2023年7月27日

『漂流アメリカ 超大国の落日と希望を100の海図で読み解け』 スコット・ギャロウェイ・著 長岡半太郎・監修 藤原玄・訳 vol.6285

【100の統計データでアメリカを見る】
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本日ご紹介する一冊は、NYU(ニューヨーク大学)スターン・ビジネススクールのマーケティングの教授であり、起業家でもあるスコット・ギャロウェイによる一冊。

タイトルがちょっとわかりにくいですが、100の統計データからアメリカ経済の現状と未来を読み解こうとするもので、これからの経済・ビジネス・社会を考える参考になります。

・GDPに占めるインフラ支出の割合
・時給と生産性の比較
・株式市場に投資をしているアメリカの世帯の割合
・5年ごとの移民の増加率
・職を得るために必要な学歴
・住宅の平均販売価格は平均世帯収入の何年分と等しいのか

挙げたのは一部ですが、彼の国とわが国の違いを理解する上でも興味深いデータが並んでいると思います。

また、経済とは関係ないですが、これからの社会を考える上で有効な統計データも紹介されており、こちらも興味深く読めると思います。

・精神科の病床数
・アメリカにおける地域に根差した活動の減少
・アメリカのスマートフォンユーザーの1日当たり平均ロック解除回数
・恋人と出会う方法

世界(特に中国)と比較した、アメリカの地位の変化についても述べられており、パワーシフトの視点から見ても興味深いと思います。

それにしても、「住宅の平均販売価格は平均世帯収入の何年分と等しいのか」のデータは、わが国の労働者がなぜ豊かでないか、その理由を物語っていますね。

アメリカは4年程度ですが、おそらくわが国は10年くらい。住宅を手に入れるのに、倍以上時間がかかる計算です。

空き家があふれているというのに、まったくおかしい話です。

誰か、これの日本版を出して欲しいですね(笑)。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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その後、生産性と賃金は切り離されている。われわれの生産物の価値は増大を続けているが、労働者が手にする報酬はそれを反映しなくなってしまった

アメリカで上位1%に入る高額所得者たちの賃金はおよそ140%増大した。おもに企業幹部や弁護士や医師からなるこの集団に占める銀行家の数は大幅に増大している

1989年、アメリカの世帯のうち株式市場に直接的・間接的に参加しているのは3分の1以下だった。2019年にはその割合はおよそ半分まで増大していた

1980~2017年までに、コンテナ船で運ばれた品物の数量は1億0200万メートルトンから18億3000万メートルトンまで増大した。現在ではすべての品物の80%が海上輸送されていると見積もられている

物理学、化学、生理学、医学、経済学のノーベル賞受賞者たちが所属する研究機関
アメリカ 52% 414人がノーベル賞を受賞

教会会員
1990年 68%
2020年 47%

職を得るために必要な学歴(2020年)
修士号以上 11%
学士号 24%

1兆ドルのバリュエーションがついた前年の収益

2018年 2290億ドル アップル
2021年 320億ドル テスラ

朝の報道番組がベゾスの宇宙旅行を取り上げた時間と気象危機を取り上げた時間

ベゾスの宇宙旅行 212分(2021年7月)
気象危機 267分(2020年全体)

カテゴリー別で見た都市部の消費者物価指数と実質平均賃金
教育費 +245%
衣服 -12%

住宅の平均販売価格は平均世帯収入の何年分と等しいのか
1970年 2.3年
1995年 3.4年
2020年 4.3年

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株であれ、不動産であれ、アメリカに投資している方、アメリカ在住の方、アメリカと取引している方は、今後の動向を読む上で、役立つ資料だと思います。

ユニークな資料が多く、ビジネスパーソンの教養、雑談ネタとしても、面白いと思います。

オビに、イーロン・マスクが「鼻もちならないバカ野郎」と著者を評する言葉が載っていますが、おそらくこれ、「1兆ドルのバリュエーションがついた前年の収益」のデータが原因でしょうね(笑)。

要するに、実態がないのに高い評価を得ているテスラへの批判で、それにイーロン・マスクが反応したのだと思われます。

いずれにしろ、面白いデータ集です。

ぜひ読んでみてください。

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『漂流アメリカ 超大国の落日と希望を100の海図で読み解け』
スコット・ギャロウェイ・著 長岡半太郎・監修 藤原玄・訳 パンローリング

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◆目次◆

監修者まえがき
序文 バラスト
第1章 株主層の台頭
第2章 われわれが作った世界
第3章 イノベーター崇拝
第4章 ハンガーゲーム
第5章 アテンションエコノミー
第6章 砂上の楼閣
第7章 脅威
第8章 不安定であることの明るい側面
第9章 望むべき未来
第10章 われわれは何をなすべきか
結論
謝辞

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