【これはすごい本だ。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569849237
どんなジャンルの専門家であれ、異分野の人に「越境させてくれる」書き手の存在は貴重だと感じています。
割と最近ご紹介したなかでは、『アートは資本主義の行方を予言する』の山本豊津さん、『雑草という戦略』の稲垣栄洋さんがそうでした。
※参考:『アートは資本主義の行方を予言する』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569826172/
※参考:『雑草という戦略』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453405792X/
本日ご紹介する一冊は、「日本一わかりやすい」映画講師、伊藤弘了さんが、映画の世界の奥深さを、ビジネスパーソンに教えてくれる、貴重な一冊。
映画の歴史から、ビジネス的側面、有名監督の有名である所以、大衆の心を掴む映画の手法まで、ド素人でもわかるよう、丁寧に解説されています。
実際の映画を観たことがなくても、重要シーンの画面と著者の巧みな解説で、要点を短時間で理解できます。
読書によって一度、専門家のフィルターをインストールしてしまえば、もう世界をそれ以前と同じように見ることはできない。
本書の解説も、またそんな効果を持っています。
なかでも、伝説のロック・バンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』と、ナチス・ドイツによる史上最悪のプロパガンダ映画『意志の勝利』の共通点は、知っておいて損はないでしょう。
さっそくですが、本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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カウボーイとスペースレンジャー。一見すると何の共通点もないように思われるかもしれませんが、アメリカ人はこの二つをあるキーワードによって結びつけます。それは「フロンティア」です
アメリカ西部には、19世紀に文明化を後押しした「鉄道」という古いテクノロジーと、その後20世紀に開発が進んだ「核兵器」という新しいテクノロジーの記憶が同時に眠っている
古典的ハリウッド映画が採用した「コンティニュイティ編集」
・アイライン・マッチ(視線の一致)
・切り返しショット
・アクションつなぎ
アイライン・マッチとは、最初のショットで画面の外に視線を向けている人物を写し、次のショットでその人物が見ているであろう対象(モノ、人物)を提示する技法
切り返しは複数の人物が会話をしているシーンによく用いられます。会話をしている人物を交互に撮影することで、観客の感情移入を促すための技法です。一般的な切り返しは「180度システム」というルールにしたがって編集されます。たとえば、会話をしている二人の人物をショット=切り返しショットで提示する場合、二人の人物の間に想像上の線(イマジナリー・ライン)があると考え、カメ
ラがその線を越えないように撮影します。こうすることによって、二人の視線が一致しているような印象を与えることができるのです
初心者は「黒澤、小津、溝口、成瀬」から
ヨーロッパは溝口、ハリウッドは黒澤がお好き
かつてそこに存在していた人やモノが消え去ると、あとには空っぽの空間、すなわち余白が残されます。この余白こそが小津映画の真骨頂なのです
リーフェンシュタールは、ヒトラーと大衆(女性や子どもの姿を恣意的に選択している点も見逃せません)のあいだであたかも視線の交換が行われているかのように映像を編集し、あまつさえそこに猫までくわえた
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すべての解説が面白いですが、なかでも著者が専門とする小津安二郎作品の解説は、群を抜いて面白い。
映画を教養として捉えた場合、何をどう知っておけば良いか、どの作品を観ればいいかがわかるので、インプットがじつに効率的。
何より著者の興奮が伝わってきて、映画がぐっと身近になりました。
これはおすすめの一冊です。
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『仕事と人生に効く教養としての映画』
伊藤弘了・著 PHP研究所
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◆目次◆
プロローグ 「トイ・ストーリー」は難しい?
第1講 映画を見たらどんないいことがあるか
──人生が劇的に変わる5大効用
第2講 映画史を知ればビジネスの基本がわかる
──イノベーションと産業の歴史
第3講 日本の古典映画はなぜ世界で評価されるのか
──黒澤・溝口のすごい仕事術
第4講 絵画のように映画を見る
──人間の真実を描いた小津の『東京物語』
第5講 映画で考える「家族のあり方」
──是枝裕和『海街diary』の視線劇
第6講 映画のトリックに騙されてみる
──ヒッチコックから学ぶ「バイアス」にとらわれない方法
第7講 映画の「嘘」を知る
──人の心を動かす映像戦略
最終講 あなたの感想が世界を変える
──情報を整理し、表現する力
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