【これは傑作。】
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本日ご紹介する一冊は、トマトの歴史と、それがいかにわれわれの生活やビジネスを動かしてきたか、気鋭のノンフィクション作家がまとめた力作。
著者のウィリアム・アレキサンダー氏は、「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラー作家であり、「ニューヨーク・タイムズ」「ロサンゼルス・タイムズ」などに寄稿している人物です。
本書では、新大陸からもたらされ、当初観賞用の野菜とされていたトマトが、いかにして世界的食べ物になり、一大ビジネスへと発展していったのか、その歴史を学ぶことができます。
トマトを手に入れていたにも関わらず、興味を示さなかったメディチ家、トマトは食べられる野菜で栄養があるということを示したジョンソン大佐、濃縮トマトスープを一大ビジネスにしたキャンベル社、トマトの歴史を変えたサンマルツァーノ・トマトとその立役者、マルゲリータピザを作ったとされるエスポジト、トマトケチャップを大成功させたハインツ…。
トマト産業を発展させた歴史上の人物たちのエピソードも読むことができ、じつに好奇心くすぐる内容です。
新商品開発やマーケティング、食品企業への投資のヒントとしても有用な内容で、『ビジネス教養としてのトマト』と言い換えてもいいかもしれません。
誰からも無視されてきた商材が、世界的ヒット商品となる過程を、ぜひ読んでみてください。
本文のなかから、さっそく気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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ジョンソンが「郡裁判所の階段の上で勇気を出して、貴重なトマトを公衆の面前で食べたことで、ようやく用心深い南ジャージーの人びとも、今や最大の収穫量を誇るこの野菜を、食べられるものとして受け入れることにした」
トマトの幸運は、熟練した偽薬セールスマン、健康食品としてのトマトの突然の評判、そしてパンデミックという、三つの要素のありえない融合によるところが大きいようだ
農夫にとって必要だったのは、トマトが過剰供給されるシーズン中に利益を得る方法だった。救済策は、間接的ながらも、ナポレオン・ボナパルトという思いがけない人物からもたらされた。一八〇〇年、腹が減っては戦はできぬと言ったことで有名なナポレオンは、兵士たちの食事環境に投資し、よりよい食品保存法を考えた人に一万二〇〇〇フランを与えることにした
MITとグッティンゲン大学の学位をもつジョン・ドランスは、その四年後にこの会社に入り、キャンベルが捨てたトマトをすぐさま拾って、キャンベル社の缶詰商品を、他のどこからも手に入れられない真にユニークな商品にする方法を探し求めた。彼が出した答えはトマトスープだった。正確に言えば濃縮トマトスープだ
両者の関係性はシンボリックだ。トマトがなければ、ピザは地元ナポリのニッチな名物料理のままだっただろう。ところが、ピザがなければ、トマトはこんなにも簡単に世界制覇を達成することはなかっただろう
一八九六年に採用された「ハインツ57品種」のスローガンは(すでにその数を超えていたが、彼は「57」という響きを好んでいた)あまりに有名になり、ニューヨークからサンフランシスコまで続くアメリカの旅客鉄道線路や丘の中腹は、単に「57」とだけ書かれた巨大な看板で彩られた。誰も「何が57なのか?」と尋ねることはなかった。ハインツはPRの達人だったのだ
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興味深かったのは、トマトがアメリカで市販される最初の瓶詰食品のひとつとなったという記述で、ここに今後のビジネスのヒントが盛り込まれていました。
<戦争は、トマトと芽生えつつある缶詰産業の両者にとっての恩恵であることが証明された。一八七〇年までには、一〇〇軒の缶詰工場が、戦前の六倍以上にもなる年間三〇〇〇万個のトマト缶を製造するようになった>
非常時に繁盛する商売とは何か。これは今後のビジネス・投資において重要な視点だと思いますが、本書にはまさにそのヒントが隠されていました。
ぜひ、読んでみてください。
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『世界を変えた10のトマト』ウィリアム・アレキサンダー・著 飯嶋貴子・訳 青土社
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◆目次◆
序 金より価値のあるもの
1 メディチ家のポモドーロ
2 ジョンソン大佐のバケツ
3 サンマルツァーノの奇跡
4 女王、作家とその妻、そして彼らのピザ
5 期待
6 スパゲッティの王者
7 ビッグボーイ
8 誰がトマトを殺したか?
9 エアルーム・トマトの襲撃
10 冬がやって来る
謝辞
参考文献
訳者あとがき
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