【行為を見れば、イノベーションが生まれる】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023318639
本日ご紹介する一冊は、「Microsoft Xbox 360」を始め、世界記録的な販売数を達成したデザインで、Newsweekの「世界が注目する日本の中小企業100社」に選ばれたハーズ実験デザイン研究所の代表、村田智明さんによる一冊。
オビに、<人の行為に注目すればあるべきデザインが見えてくる。>とありますが、じつは本書が述べているのはデザインの領域に限りません。
消費者の「無意識の行為」を観察すれば、それがイノベーションのきっかけになる。
本書では、人の自然な行為が阻まれる事象を「バグ」と称し、なぜそれが発生するのかを体系化しています。
また、バグを取り除く方法を考えることで、新商品やイノベーションを生み出す方法論についても提案しています。
ブザー音で医療スタッフが駆け付けると既に認知症患者が居ない離床センサー、躓く点字ブロック、賞味期限の記載がない個包装、スイッチとの対応が分からない照明、同時に使い切ることがないシャンプーとコンディショナーなど、著者が指摘する「バグ」の例は枚挙に暇がなく、そのほとんどは読者のみなさんも共感するところでしょう。
本書では、この「バグトリ」をするための思考プロセスと、バグトリすることで劇的に売れた成功事例を紹介しており、日本企業のイノベーションのヒントとなること、間違いなしです。
さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックしてみましょう。
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ビジネスイノベーションで最も大切なのは、ユーザーのありふれた日常の行為を当たり前と思わないことです。そして、モノだけを注視するのではなく、ユーザーを取り巻く環境とユーザーの行為・感情を研究対象にし、それを解析する組織をいかに育むか
個包装に賞味期限の記載がない
スイッチとの対応が分からない照明
同時に使い切ることがないシャンプーとコンディショナー
USBなど上下の形状が分かりにくいツール
ソフトクリームを2つ買ったときの支払い
多くのスーパーは入口近くに生鮮食品売場があり、野菜や肉などを先にカゴへ入れることになります。しかし売場を回る後半でペットボトルやビン類などを買おうとすると、軟らかい野菜や肉の上に重い商品を置くわけにいかず、ユーザーがカゴの中の上下を入れ替えるプロセスが発生します。誰もが気づきながら、まだ根本的な解決がされていないプロセスの問題です
洗剤メーカーのサラヤは業界が解決できなかったこの問題に対し、ユーザーのプロセスから見直し、レフィルをそのまま容器に入れ、ポンプを交換するだけで詰め替え作業が完了する食器用洗剤「サラヤプレミアムパワー」を市場投下しました。手が汚れず、溶液をムダなく使えます
かけた後に色が変わる鍵
記憶を呼び起こすヒントを見せるデザイン
福岡正信さんという自然農法家が発案した画期的な緑化方法です。手順は簡単で、数十種類の種が入った粘土団子を作り、それを緑化したい土地にポンと放っておくだけ。すると、その環境に一番適した種が発芽して育つのです
右利き用に特化することで抜群の使い勝手を実現した韓国の肉切りばさみ
◆逆アフォーダンス
アフォーダンスの反対の意味で「人を導かないデザイン」を指します。例えば、子どもの誤飲を防ぐ形状の薬瓶のネジキャップがそうです
行為をセンシングして個人の感性の動きや行為の流れを分析することが始まれば、個人にとっては製品やサービスが行為に応じてフィードバックしてくれるクラウドコンシェルジュになり得ます
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何となくアプローチが『誰のためのデザイン?』と似ているなと思っていたら、やはり著者はもともとプロダクトデザインのご出身でした。
※参考:『誰のためのデザイン?』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4788514346/
著者は、バグを全部で6つの種類に分類しており、それぞれに事例が紹介されています。
1.非効率のバグ
2.迷いのバグ
3.矛盾のバグ
4.負環のバグ
5.心理のバグ
6.誤認のバグ
深いバグの理由を探る際に有効な「インターフェイス分解」、切り口を増やしてソリューションを出しやすくする裏技、「ダイバーシティキューブ」など、著者が使っているさまざまな思考ツールも紹介されているため、じつに金銭バリューの高い内容です。
ぜひ買って読んでみてください。
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『バグトリデザイン』村田智明・著 朝日新聞出版
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023318639/
<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B084YR62H3/
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◆目次◆
序 章 人の行為にはバグがある
第1章 どこにでもバグは存在する
第2章 6つのバグとその定義
第3章 6つの原因とその因子の定義
第4章 「行為のデザイン」ワークショップ事例
第5章 ワークショップをうまく進めるコツ
第6章 ソリューションに欠かせない裏技
終 章 イノベーションのカタチはのこぎり型
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