2019年6月18日

『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延・著 Vol.5296

【書きたいものを、読めばいい。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447810722X

昔、100万部を連発しているカリスマ編集者にインタビューした時、こんなことを言われた記憶があります。

「面白い本は、いきなり面白い」。

ごくまれに、100ページ過ぎたあたりで勢いを増してくる本がありますが、極めて例外ですし、そもそも普通、そこまで読み進められません。

やはり面白い本は、冒頭からして面白いのです。

本日ご紹介する一冊は、電通で24年間コピーライターを務め、独立後も映画評「田中泰延のエンタメ新党」、コラム「ひろのぶ雑記」などで話題となっている田中泰延さんが、初めて書いた文章の書き方本。

【第一問:あなたはゴリラか? YES・NO】
【あなたはゴリラだ。まず人間になることを考えよう】

から始まる強烈なユーモアと、本質を突いた硬派な文章論が読ませてくれます。

読者が文章を書く人なら、序盤で大爆笑し、中盤でうならされ、終盤で大切なものを取り戻せるはず。

初心が大切だなんて、当然知っているつもりでいましたが、本書を読んで、文章を書くうえで一番大切なことを思い出しました。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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【第一問:あなたはゴリラか? YES・NO】
……なにを考えているのだろうか。ここでとりあえず【YES】を選んで矢印を辿ったわたしは、衝撃的な文言を目にすることになった。
【あなたはゴリラだ。まず人間になることを考えよう】
(中略)ひとつ言えることは、これを書いた人は「書きたくて書いた」ということである

文字が多い本は、それだけで読みたくなくなることはよく知られている。大切なことは文字が少ないことである

『文章力向上72のステップ』などという本を見ると、気が遠くなる。だいたい、いつまでステップしているのか。いい加減にホップをするなり、ジャンプをしてはどうか

最初の放心が間違っている。その前にまず方針という漢字が間違っている。出発点からおかしいのだ。偉いと思われたい。おかねが欲しい。成功したい。目的意識があることは結構だが、その考え方で書くと、結局、人に読んでもらえない文章ができあがってしまう

ネットで読まれている文章の9割は「随筆」

事象とはすなわち、見聞きしたことや、知ったことだ。世の中のあらゆるモノ、コト、ヒトは「事象」である。それに触れて心が動き、書きたくなる気持ちが生まれる、それが「心象」である。その2つがそろってはじめて「随筆」が書かれる。人間は、事象を見聞きして、それに対して思ったこと考えたことを書きたいし、また読みたいのである

書く文章の「分野」を知っておく

「定義をしっかり再構築しよう」というのは、言い換えれば「疑ってかかれ」ということでもある。言葉に対する思考の最初になくてはならないのは、「ことばを疑うこと」だ

歴史に関する記事を執筆していたとき、不意に「幕府」という単語の意味がわからなくなった。なんども「幕府」「幕府」と記述しているうちに、みるみるわたしの中から「幕府」の実体が失われ、わけのわからないものとなっていった(中略)頭を切り替えようと「外国人に英語で日本の歴史を説明しましょう」という趣旨の本を読んでみると、「カマクラ・ミリタリー・ガバメント」という記述があり、ハッとして腑に落ちた。要は「軍事政権」なのである

物書きは「調べる」が9割9分5厘6毛

一次資料に当たる

結論の重さは過程に支えられる。これこそ、文章が持つ力の根源

言葉とは、相手の利益になる使い方をすれば、相手の持ち物も増え、自分の持ち物も増える道具なのだ。書いたら減るのではない。増えるのである

書くことはたった一人のベンチャー起業

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こういう文章を読む度に、「ああ、こんな風に書ければなあ」と思うのですが、本は、自分が書きたいと思うものを読むのが一番。

もうある本なら、一冊書くなんて苦行をしなくていいのですから(笑)。

笑いあり、教訓あり、テクニックありの三拍子そろった本ですが、じつは書き手としての心構えと基礎をきちんと書いてくれていて、じつにきちんとした本だと思いました。

著者の専門である広告の話の方がむしろ手垢がついた印象がありますが、それ以外はじつに新鮮な印象です。

書き手を目指すすべての人に、おすすめしたい一冊です。

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『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延・著 ダイヤモンド社

<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆

はじめに 自分のために書くということ
序章 なんのために書いたか 書いたのに読んでもらえないあなたへ
第1章 なにを書くのか ブログやSNSで書いているあなたへ
第2章 だれに書くのか 「読者を想定」しているあなたへ
第3章 どう書くのか 「つまらない人間」のあなたへ
第4章 なぜ書くのか 生き方を変えたいあなたへ
おわりに いつ書くのか。どこで書くのか。

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