【橘玲が提示する「ファクト(事実)」とは?】
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本日ご紹介する一冊は、橘玲版の、『ファクトフルネス』。
もともとの原稿の中心は、著者が2016年5月から令和元年にあたる19年6月までの3年間に『週刊プレイボーイ』に連載したコラムで、そこから『事実vs本能』を扱ったものをピックアップしています。
Part0は、2011年~12年に実施されたPIAAC(Programme for the international Assessment of Adult Competencies)について解説したもので、日本人の学力に関するもの。
Part1~4は『週刊プレイボーイ』の連載コラム。
最後のPart5が、本書のために追加された章で、ここでは日本社会を理解する上で重要な事実(ファクト)を明らかにした研究を紹介しています。
『言ってはいけない』をはじめ、著者の本を読んだことのある方ならわかるように、今回も歯に衣着せぬ物言いで、日本社会にとっての「不都合な真実」を明らかにしています。
※参考:『言ってはいけない』
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日本人の学力・労働生産性に関する話や、格差、ひきこもり、犯罪、死刑、喫煙、男女差別、虐待死、不倫騒動、年金問題まで、報じられなかった事実(ファクト)を紹介し、著者独自の視点を示しています。
さっそく、内容をチェックして行きましょう。
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私たちが、「知識社会化・リベラル化・グローバル化」という巨大な潮流に翻弄されているという事実(ファクト)
65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない
OECDの平均をもとにPIAACの結果を要約すると、次のようになります。
(1)先進国の成人の約半分(48・8%)はかんたんな文章が読めない。
(2)先進国の成人の半分以上(52%)は小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。
(3)先進国の成人のうち、パソコンを使った基本的な仕事ができるのは20人に1人(5・8%)しかいない
日本の労働者が生み出す一人当たりの利益(付加価値)は8万4027ドル(約924万円)で、アメリカの労働者(12万7075ドル/約1398万円)の7割以下しかありません。OECD加盟36カ国中20位、先進7カ国のなかではデータが取得可能な1970年以降、ずっと最下位です(2018年)
OECDの報告書は、PIAACの得点が生産性に反映されない理由を、日本では労働者の高い能力が仕事で活かされていないからだとしています
日本では、夫婦が離婚するとどちらかが親権を持つことになります。これが「単独親権」ですが、考えてみれば、離婚によって親子関係までなくなるわけではありませんから、これには合理的な理由がありません。そのため欧米では、夫婦関係の有無にかかわらず両親が親権を持つ「共同親権」が主流になっています
確実なのは、知識社会が高度化するにつれて、ドロップアウトする「若い男」がますます増えていくこと
行動遺伝学などの知見によれば、子どもの人格(キャラ)は遺伝と(子ども時代の)友だち関係で決まり、親が影響を及ぼせることはわずかしかありません
家庭のルールが友だち集団の掟と対立した場合、子どもが親のいうことをきくことはぜったいにない
説明責任を果たしているなら、属性によって扱いを変えても「差別」とは見なされない
男性は決着のつく「有限ゲーム」は得意ですが、終わりのない「無限ゲーム」を生き延びるには、不利な競争を避けて有利なときだけリスクをとる女性の戦略の方が効果的です
ドイツの小学校で英語を習いはじめた子どもたちに、「英語が話せたらどんないいことがあるか」作文を書かせたところ、夢を語ることで成績が大きく伸びることがわかりました。しかしこれには条件がひとつあります。もっとも効果があったのは、英語の勉強がどれほど大変か、ネガティブなこともいっしょに考えた子どもたちだったのです
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『言ってはいけない』以来、踏襲されてきたパターンで、そろそろ食傷気味ですが、今回も興味深い事実(ファクト)が示されています。
読み手によっては「随分とひねくれている」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、メディアの言論も怪しい今、事実を追求するためには、これぐらいやらなければいけないんですよね。
統計の見方、疑う力を養える一冊です。
ぜひ、チェックしてみてください。
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『事実vs本能』橘玲・著 集英社
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◆目次◆
Part0 ポピュリズムという「知識社会への反乱」
Part1 この国で「言ってはいけない」こと
Part2 私たちのやっかいな習性
Part3 「日本人」しか誇るもののないひとたち
Part4 ニッポンの不思議な出来事
Part5 右傾化とアイデンティティ
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