【日本を支配する「世間」の力】
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本日ご紹介する一冊は、コロナ禍で話題となった、「同調圧力」に関する考察。
演劇界の休業補償を求めてSNSでバッシングされた作家・演出家の鴻上尚史さんと、世間学、刑事法学を専門とする評論家の佐藤直樹さんの対談で、日本を支配する「同調圧力」の正体について、熱い議論を展開しています。
この「同調圧力」は、日本の過去や職場、学校生活にも影を落としているわけですが、その正体を知り、冷静に対処しないと、間違った判断につながってしまう。
正しい少数意見が間違った多数意見に潰される、という事態が起こってしまうわけです。
たちが悪いのは、この「同調圧力」があまりにも強力すぎて、意識しないとリーダーまで一緒になって少数意見を潰してしまうこと。
だからこそ、「同調圧力」の正体を知り、正しい対処法を知る必要があるのです。
お二人の主張を読むと、どうやらこの同調圧力は、「世間」が生み出しているということがわかってくる。
そしてこの「世間」こそが、日本を動かす強力な原動力になっているようなのです。
日本を動かす、見えない原理を知ることにより、ビジネスにおいても、正しい意思決定をすることができる。
それではさっそく、本文の中から気になった部分をチェックして行きましょう。
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あなたを苦しめているものは「同調圧力」と呼ばれるもので、それは「世間」が作り出しているものです。それがコロナで狂暴化したことによって、「荒れるSNS」や「自粛警察」や「自粛の強制」が生まれたのだと、伝えたいと心底思いました(鴻上)
「世間」の特徴は「所与性」と呼ばれる「今の状態を続ける」「変化を嫌う」です(鴻上)
圧力は人びとの行動を抑制するだけでなく、結果として差別や異質な者の排除にも発展していく(佐藤)
◆「世間」を構成する4つのルール(佐藤)
1.お返しのルール(お中元・お歳暮など)
2.身分制のルール(身分が関係の力学を決める)
3.人間平等主義のルール(異質なものの排除)
4.呪術性のルール(俗信・迷信)
僕は「世間」が流動化したものが「空気」だと思っています。「空気」に支配されるのは、それが「世間」の一種だからです(鴻上)
ヨーロッパで一二世紀以降に成立した個人とは、人間関係を自立的に判断する能力をもつ人のことだと思うのです。一方、日本人は、「身分制のルール」があるため、他人を信用できるか否かは、「世間」のなかでどういう地位や身分を占めるかによって判断してきた。これは、それを自立的に判断する能力が、日本では育たなかったことを意味します(佐藤)
作家の山本七平さんは同調圧力に対しては「水を差す」ことが有効だと書いています(佐藤)
日本の場合は「社会」が希薄なので、結局、恋人を見つけるのも結婚するきっかけをつかむのも、「世間」のなかでしか起きないという問題がある(佐藤)
家父長一人が家族全員をコントロールしたことで、自我を、あるいは個人の存在をなくしていくことを加速させた(鴻上)
「世間」に生きているということは自己を確立する必要がないので、肯定感があるとしたら、自分の所属している「世間」が周りから認められたときだけ(鴻上)
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山本七平さんの名著『「空気」の研究』やその解説本『「超」入門 空気の研究』も併せて読めば、同調圧力を理解した上に、その対処法まで学べます。
※参考:『「空気」の研究』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/416791199X/
※参考:『「超」入門 空気の研究』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478102201/
同調圧力によって、いじめや自殺、はたまた村八分という事態が起こるこの日本において、「世間」の原理を学ぶのは、処世術として重要。
ぜひ読んでみてください。
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『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』
鴻上尚史、佐藤直樹・著 講談社
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◆目次◆
まえがき 鴻上尚史
序 章 コロナで炙り出された「世間」
──戦時という風景
第一部 「世間」が生み出す同調圧力
第二部 同調圧力の正体
あとがき 佐藤直樹
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