【なぜ読書が重要か】
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本日ご紹介する一冊は、大ベストセラー『国家の品格』の著者であり、数学者、藤原正彦さんによる、国力を高めるための読書のすすめ。
『本屋を守れ』という、時代の潮流に逆らったタイトルが付いていますが、じつは本書は、単なる本屋擁護論ではありません。
国民の教養や情緒を育み、国力を高めるために、どんな教育をするべきか、どんな規制をかけて行くべきかを論じた、極めて興味深い論考なのです。
論理の出発点が情緒であるという主張や、教養が大局観を作るという主張は、これまでにも述べられてきたことですが、では、それをどうこれからの人たちに伝えていくかという具体論が本書の読みどころです。
スマホの規制や、「常用漢字一九四五字(現在は二一三六字)を全部小学校のうちに読めるようにしよう」という主張、ルビ打ちの復活の提言などは、確かに効果がありそうな気がします。
政治的主張も多く、この辺は賛否両論あるかもしれませんが、「美的感性、もののあわれ、卑怯を憎む心、懐かしさ、惻隠、名誉や恥といった社会的・文化的な価値に関わる感性・情緒を育てる」という視点は、もっと議論されていいと思います。
これからの日本の教育を考える上で、とても示唆に富んだ論考です。
さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
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ここ十数年ほど、私は繰り返しグローバリズムを批判してきている。『クオレ』で強烈に植えつけられた惻隠、卑怯を憎む心、祖国愛などの情緒が、私にグローバリズム反対を叫ばせている
一人の人間の生涯における実体験は限られているから、判断力や大局観の中枢ともいえる情緒の獲得は、その大部分を読書に負うている
駅前の本屋とは、人びとに文化の存在を知らせる、という点で町の文化の拠点だったのである。江戸中期に長崎・出島に医師として滞在したドイツ人医師ケンペルは、「日本人はみな字が読める」と書いている。江戸末期の識字率は九〇%ともいわれ、断トツの世界一である。江戸には八〇〇軒、京都には二〇〇軒の本屋があったという
世界に通用する人物という意味で「国際人」がありうるとしたら、「四つの愛」が必須条件になると思います。家族愛、郷土愛、祖国愛、そして人類愛
英語は関係ない。むしろ、美的感性、もののあわれ、卑怯を憎む心、懐かしさ、惻隠、名誉や恥といった社会的・文化的な価値に関わる感性・情緒を育てることのほうがはるかに大切なのです
常用漢字一九四五字(現在は二一三六字)を全部小学校のうちに読めるようにしよう
漢字に関していえば、もう一つ。ルビ打ちの復活を提言しました
教養がなければ大局観が磨かれない。大局観がなければ、危機にあって、長期的な展望に立った手が打てない
対症療法って効かないんですよ。かえって問題を悪化させたりする。だから、大局的に見て根本を治さなければならない
情報というのは、それぞれが孤立しています。孤立した情報が組織化されて、初めて知識になる。「情報がつながること」が知識であり、さらに「知識がつながること」が教養
教養知識人の存在はつねに常軌を逸した行動に対する制動力、ブレーキであり、自分の望みどおりの社会改造や改革を強引に推進しようとする為政者にとっては邪魔者でしかない。私が申し上げたいのは、インテリ勢力が少数派ではすぐに排除され、弾圧されてしまうため、独裁や戦争への道を止められない、ということです
インターネットやスマホは、若い人びとから思考や深い情緒の成長を奪っている
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<人は何歳であっても、良書を読むことで瞬時にもう一段、高い境地に達することができる>
本書の七章に書かれたメッセージには、しびれました。
新しいテクノロジーに対して頑なではいけないと思ってはいますが、人の成長にとって大切なものを大切にしようという本書の思想は、もっと教育の場で議論されるべきだと思います。
これから、スマホとはちょっと距離を置こうと思いました。
ぜひ読んでみてください。
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『本屋を守れ 読書とは国力』藤原正彦・著 PHP研究所
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◆目次◆
一、国語力なくして国力なし
二、読解力急落、ただ一つの理由
三、読書こそ国防である
四、町の書店がなぜ大切か
五、デジタル本は記憶に残らない
六、本を読まない「日本の反面教師」トランプ
七、日本は「異常な国」でよい
八、国家を瓦解させる移民政策
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