2023年6月14日

『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン・著 櫻井祐子・訳 vol.6255

【動物を動かす根本原理】
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長崎で暮らしていると、人間を含め動物というのは、本当にタンパク質のために生きているんだなあと実感します。

魚は自分より小さな魚を喰らいますし、その魚を鳥が海上から見ていて、好きあらば喰らおうとする。

獲物を獲るまでに、体力を浪費して、十分なタンパク質が得られなかったらアウト。

動物は、そんなゲームを毎日続けているのです。

本日ご紹介する一冊は、そんな動物たちの行動原理を解き明かした、興味深いサイエンス書。

「ニュー・サイエンティスト」誌の年間ベストブックにも選ばれた一冊だそうです。

著者は、シドニー大学生命環境科学部栄養生態学教授およびチャールズ・パーキンス・センター栄養研究リーダーのデイヴィッド・ローベンハイマー氏と、同じくシドニー大学生命環境科学部教授で、イギリスやオーストラリアのメディアに度々取り上げられているスティーヴン・J・シンプソン氏。

元々、『科学者たちが語る食欲』というタイトルで出ていたものを改題し、加筆・再編集したもので、以前よりも俄然面白そうな本に仕上がっています。

著者らは、本書の研究で、2つの問いを立てました。

1.動物は「自分にとって何が最適か」という基準で、食べるものを決めているのだろうか?
2.もし何らかの理由で最適な食餌を摂れず、やむなく別の食餌を摂るとき、どうなるのだろう?

その上で、タンパク質と炭水化物の比率の異なる25種類の餌を注意深く作成し、昆虫たちを観察したのです。

その結果は、驚くべきものでした。

われわれ人間も含め、動物を動かしている根本原理が何なのか、知るだけでも興味深いですが、知ることで、きっとビジネスや社会も違って見えてきます。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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コオロギの共食いを駆り立てていたのは、タンパク質に対する強烈な食欲だった

動物は計算なしで「ベスト・バランス」を食べる

覚えておいてほしいのは、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、塩素、カリウムが電流を発生させ、その電流が文字どおり私たちを動かしているーー心臓を鼓動させ、神経細胞を電気的刺激によって発火させるーーということだ

パスタやパンは、一般にいわれるとおり炭水化物が豊富だが、総エネルギー(カロリー)の約10%をタンパク質が占める。同様に、ステーキはタンパク質の塊だが、水分が半分以上を占めるほか、脂肪やミネラルも多く含んでいる

高炭水化物食のバッタは「成虫」まで時間がかかった

高炭水化物食で飼育されたバッタは、肥満になった

味は「栄養の種類」を示す

人間が生存し健康でいるための食欲
・タンパク質
・炭水化物
・脂肪
・ナトリウム(塩)
・カルシウム

脳に満腹信号が届くまで「時間」がかかる

食べるペースを遅らせ、早く胃にたまり、栄養素が血流に吸収され脳にその存在を知らせるまで時間を稼いでくれる何かが必要だ。さいわい、自然はその「何か」も用意してくれた。満腹感を高め、胃排出の速度を遅くし、胃腸を広げるものを。「食物繊維」だ

母乳は単一の食物とは名ばかりで、時間とともに複雑に変化し、赤ちゃんのその時々の発達段階に応じて栄養組成を変えていく

脂肪を食べない動物は「数」が減る

タンパク質が「ウイルス」に最も効く物質

「低タンパク質・高炭水化物」は寿命にいい

タンパク質が少ないと「カロリー」が余計に必要になる

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ビジネスへのインスピレーションを期待して読んだ本でしたが、意外に健康やダイエット、戦争の備えにも有用な話が満載でした。

小難しいトピックは最小限にとどめ、わかりやすい例を用いながら書かれているので、楽しく読めると思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『食欲人』デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン・著
櫻井祐子・訳 サンマーク出版

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◆目次◆

序章 科学者が「食欲」について調べた全記録
1章 バッタ
2章 栄養
3章 栄養幾何学
4章 食欲
5章 本能
6章 ヒト
7章 タンパク質
8章 人間に近い種
9章 食環境
10章 食環境2
11章 現代
12章 金銭欲
13章 肥満
14章 教訓

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