCは動物の生存に必須であるため、ほとんどの動物は自分でビタミンCを作ることができる。ところが、果実にはビタミンCがたくさん含まれていたことから、霊長類の祖先はビタミンCを作ることをやめてしまったのだ。これは、果物や野菜などのビタミンCを含んだ食べ物を食べ続けなければならないことを意味している。後述するが、このことが大航海時代に多くの船乗りの命を奪うことになるのである
脳が大きくなるためには、その材料となるタンパク質や脂質を大量に摂取する必要がある。肉はタンパク質の固まりであり、脂質も多く含まれることから、脳を大きくするためには格好の食料だったのである
人類が火の利用を始めると、脳の拡大はさらに加速した。火で調理すると、食べ物は消化吸収されやすいかたちに変化し、エネルギーの摂取効率が格段に上昇するからだ
大きくなった脳領域の一つが、「ブロードマン10野」と呼ばれる大脳の最前方に位置するところだ。ここは脳の最高中枢といわれる前頭前野の一部で、複数の情報から様々な判断を行ったり、他人の感情や考えを推し量ったりする役割を果たしている。ヒトは集団の力で獲物を狩るが、その時にはこのブロードマン10野が大活躍しているのだ。そのため、この脳領域の能力が高い集団ほど、多くの獲物を得たと考えられる。(中略)ブロードマン10野が発達したヒトであるが、その結果、美食を追求するという性も負ってしまった。ブロードマン10野には、幸せな感情とその時の記憶を結びつけ記録するという役割もあるからだ
古代ローマは美食で有名であり、その食卓には様々な食材から作られた色とりどりの料理が並べられたという。古代ローマ人は征服した土地の食べ物を取り入れることが一般的であり、領土拡大の原動力となったものの一つが、新しい食べ物を手に入れたいという食いしん坊の気質だったとも考えられる
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目次は、歴史の古い順に並んでいるだけなので、これで面白くなるのかと疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、いやいや、これほど知的刺激に溢れる食の教養本はなかなかないと思います。
われわれ人間が、どうやって食を発展させてきたのか、なぜ美味の追求が文明を作ったのか、サイエンスと歴史が交差する、じつに面白い読み物です。
これを読むと、今の日本人に足りないものが何なのかも、何となく見えてくるかもしれませんね。
ぜひ、読んでみてください。
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『キャリアを切り開く言葉71』北野唯我・著 KADOKAWA
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◆目次◆
はじめに
第1章 [マインド] 好きなものを掴んで離さない「握力」の話
第2章 [仕事術] 自分に「期待値」を発生させる!
第3章 [仲間] 「見えざる資産」にアクセスしてる?
第4章 [インスピレーション] 「未来の種」を一緒に見つけよう
第5章 [人生] 「自分の強み」にフォーカスする生き方
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