【ド文系でも読める、教養としての物理学】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396617410
本日の一冊は、京大名誉教授の鎌田浩毅さんと、三菱重工業で設計業務を担当後、関西の大手予備校「研伸館」で東大・京大、医学部志望の受験生に教えている物理講師、米田誠さんによる、物理学の入門書。
高校で物理を学び損ねたド文系のビジネスパーソンにもわかるように身近な事例を使って、難しい物理学の面白さと基本を、丁寧に解説してくれています。
40代以上のビジネスパーソンにとっては身近な「多焦点眼内レンズ」や「内視鏡」、CT、MRIなどを題材に、物理の基本法則を解説しており、じつにわかりやすい。
他にも,ジェットエンジンの推進力や雲が生まれる原理、エアコンや冷蔵庫で温度が下がる原理、ノイズキャンセリングの仕組み、リニアモーターカーが脱線しない仕組みなど、興味深い事例を用いて、物理が楽しくなる工夫をしています。
物理を履修しなかったド文系の土井でも恐ろしいぐらい楽しく読めたので、誰でも楽しく読める本だと断言できます。
巻末には、「特別講義」として、社会人のための物理の学び方をまとめており、過去に挫折した人、これから勉強したい人にとっては、良いガイドとなるでしょう。
物理発展の年表やノーベル物理学賞受賞者のリスト、参考文献、参考ホームページも載っているので、さらに詳しく知りたい方は、こちらも参考にするといいでしょう。
日本人の「物理力」の低下を憂う、著者2人の執念を感じる、本当にわかりやすい一冊でした。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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光が全反射するということは、屈折によって境界面を越える、つまり境界面から出て行く光がなくなるということですから、光が分かれずに当初の光の強さ(明るさ)を維持したまま物質の中を進めるということです。光ファイバーはこの全反射を利用して離れた場所に光を届けています
断熱膨張をすると、気体が持っている内部エネルギーは低くなるのです。そして、「内部エネルギーが低い状態」=「温度が低い」でした。したがって、「断熱膨張していく気体の温度は低くなっていく」のです。これが断熱膨張による温度低下の理屈です。ちなみに、エアコンや冷蔵庫は断熱膨張を利用しています
ノイズキャンセリングは一般的に、「ノイズに対して逆位相の音波を発生させてノイズを相殺する仕組み」と解説されます
人間は技術開発によって、遠く離れた場所の状況を「感じる」ことができるようになりました。その代表的な2つの技術が「レーダー」と「ソナー」です
モーターは「電磁石と永久磁石の引き合う力や反発し合う力を利用して、回転運動を生んでいる」
私たちが見られる光は、波長が380~770nmにおさまるものだけ
ビジネスパーソンは何のために物理を学ぶのでしょうか。それは「受用」と「試行錯誤」という2つの異なる姿勢を身につけるためです。なお、「受用」とは「受け入れて用いること」、そして、「試行錯誤」とは「いろいろ試してみて、失敗を重ねながらも完成に近づけていくこと」です
地球や市場経済などの自然の営みには、実証的なモデルを立てられる現象と、人間がこれまでに得た知識では歯が立たない現象、の2つがあるらしく、残念ながら火山現象の多くが後者に属するようなのです。これは為替市場でも類似しています
火山現象のように至るところで「不安定な力学系」が潜んでいる場合には、シミュレーションに頼りすぎるのは、大変危険
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「物理」とは、文字通り、物の理。本書の表現を用いると、<実験と理論の両方を使って物の本質を探ることで、宇宙に起きている様々な現象の原因や原理を知ろうとすること>です。
勘のいいビジネスパーソンならわかるように、まさに本質はビジネスと同じなのです。
先日ご紹介した植物の本同様、きっとビジネス思考を鍛える上で、役立つことと思います。
ぜひ読んでみてください。
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『一生モノの物理学』鎌田浩毅、米田誠・著 祥伝社
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◆目次◆
第1講(医療の中の物理学)水晶体の再建
第2講(医療の中の物理学)内視鏡
第3講(医療の中の物理学)X線・CT・MRI
第4講(医療の中の物理学)重粒子線によるがん治療
第5講(日常の中にある物理学)万有引力と天体の不思議
第6講(日常の中にある物理学)ジェットエンジンの推進力
第7講(日常の中にある物理学)気象現象のメカニズム
第8講(日常の中にある物理学)ノイズキャンセリング
第9講(日常の中にある物理学)レーダー・ソナー
第10講(日常の中にある物理学)リニアモーターカー
第11講(日常の中にある物理学)赤外線カメラと電子顕微鏡
特別講義 社会人のための物理の学び方
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