2022年7月5日

『22世紀の民主主義』成田悠輔・著 vol.6032

【稀代の論客による、民主主義改造論】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4815615608

本日ご紹介する一冊は、最近TV等で話題の論客、経済学者・データ科学者で、イェール大学助教授の成田悠輔さんによる、注目の民主主義改造論です。

選挙直前の発売だというのに、<若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは何も変わらない>と言ってみたり、経済、コロナに関しても、民主主義的な国ほどひどい状況であることを示したり、とにかく空気を読まない発言が面白い。

読み進めてみると、確かに問題は民主主義にあるようで、その理由を著者はこんな風に説明しています。

<インターネットやSNSの浸透に伴って民主主義の「劣化」が起きた。閉鎖的で近視眼的になった民主国家では資本投資や輸出入などの未来と他者に開かれた経済の主電源が弱った>

では、われわれはこの劣化した民主主義をどうアップデートあるいは改革すればいいのか。

本書で著者は、いくつか画期的提案をしています。

政治家の定年や年齢上限、平均余命による票の重みづけ、アルゴリズムを使った選挙なしの民主主義など、かなり過激な論が綴られていますが、その理由を読むと、なるほどと頷くに違いありません。

著者の提言が受け入れられないとしても、指摘されている民主主義の欠陥はおっしゃる通りで、<民意や一般意思に関するデータをもっと解像度高く、色々な角度から取ること>というインプットのアイデアに関しては、100%賛成します。

困った人や社会的弱者の意見が反映される理想の民主主義へ向けて、良い思考実験になるのではないでしょうか。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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「若者よ選挙に行こう」といった広告キャンペーンに巻き込まれている時点で、老人たちの手のひらの上でファイティングポーズを取らされているだけだ、ということに気づかなければならない

生まれてしまった弱者に声を与える仕組みが民主主義だ。暴れ馬・資本主義に民主主義という手綱を掛け合わせることで、世界の半分は営まれてきた

民主国家ほどコロナで人が亡くなり、2019年から20年にかけての経済の失墜も大きかった

民主国家の企業ほど資本や設備への投資が伸び悩んでいる

あらゆる人がグローバルマスメディアを所有している今では、あらゆる政治家がポピュリストにならざるをえない

本当に問題なのは、情報通信環境が激変したにもかかわらず、選挙の設計と運用がほとんど変化できていないことだ

政治家の目を世論より成果へと振り向けるため、政策成果指標に紐づけた政治家への再選保証や成果報酬を導入するのはどうだろう

もし平均余命による票の重みづけが行われていたならば、大統領はヒラリー・クリントンになっていたはずだ

投票装置の電子化のように、恵まれない家庭でも投票しやすくする一見些細なUI/UX変更だけで、政治は変わりうる

選挙なしの民主主義の形として提案したいのは「無意識民主主義」だ。センサー民主主義やデータ民主主義、そしてアルゴリズム民主主義と言ってもいい

心の中を覗いてみよう。インターネットや監視カメラが捉える日常の中での言語や表情や体反応、安眠度合いや心拍数や脇汗量、ドーパミンやセロトニン、オキシトシンなどの神経伝達物質やホルモンの分泌量……人々の意識と無意識の欲望・意思を掴むあらゆるデータ源から、様々な政策論点やイシューに対する人々の意見が漏れ出している。そこに刻まれているのは「あの制度はいい」「うわぁ嫌いだ……」といった民意データだ

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歯に衣着せぬ、という言い回しがありますが、それを遥かに超えて、言ってはいけないことを、ロジカルにあっけらかんと語る、これまでにないタイプの論客。

本書でもその本領を発揮しており、読者は半ば引き攣りながら読むことになると思います(笑)。(政治家にとっては笑えないと思います)

雇用や利権など、さまざまな問題が絡んでいるので、理想通りにはならないと思いますが、思考実験として大変面白いと思いますし、ぜひ本書を叩き台に、みんなが新しい民主主義のルールを話し合うべきだと思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『22世紀の民主主義』成田悠輔・著 SBクリエイティブ

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◆目次◆

A.はじめに断言したいこと
B.要約
C.はじめに言い訳しておきたいこと
第1章 故障
第2章 闘争
第3章 逃走
第4章 構想
おわりに:異常を普通に
脚注

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