2023年9月4日

『気候崩壊後の人類大移動』ガイア・ヴィンス・著 小坂恵理・訳 vol.6309

【これは必読。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309254616

本日ご紹介する一冊は、『ネイチャー』『ニューサイエンティスト』などでシニア・エディターを務めたサイエンス・ライターのガイア・ヴィンス氏が、気候変動後の世界を予測した一冊。

オビを見ると、まるでタイトルのように書かれている「10億人規模の移住を迫られる近未来」という衝撃のメッセージが目に入り、思わず手に取ってしまいましたが、これ、タイトルじゃないんですね。

本書には、これまで繁栄していた地域が気候変動によって住めなくなり、人類が大移動を余儀なくされる近未来が描かれています。

「今後五〇年間で気温も湿度も上昇し続ければ、もはや地球の広大な地域が、三五億の人類にとって住めない場所になる」というのだから、驚きますね。

なかでも要注意は、火事、猛暑、干ばつ、洪水の4つで、これからの数十年間、アメリカではすべての国立公園で火災が発生すると述べられています。

気候変動に伴う食料問題も無視できません。

本書では、気候変動に伴い、どの地域でどんな食料リスクが発生するのかが述べられています。

今後、どこに住めば安全や食料が約束されるのか、見定める良いヒントとなるでしょう。

温暖化によって有望になる地域の話題も、見逃せません。

アメリカのアラスカ州、グリーンランドのヌークやカナダのチャーチル、アイスランド南東部の港町ホプンなどは、特に注目のようです。

環境問題や今後の政策課題、ビジネスチャンスまでが見えてくる本で、科学者や政治家はもちろん、ビジネスパーソンにも広くおすすめできる内容です。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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国連の国際移住機関の予測では、今後三〇年間だけでも一五億人の環境難民が発生し、二〇五〇年以降は人数が急激に増えると考えられる。世界では温暖化がますます進行し、世界人口は二〇六〇年半ばにピークに達するまで増え続けるからだ

今日、海抜が低い島や沿岸地域の多くには地球の全人口の半分ちかくが集中しているが、海面が上昇すれば居住不可能になってしまう

気温が二℃上昇した地球は、不作に見舞われる機会が倍増し、漁獲高は半減するだろう

猛暑は、発着予定の飛行機を地上に待機させてしまう。気温が四三℃を超えると、飛行機は離陸が難しくなるからだ

これから世界の温暖化が進めば、外で肉体労働に従事できない日が増えるので、生産性が低下して食料安全保障が脅かされる

ヒートストレスの条件下では食用作物から栄養分が失われる。たんぱく質や亜鉛や鉄の含有量は、今日のほぼ五分の一まで減少するだろう

複数の経済学者の計算によれば、もしも国境が取り払われたら、世界のGDPは一〇〇~一五〇パーセントも跳ね上がり、年間に少なくとも九〇兆ドルが追加される

未熟練労働者の移民が実際には仕事を増やしてくれるもうひとつの理由は、機械化や自動化の採用が遅れることだ。(中略)逆に移民が国外に追放されたり入国を禁じられたりすると、移民に大きく依存してきた企業は機械化に踏み切り、機械化できる生産活動に専念する。たとえばメキシコの農園労働者が一九六四年にカリフォルニアから追い出されると、トマトの収穫は二年間で完全な手作業から完全な機械作業へと移行した。そしてこの時期にカリフォルニアは、レタス、アスパラガス、イチゴなど、機械化が不可能な作物の生産を中止した

安全で生産性の高い都市への移住を妨げる要因のひとつが、住宅の供給不足や高すぎる費用だ。その背景には、拡大する都市にはふさわしくない都市計画法や区画法の存在がある。区画規制が取り除かれた場所は居住密度が高くなり、住宅や店舗、さらには公共スペースなど用途が多彩になるため、従来の都市の魅力がさらにアップして、進化が促される。社会が一体性を持つためには、人口密度が高いほうが有利なことが、いまでは数多くの研究から明らかになっている

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途中、人類史のおさらいでちょっと中だるみしますが、全体的には刺激的な内容です。

著者の主張はちょっと理想主義的過ぎるかもしれませんが、現在、われわれが直面している問題や都市、農村の課題、ビジネスチャンスなどが、これ一冊で学べるのは、美味しいと思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『気候崩壊後の人類大移動』ガイア・ヴィンス・著 小坂恵理・訳 河出書房新社

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◆目次◆

はじめに
第1章 嵐
第2章 人新世の四騎士
第3章 故郷を離れる
第4章 移民を締め出す愚行
第5章 移民は富をもたらす
第6章 新しいコスモポリタン
第7章 安息の地、地球
第8章 移民の家
第9章 人新世の居住地
第10章 食料
第11章 エネルギー、水、材料
第12章 回復
まとめ
マニフェスト
謝辞
訳者あとがき
参考文献
原注
索引

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