2022年10月7日

『投資家の思考法』奥野一成・著 vol.6095

【待望の続編】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478116040

本日ご紹介する一冊は、好著『教養としての投資』の待望の続編。

※参考:『教養としての投資』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478109915

著者は、農林中金バリューインベストメンツCIO(最高投資責任者)の奥野一成さんです。

前回の著作がとても良かったので、今回も期待して読んでみたのですが、期待を裏切らない内容です。

豊富な事例をもとに、ビジネスの鍵となるコンセプトを紹介し、投資家の思考法(インベスターシンキング)を叩き込んでくれる、素晴らしい内容です。

キーエンスと1台数百万円するスチームコンベクションオーブンを提供するラショナルの事例をもとに付加価値とは何かを説明し、その流れで「ビジネスの3つの要素」として「付加価値」「競争優位性」「長期潮流」を説明する。

ここまでなら前著を読んだ方はまだ納得しないと思いますが、本書ではさらに、「価値とコストの非対称性」というコンセプトが紹介されており、その例としてスイスに本社がある世界最大シェアの香料メーカー、ジボダンと米国で圧倒的トップシェアを誇るキッコーマンの本醸造醤油、動物向け医薬品(ゾエティス、アイデックスラボラトリーズなど)を挙げています。

要するに、「支払うコストに対して得られる効用が非常に大きい」財は、競合が低価格を提案しても乗り換えは難しいため、値引き圧力がかからないのです。

途中、投げかけられる質問も読者のインベスターシンキングを鍛えてくれます。

「トヨタ・フェラーリ・テスラ」あなたならどこに投資する? IOCのバッハ会長はなぜあんなに偉そうなのか?「レーザー&ブレードモデル(カミソリと刃モデル)でも、収益性、持続性がまちまちなのはなぜか?」など、インベスターシンキングが身についていないとわからない質問ばかりで、考える力が身につきます。

表面的なビジネス理解では、真に永続する企業は作れない、またそういう企業を見つけて投資することはできない。

ビジネスパーソンとしての真の教養を身につけたい方は、ぜひ読むことをおすすめします。

本文のなかから、さっそく気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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キーエンスが売っているものは、顕微鏡ではなく、プロセスの改善という顧客の満足

ラショナルのスチコンを導入することは、熟練のシェフを一人雇うのと同等の効果があるのです。(中略)だからレストランオーナーは喜んで200万円を支払います。これこそがラショナルが提供する付加価値なのです

◆ビジネスの3つの要素
1.付加価値
2.競争優位性
3.長期潮流

ニッチな市場で高いシェアを誇る企業は新たに資金調達をする必要がないため、非上場を維持することが多く、皆さんのような個人投資家には投資機会が巡ってきません。ローパーは、アデラントのような非上場のソフトウェア企業を多数買収し傘下におさめています。我々はローパーという「鵜匠」に投資することで、アデラントのような優れた経済性を有した事業(=鵜)の間接的なオーナーになることができるのです

本当に保有企業の経済性に持続性があると評価できるなら、それらのマクロショックによって大きく株価が下落するタイミングはむしろ喜ばしいこと

事業投資の機会が巨大にある企業は、株主への配当などしません

個人投資家の利益確定は理論的に間違っている

元本確保絶対主義から脱却せよ

「川中」の製造業は意外に儲からない

排他的なポジションを持ったIOCと、通信技術の進歩により無限の競争に巻き込まれた従来型のメディア業界(=テレビ)。ここに放映権のうなぎ登りの高騰の原因、トーマス・バッハ氏が偉そうにできる理由があるのです

「支払うコストに対して得られる効用が非常に大きい」という財の性質を私は「価値とコストの非対称性」と呼んでいます

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『教養としての投資』の実践編という触れ込みですが、確かにこれは良い本です。

この本をベースに社内で勉強会をやれば、社員のビジネス力を鍛えられること、間違いなしですね。

強くおすすめしたい一冊です。

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『投資家の思考法』奥野一成・著 ダイヤモンド社

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◆目次◆

はじめに
第1章 お金に困らなくなる2つの方法
第2章 インベスターという生き物
第3章 インベスターが用いる3つの視点
第4章 企業の本質に迫る5つのプロセス
第5章 お金と価値を生み続ける最強のポートフォリオ
おわりに

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