2019年3月18日

『観光亡国論』アレックス・カー、清野由美・著 vol.5237

【観光ビジネスの光と影】
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観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると、2017年のインバウンド旅行消費額も含めた、日本における旅行消費額は、26.7兆円。

活況を呈している観光ビジネス・インバウンドビジネスですが、一方で、その弊害も出てきています。

インフラや施設不足、人手不足がボトルネックになったり、無計画な開発でせっかくの観光資源が損なわれてしまったり…。

観光客のマナー違反や、外国資本による貴重な不動産の買い占め、日本にお金が還流しない仕組みも問題です。

このまま放っておけば、やがて観光客にも飽きられ、一夜明けたらゴミだらけのお祭り翌日状態になってしまう。

そうならないために、ぜひ読んでおきたいのが、本日ご紹介する一冊『観光亡国論』です。

著者のアレックス・カーさんは、アメリカ生まれの東洋文化研究者で、古民家再生ビジネスも手掛けてきた、日本通。

単なる文化面からの批判ではなく、ビジネス面での現実を踏まえた、リアルな分析、建設的な提言になっているので、政治家、観光行政の担当者、観光ビジネスを手掛ける方は、ぜひ読んでおくといいでしょう。

訪日外国人の数は増える一方ですが、人がたくさん来ていればいい、というのではあまりに知恵がない。

来客が増える度に施設は摩耗し、環境整備にカネがかかるのだから、それに見合ったリターンがあるかどうかは、ぜひここで検証しておきたいもの。

ビジネスのヒントも多数あり、気になる一冊です。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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民泊バブルが起こった結果、周辺の地価・家賃が上がり、もとからいた住民が住めなくなってしまっている

億単位で観光客が移動する時代には、「量」ではなく、「価値」を極めることを最大限に追求するべき

現在の中国ではパスポートを発給されている人は、まだ人口の数%に過ぎないといわれており、今後、年間1000万人の単位で受給者数が増えていくとされています。中国人の次には、やはり人口が圧倒的なインド人の観光客も控えています

この数年で流れは逆行し、今は町家を残すより、小さなビジネスホテルを建設することの方が活発化し始めています。観光ブームが、町家保存から町家破壊へと、さらに転換しているのです。京都市にも古い民家の保存をうながす規制はあります。しかし重要文化財級の町家であっても、それを守り抜くような断固とした仕組みにはなっていません。2018年には室町時代に起源を持つ、京都市内でも最古級という屈指の町家「川井家住宅」が解体されました

日数上限は一部の都会では確かに必要だったかもしれません。しかし田舎ではほとんど不要であり、むしろ一年中営業できた方が都合は良かったはずです

「総量規制」として最もわかりやすい方策は「入場制限」です。ペルーのマチュピチュ、インドのタージマハル、ガラパゴス諸島など、入場制限をかけている観光名所はすでに世界に数多く存在します。アドリア海に面したドブロブニクでは1日に4000人、ギリシャのサントリーニ島では1日に8000人を上限にしていますし、イタリアの世界遺産、チンクエ・テッレでは、年間150万人を上限としていて、1日の訪問者数が一定数に達すると、この地に通じる道路を閉鎖しています

美術館のオーバーキャパシティに対応するには、入場料の設定だけでなく、予約システムによる入場制限も必要

日本の観光が未だ車誘導型であるのに対し、世界の観光では「歩かせる」ことこそが、マネージメントの常識

視点を「建設」から「景観」に移してみると、古くなった工場などの撤去、景観を台無しにしている看板の撤去、電線の埋設など、やるべき公共工事がたくさんあることに気づきます。古い歴史的な町並みを整備することもそこに含まれます

「観光公害」以前に「看板公害」

宿泊は中国資本のホテルで、ガイドは中国人、バスも中国の業者と提携している会社、店の経営者も、もちろん中国人。それら事業者の売り上げは、ほとんど現地に落ちることなく、中国に流れるようになっています

紙の上での計算では、クルーズ船の乗客が1日に消費する金額は100ドル。一方で、一般の旅行者は96ドル。しかしクルーズ船乗客の場合は、100ドルのうちの56%がクルーズ船に還流します。つまり、寄港地には44ドルしか落ちていません

今の時代に力を持つのは、旅行代理店に代表される「エージェント」ではなく、「コンテンツホルダー」

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既に、「観光立国」の先駆けヨーロッパでは、「オーバーツーリズム(観光過剰)」「ツーリズモフォビア(観光恐怖症)」という言葉が登場しているようですが、日本でも、京都のような状況が全国各地で起きる可能性があります。

本格的に中国・インドの観光客がなだれ込んでくる前に、何とか対策を立てたい。

投資の役にも立つ内容で、これからの観光ビジネスのトレンドがよくわかりました。

ぜひ、読んでみてください。

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『観光亡国論』アレックス・カー、清野由美・著 中央公論新社

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◆目次◆

第1章 ティッピング・ポイント 「立国」が「亡国」になるとき
第2章 宿泊
第3章 オーバーキャパシティ
第4章 交通・公共工事
第5章 マナー
第6章 文化
第7章 理念

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